空き家を相続するこれだけのデメリット

ところで、空き家を取得するもっとも多いケースは、両親と別に生活している子どもが、両親が亡くなったため空き家になった両親の自宅を相続により取得することです。とりあえず空き家になった自宅を取得して、落ち着いたら売却などを考えようと思ったものの、その自宅は地方にあるため売却したくても買主が見つからない。買主が見つからないため、その自宅の掃除などに行きたいが遠方のため後回しになり、定期的に管理することが難しい。そして、老朽化して近隣に迷惑がかかってしまう。このような悪循環が多くみられます。

さらに空き家を所有すると毎年、固定資産税や都市計画税がかかります。固定資産税は課税標準額の1.4%、都市計画税は課税標準額の0.3%(市区町村ごとに変動)がかかります。もともと両親の自宅であれば、住宅用地として固定資産税の課税標準額は最大1/6、都市計画税の課税標準額は最大1/3まで特例により減額されますが、その自宅が「特定空き家」に該当すると特例から除外されてしまい、住宅用地として固定資産税・都市計画税を支払っていた時と比較して最大6倍の税金を支払わなければならなくなってしまいます。

「空き家」とは概ね1年以上住んでいない、または使われていない家を定義しています。さらに空き家のうち、そのまま放置すれば倒壊などの危険性があるもの、衛生上有害となりうるもの、景観を損なっているもの、放置することが不適切である状態のものは「特定空き家」に該当します(『空家等対策の推進に関する特別措置法』による定義)。

相続放棄で空き家を取得しない方法

相続放棄することで空き家を取得しないことができます。また、固定資産税・都市計画税の負担からも免れることができます。なお、相続放棄とは、預金や不動産などの資産も借入などの負債も含めて亡くなった方のすべての財産の取得を放棄することです。一般的には資産より負債の方が多い場合や、相続争いに巻き込まれたくない場合に相続放棄をする場合が多いですが、空き家を取得したくないため相続放棄する場合もあります。空き家のみ相続放棄することはできないため、ほかの資産や負債などの財産を勘案しながら判断する必要がありますが、空き家を取得しなくてもよい一つの選択肢になります。

相続放棄の手続きは、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出する必要があり、相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に提出しなければなりません。相続放棄の申述書を提出してからしばらくすると家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が届きます。照会書に対する回答を記入・返信をして相続放棄が認められると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。これで相続放棄ができたことになります。

相続放棄を行った場合、その人ははじめから相続人でなかったことになるため、次の順位の人が相続人になります。

例えば相続人である第1順位の子供全員が相続放棄をした場合、第2順位の親が相続人になります。その親が全員相続放棄または既に亡くなっている場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。さらにその兄弟姉妹も全員相続放棄をした場合は相続人が存在しなくなってしまいます。相続人が存在しなくなると相続財産は法人化して、相続財産管理人が選任されます。選任された相続財産管理人は相続財産の清算などをおこない、最終的には残った財産が国庫に引き継がれることになります。

相続財産管理人は亡くなった方の利害関係人(債権者、特別縁故者や相続放棄をした元相続人など)や検察官からの申立てにより選任され、亡くなった方の財産の管理・借入金などの返済・財産の清算・国庫に帰属する手続きなどを行います。また、相続財産管理人の選任申立てには、選任後の相続財産管理人に報酬や管理・清算するための費用などを支払わなければならないため、事前に数十万円の予納金の支払いが必要になります。

相続財産管理人が選任されるまでは管理責任も

相続放棄することで空き家を取得しないことができますが、空き家について無関係になるわけではありません。相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産管理人が選任されるまでは空き家を管理しなければなりません。そのため、空き家になったマンションなどの管理をしないで放置しておいて、それが原因で水漏れなどが起き、管理責任を問われた場合、相続財産管理人が選任されるまでは相続放棄をした人が損害賠償をする可能性があります。

さらに、相続財産管理人が選任されたとしても、相続放棄をした空き家を国が引き取ることは容易ではありません。そのため、国が引き取らなかった場合は、売却できるまで永遠に相続財産管理人に報酬や管理費用を支払い続けることになり、かえって固定資産税・都市計画税を支払っていた方が安くなる場合もあります。

空き家を相続放棄する場合は慎重に判断することをお勧めします。相続放棄は亡くなってから3か月と短い期間で判断をしなければなりませんが、少なくても亡くなった方の財産及び債務の状況や、空き家の売却価値・売却可能性などは検討しておく必要があります。また、空き家について相続放棄をしないで、現状のままあるいは改修して貸家や貸駐車場で一定の収入を得ることができれば相続放棄をしない方が良い場合もあります。そのため、空き家について判断に迷うようであれば亡くなったあと早めに、または亡くなる前に専門家に相談してみることをお勧めします。

(記事は2020年10月1日時点の情報に基づいています)