目次

  1. 1. 相続関係説明図とは
  2. 2. 相続関係説明図を作成するメリット
    1. 2-1. 相続関係の明確化
    2. 2-2. 提出した戸籍謄本等の原本還付が可能になる
  3. 3. 相続関係説明図と法定相続情報一覧図との違い
    1. 3-1. 法定相続一覧図は法務局の認証が必要
    2. 3-2. 相続関係説明図を使うべき人、法定相続一覧図を使うべき人
  4. 4. 相続関係説明図が必要となるシーン
    1. 4-1. 不動産の名義書換
    2. 4-2. 預貯金の解約、払い戻し
    3. 4-3. 家庭裁判所での遺産分割調停申立
    4. 4-4. 弁護士や司法書士、税理士に相談
  5. 5. 相続関係説明図の作り方
    1. 5-1. 作成の事前準備として必要な書類
    2. 5-2. 相続関係説明図の書き方の手順
    3. 5-3. 相続関係説明図の書き方でよくある質問
    4. 5-4. すぐに使えるテンプレート、サイトからダウンロード可能
  6. 6. まとめ

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相続関係説明図とは、亡くなった人(被相続人)と相続人の関係が一覧になってまとまっている表です。被相続人を中心に親や子ども、兄弟姉妹や孫などの関係人を線でつないで記載し、作成します。一般的な感覚としては「家系図」のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。

法務局や裁判所などで必要となりますが、その際には「家系図」とは言わず「相続関係説明図」と呼ぶので、これを機会に呼び名を押さえておいて下さい。

相続関係説明図の記入例

相続関係説明図は相続で必ず作らなくてはいけないものというわけではありませんが、以下のようなメリットがあります。

相続関係説明図があれば、複雑な相続関係であっても一目で分かります。

戸籍謄本などを集めて相続関係を明らかにするのが「相続人調査」で、相続では必ず必要となります。相続人調査の結果をまとめた表が相続関係説明図となります。相続関係は図面化しておかないと、誰が相続人になるのかが一見して明らかになりません。自分たちでは分かっていても、法務局や金融機関、裁判所や税理士などに伝えるのは困難ですし、いちいち戸籍謄本を全部持参してチェックするのも大変です。

相続人を一覧にまとめておくと、遺産分割に関するさまざまな手続きや相談時に役立つので、相続人調査が終わったらすぐに相続関係説明図を作成しましょう。

【関連記事】相続人調査の方法 戸籍の収集法と読み解き方を司法書士が解説

相続の手続きでは、被相続人や相続人の戸籍謄本等の書類を役所や金融機関などさまざまな窓口に提出する必要があります。そうしたときに、戸籍謄本の原本と相続関係説明図を一緒に提出すると、原本還付してもらえます。その原本をまた別の手続きで必要な時に利用することができるので、時間と手間と手数料を省くことができます。

例えば、法務局で相続登記の申請をする際、相続関係説明図がない場合には、すべての戸籍謄本等のコピーをとった上で、コピーと原本を一緒に提出し、原本を返してもらいます。ただ、戸籍謄本等がたくさんある場合には、コピーを取るのにもお金と時間がかかります。相続関係説明図は戸籍謄本等のコピーの代わりになります。

【関連記事】相続登記の原本還付とは 原本返却が可能な書類と請求方法を解説

法定相続情報一覧図とは、法務局が相続関係を証明してくれる書類です。登記申請や預金払い戻しなどの際に用意すれば、戸籍謄本類を集める必要がありません。

単なる相続関係説明図は相続人らが作成するものであり、法務局が認証してくれるものではありません。登記申請の際などに提出できますが、それだけでは手続きできず同時に戸籍謄本類を提出する必要があります。

法定相続情報一覧図は法務局の定める書式に従って作成する必要がありますが、相続関係説明図の場合には厳格な書式はありません。

【相続関係説明図を使うべき人】
不動産の名義変更や預金払い戻しなど、いくつか相続手続きをしなければならない場合には相続関係説明図を用いて原本還付しましょう。そうすれば戸籍謄本類を集め直さなくて良いので手間を省けます。

【法定相続情報説明図を使うべき人】
法定相続情報一覧図を利用すべき人は、相続登記などの書類提出先が3つ以上はある場合です。法定相続情報一覧図を取得するのに手間がかかるので、それ以下の場合にはわざわざの利用をおすすめできません。

