目次

  1. 1. 借地権の定義
    1. 1-1. 借地権とは?
    2. 1-2. 借地権の種類
    3. 1-3. 普通借地権
    4. 1-4. 旧借地権
    5. 1-5. 一般定期借地権
    6. 1-6. 借地権は相続できる?
  2. 2. 借地権の相続手続きとは?
    1. 2-1. 借地上の建物の名義変更をすれば、借地権の名義変更はしなくてよいのか
  3. 3. 名義変更の流れは?
  4. 4. 名義変更に必要な書類は?
  5. 5. 書類取得や手続きにかかる費用の目安は?
  6. 6. 地主とのやりとりの注意点
    1. 6-1. 法定相続人への相続の場合
    2. 6-2. 法定相続人以外の人への遺贈の場合
    3. 6-3. 相続した建物を売却する場合は?
    4. 6-4. 相続後に建替えを行う場合は?
    5. 6-5. 地主とのトラブルを避けるために注意した方がよいことは?
  7. 7. まとめ 名義変更をする場合は司法書士に相談を

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借地権とは、建物所有目的で他人の土地を借りる権利のことです。自分の家を建築したいと考えた場合、新たに土地を購入するという方法もありますが、他人の土地に建築するという方法もあります。その際、勝手に他人の土地に家を建築することはできないため、その土地を借りる必要があります。その際に設定する権利が「借地権」です。
このように、「借地権」とは「建物所有目的」で土地を借りる権利を意味します。建物所有目的以外で土地を借りる場合には借地権とはいいません。また、あくまでも借りる権利に過ぎませんので、所有権とは異なります。

借地権にはいくつかの種類があります。以下でそれぞれの内容を説明します。

普通借地権とは、契約の更新ができる借地権です(借地借家法3条)。存続期間は、30年以上の存続期間を契約で定めた場合はその期間、定めなかった場合は30年です。なお、30年よりも短い存続期間を定めても無効です(同法9条)。
契約の更新後の存続期間は、最初の更新時は20年、それ以降は10年とされ、正当事由がない限り更新されます(同法4条)。
一般的に「借地権」と呼ばれる場合はこの「普通借地権」のことを指します。

現行の借地借家法は平成4年8月1日から施行されているので、それ以前の借地法の下に設定された借地権が旧借地権です。現行法の下でもその効力は存続するものとされています。ただし、現行法と異なって建物による存続期間の違いがあり、堅固建物は30年以上、非堅固建物は20年以上です。正当事由がない限り更新されることは普通借地権と同様です。

一般的定期借地権(借地借家法22条)とは、定められた存続期間の経過によって契約が終了する借地権です。普通借地権と異なって、契約の更新ができないことが特徴です。そのため、契約期間を満了したら、土地を地主に明け渡さなければなりません。存続期間は50年以上です。

相続では、被相続人の一切の権利義務を相続人が相続しますので、権利の一種である借地権も相続できます。

通常は、借地上の建物の名義変更をし、相続によって借地権を取得したことを地主に連絡しておけば十分で、別途借地権の名義変更をする必要はありません。ただし、稀ではあるものの、借地権が登記されている場合には、借地権の名義変更をすることが必要です。

まず、不動産全部事項証明書を取得するなどして、対象となる不動産を確認しましょう。また、地主にも相続が発生したことを連絡しましょう。
その上で、相続人が複数いる場合には、誰が当該不動産の借地権を相続するのかを決め、遺産分割協議書を作成しましょう。なお、遺言書で借地権の相続人が決まっているのであれば、借地権について遺産分割協議書を作成する必要はありません。
遺産分割協議書あるいは遺言書以外の必要書類も収集し、書類がすべて揃ったら、法務局に名義変更の申請をしましょう。
名義変更の手続きは手間がかかりますので、司法書士に依頼するのも一案です。

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  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  •  被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
  • 相続人の住民票もしくは戸籍の附票
  • 遺産分割協議書もしくは遺言書
  • 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合)
  •  固定資産税評価証明書

一般的には上記の書類が必要です。戸籍謄本や住民票、戸籍の附票は市区町村役場で、固定資産税評価証明書は市税事務所や市区町村役場で取得できます。

書類取得にかかる費用の目安は下記のとおりです。

  • 戸籍謄本・・・1通450円
  • 除籍謄本・改製原戸籍・・・1通750円
  • 住民票・戸籍の附票・・・1通300円

手続きにかかる費用の目安は下記のとおりです。
建物所有権の名義変更に関する登録免許税・・・固定資産税評価額×0.4%
借地権の名義変更に関する登録免許税・・・固定資産税評価額×0.2%
上記以外に、司法書士に手続きの代行を依頼した場合には、司法書士費用がかかります。

地主の承諾は必要なく、また、土地の賃貸借契約書の名義を変更する必要もありません。地主に対して借地権を相続によって取得したことを通知すれば十分です。譲渡承諾料(名義変更料)も不要です。
借地権を「相続」と「遺贈」のいずれによって取得するかで借地借家法の扱いが異なります。上記のとおり、相続であれば地主の承諾は不要ですが、次項で説明するとおり、遺贈であれば地主の承諾が必要です。

地主の承諾と譲渡承諾料が必要です。譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%程度です。ただ、借地の事情は個々で大きく異なるので、この金額を目安にしつつ、個別の事情を考慮して最終的に決定されるのが通常です。
地主の承諾が得られなかった場合には、家庭裁判所に借地権譲渡の承諾に代わる許可を求める申立て(借地借家法19条1項)が可能です。

相続した借地権は売却することも可能です。ただし、借地権の売却には、地主の承諾が必要です。地主の承諾を得ずに売却してしまうと、契約違反になって、地主に契約を解除されてしまうおそれがあります。また、地主の承諾を得て売却をする場合でも、通常は、地主に承諾料(相場は借地権価格の10%程度)を支払うことが必要です。

築年数が経っており、相続を機に建替えを検討する方もいるでしょう。その際、当事者間の合意によって増改築(建替えも含む)を制限する条項がある場合には、地主の許可を得ることが必要です。
許可を得られない場合には、裁判所に許可を求める申立てをすることが可能です(借地借家法17条2項・借地法8条の2第2項)。許可を得ないまま建替えをしてしまうと、地主に契約を解除されてしまうおそれがあります。通常は、地主に承諾料(相場は借地権価格の3~5%程度)を支払うことが必要です。

上記のとおり、地主の許可を得ることが必要な場合も少なくありません。また、地主の許可を得るにあたって、承諾料が必要な場合もあります。そのため、建物の現況を変える場合には、地主の許可を得ることが必要かどうか、また、承諾料の相場を事前に調べた上で行動に移すことが地主とのトラブルを避けるために重要です。

名義変更の手続きは書類集めなど複雑なことも多いです。建物や借地権の名義変更については司法書士に相談すると良いでしょう。借地権の売却や建替えの承諾を得られないなどの地主とのトラブルについては弁護士に相談すると良いでしょう。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)

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