目次

  1. 1. 借地権は相続放棄できる
    1. 1-1. 借地権とは
    2. 1-2. 借地権を相続放棄する方法
  2. 2. 借地権を相続放棄するメリット
    1. 2-1. 地代や固定資産税、相続税、解体費用を払わなくてよい
    2. 2-2. 管理し続ける必要がない
    3. 2-3. 活用や売却などの手続きをしなくてよい
    4. 2-4. 地主とのトラブルを回避できる
    5. 2-5. 他の相続人との遺産分割トラブルに巻き込まれずに済む
  3. 3. 借地権を相続放棄するデメリット
    1. 3-1. 他の遺産も相続できない
    2. 3-2. 売却や活用の利益を得られない
    3. 3-3. 後順位の相続人に知らせないとトラブルになる可能性がある
  4. 4. 借地権を相続放棄するときの注意点
    1. 4-1. 建物を解体してはならない
    2. 4-2. 相続放棄には期限がある
    3. 4-3. 「現に占有」しており、他の相続人がいない場合、保存義務が残る
  5. 5. 借地権を相続放棄する前に検討すべきこと
    1. 5-1. 他に相続したいプラスの遺産がないか?
    2. 5-2. 借地権の売却や賃貸活用ができないか?
    3. 5-3. 地主に買い取ってもらえないか?
    4. 5-4. 地主と協力して底地と一緒に売却できないか?
  6. 6. まとめ 借地権の相続放棄は弁護士に相談を

そもそも借地権を相続放棄できるのでしょうか?

借地権とは他人の土地上に建物を建てて所有するための権利です。賃借権と地上権の2種類があります。
本来、他人の土地上に勝手に建物を建てたら不法占拠です。ただし、借地権を設定したら堂々と権利を主張して他人の土地を使えます。その代わり、地主との間で取り決めた「地代」を払わなければなりません。

このように「他人の土地上に建物を建てて所有する権利」としての借地権には経済的な価値が認められるので、一種の「遺産」として相続対象になります。

借地権を相続したくない場合、相続放棄すれば相続せずに済みます。

相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所で「相続放棄の申述書」を提出し、受理されれば相続放棄が完了します。

なお相続放棄したら借地権以外のすべての遺産も相続できなくなります。他に相続したい遺産があるときに相続放棄すると不利益を受けるおそれがあるので注意しましょう。

借地権付きの建物を相続すると、地代や毎年の固定資産税を払わなければなりません。相続税が発生する可能性もありますし、土地を返還するときには解体費用も負担しなければならないでしょう。

相続放棄すればこれらの費用を負担する必要はありません。

借地権付きの建物を使わない方にとって、管理の手間は大きなデメリットです。自分で管理すると労力がかかりますし、管理会社に委託すれば手数料も発生するでしょう。

相続放棄すれば、管理し続ける必要がないというメリットが得られます。

借地権付きの建物を相続すると、活用や売却などを検討しなければならず時間や手間を割かれるでしょう。相続放棄すれば、こういった煩わしい雑務からも解放されるメリットがあります。

借地権を相続すると、地代や立ち退きなどの問題で地主とトラブルになるケースが少なくありません。相続放棄すればそういったトラブルには巻き込まれずに済みます。

相続放棄すれば遺産分割協議に参加する必要がないので、他の相続人との相続トラブルにも巻き込まれません。

【関連】相続放棄の前後にしてはいけないこと 遺品整理はダメ?葬式代は? 注意点を解説

相続放棄すると、預金や不動産など他の遺産も一切相続できません。資産が多いケースで相続放棄すると損をしてしまう可能性があります。

借地上の建物を賃貸したり売却したりすると利益を得られるはずです。相続放棄するとそういった将来の利益を捨ててしまう結果となりデメリットといえるでしょう。

後順位の相続人がいる場合、相続放棄すると後順位の相続人に相続人の地位が移ります。相続放棄の際、事前に後順位の相続人へ知らせなかったためにトラブルに巻き込まれるケースも少なくありません。

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借地権を相続放棄したいなら、勝手に建物を解体してはなりません。解体すると「単純承認」が成立して相続放棄できなくなってしまいます。また預金などの他の遺産にも手を付けてはなりません。

相続放棄は「自分のために相続があったことを知ってから3カ月以内」に家庭裁判所で申述しなければなりません。

借地権を相続放棄したいなら、急いで家庭裁判所で相続放棄の申述をしましょう。

相続放棄をしたとしても、親名義の借地権付きの建物で一緒に暮らしていたようなケースでは、他に相続人がいない限り、保存する義務が残るため注意が必要です。

「現に占有」している相続財産については、相続放棄をしても、他の相続人や相続財産清算人に財産を引き渡すまでは保存する必要があると民法に定められているためです(940条)。

そのため保存義務を免れるには、自分で相続財産清算人選任の申立をするか、地主の側から相続財産清算人を選任してもらう必要があります。相続財産清算人の選任を申し立てると高額な予納金が必要となるケースが多いので、できれば地主側から申し立ててもらう方が経済的な負担は小さくなるでしょう。

一方、「現に占有」していない人が相続放棄した場合は保存義務はありません。ただし、「現に占有」の解釈は明確ではないため、自己判断せず弁護士に相談するとよいでしょう。

借地権の他に不動産や預金、株式などの相続したい財産があるなら、相続放棄はお勧めしません。債務超過、あるいは遺産として借地権つき建物しかないなど「遺産を一切相続しなくて良い場合」に相続放棄を検討しましょう。

借地権を売却したり建物を賃貸したりすると収益を得られる可能性があります。相続放棄より得になるケースも多いので、まずは周辺の類似取引の相場を確認して対応を検討してみてください。

借地権を相続放棄するより、地主に買い取ってもらった方が地主と借主の双方にとって利益となるケースが少なくありません。

特に後順位の相続人がいない場合、相続放棄すると相続財産清算人を選任する負担が生じます。まずは地主に相続放棄を検討している旨を伝え、相場価格で買い取ってもらえないか打診してみましょう。

地主が底地を不要としている場合、地主と一緒に底地と建物をセットで売却する方法があります。底地と建物がセットなら、別々に売るよりも高額で売れますし需要も高くなります。拙速に相続放棄してしまう前に、地主に売却を打診してみましょう。

借地権を相続放棄するか悩んだら、専門家によるアドバイスを受けてから決断するのが得策です。まずは一度、相続に詳しい弁護士に相談してください。

(記事は2024年4月1日時点の情報に基づいています)