なお法定相続情報一覧図を利用する場合、わざわざ相続関係説明図を別に作る必要はありません。

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相続関係説明図は、遺産分割協議の際に以下のような場面で必要になります。

不動産を相続したら、被相続人名義から相続人名義へと所有名義を変更する必要があります。その際、被相続人が生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類と共に相続関係説明図を法務局に提出します。法務局でのチェックを終えた後、集めた戸籍謄本類を返してもらえます。

なお名義変更時などに「法定相続情報一覧図」を作成して法務局(登記所)へ提出すると、登記官が認証文をつけて返還してくれます。その後はその認証文つきの法定相続情報一覧図さえ提出すれば、相続関係を証明できるので個別に戸籍謄本類の束を提出する必要がなくなり、便利です。

法定相続情報一覧図の制度を利用しない場合には、自由な書式で相続関係説明図を作成し、提出すると良いでしょう。

銀行での預貯金解約や払い戻しの際にも相続関係説明図の提出を要求されるケースがよくあります。

相続人同士で話し合っても合意できず家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てる際にも相続関係説明図を作成・提出する必要があります。

弁護士や司法書士に遺産分割方法について相談したり税理士に相続税の申告を依頼したりするときにも相続関係説明図があると状況を伝えやすくなります。

相続関係説明図に特に決まった書式はありません。一般的な記載事項をおさえれば、自分で簡単に作成することができます。

相続人調査を進める上で必要となる書類でもあります。一般的に以下が必要になります。

  • 被相続人の出生から死亡するまでの連続する戸籍謄本等
  • 被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票

相続関係説明図は、以下の手順で作成しましょう。この記事の上部に掲載した「相続関係説明図の記入例」も参考にしてください。パソコンのエクセルソフトなどを利用すると便利です。この記事に添付しているエクセルのテンプレート(記入用)を是非活用してください。

① 被相続人、相続人などの名前を記入
まずは1マスごとに被相続人と相続人全員の氏名を記入しましょう。世代が上の人を上方に、下の人を下方に、兄弟姉妹は並べて記入するとわかりやすくなります。

② それぞれの生年月日、死亡年月日、被相続人との続柄を記入
次にそれぞれの人の生年月日、死亡年月日と被相続人との続柄を記入します。死亡した人については背景を灰色などにしておくとわかりやすくなります。

③ それぞれを親族関係に従って線でつなぐ
それぞれの人を親族関係に従って線でつなぎます。たとえば配偶者は横線でつなぎ、親子は縦線でつなぐなどです。家系図をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。

相続関係説明図で以下の関係をどのように書けばいいのかという質問がよくあるので、説明しておきます。

【離婚・再婚】
離婚した場合には、まず離婚した配偶者との関係を示すための2重線にバツをつけます。再婚した場合には再婚相手と2重線でつないで現在有効な婚姻関係を示します。

【養子縁組】
養子縁組した場合には実子と同じように親から一重線を引っ張って続柄には(養子)と書き、出生日と子どもの名称等を書きましょう。養子縁組日を記載する必要はありません。

【代襲相続】
代襲相続が発生する場合、被代襲者については「被代襲者」とのみ記載して死亡年月日を書きましょう。その上で被代襲者から一重線を引っ張って代襲者の情報を書きます。具体的には被代襲者の続柄(孫など)や出生日、名称などを記載しましょう。

【数次相続】
相続が連続して起こった場合の数次相続の場合、法定相続情報一覧図は「被相続人ごと」に作成しなければなりません。まとめて1枚にすることはできないので、間違えないように注意しましょう。

【関連記事】離婚した場合の相続関係説明図の書き方は? 記載例をもとにわかりやすく解説

この記事に添付している相続関係説明図のエクセルファイルの書式テンプレートをダウンロードして使えば、さらに簡単に作成することができるので、ぜひご活用ください。

相続関係説明図テンプレート(記入サンプル)
相続関係説明図テンプレート(記入用)

また、テンプレートをダウンロードできるサイトは他にも数多くあります。法務局のサイトも参考になるでしょう(ただし、法務局のテンプレートは法定相続情報一覧図のテンプレートなので、タイトルを「相続関係説明図」に変更して使ってください)。

相続関係説明図の作成方法がわからない、自信がない方は司法書士や弁護士に相談に行って戸籍謄本類を見せれば、作成やチェックを依頼できます。

遺産相続の際には専門家があなたの心強い味方となります。対応に迷ったときにはお気軽に相談してみてください。

(記事は2022年11月1日時点の情報に基づいています)

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