目次

  1. 1. 死後認知とは
    1. 1-1. 死後認知には訴訟が必要
  2. 2. 死後認知訴訟を提訴できる人、期間、進め方
    1. 2-1. 死後認知訴訟を提起できる人と相手方
    2. 2-2. 死後認知訴訟を提起できる期間は死後3年以内
    3. 2-3. 死後認知訴訟の進め方
    4. 2-4. 判決確定後の認知届
    5. 2-5. 事前に父親の遺族に連絡をすべき?
  3. 3. 死後認知が成立した後の遺産分割方法
    1. 3-1. 死後認知された非嫡出子の相続分
    2. 3-2. 遺産分割前
    3. 3-3. 遺産分割後
  4. 4. まとめ

死後認知とは、非嫡出子(=法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子)と既に死亡した父親との親子関係を法律上確定するための手続きです。死後認知が認められると、その効力は出生の時にさかのぼるため(民法784条)、認知された非嫡出子は父親の遺産を相続できます。そのため、死後認知は非嫡出子の相続権を確保する目的で行われることが一般的です。

父親の生存中であれば、父親自身が認知の届出をしたり、あるいは遺言によって認知をしたりすることも可能です。
しかし、父親の死亡後は、父親自身は認知することができません。そのため、死後認知のためには非嫡出子自身が訴訟を提起するしかありません。死後認知訴訟の勝訴判決が確定することで、死亡した父親と非嫡出子との間の親子関係が法律上確定することになります。

では、どのようにして死後認知訴訟を進めていったらよいのでしょうか。死後認知訴訟の詳細を説明します。

死後認知訴訟を提起できるのは、非嫡出子本人やその法定代理人です(民法787条)。例えば、非嫡出子本人が未成年の場合は、親権者である母親や未成年後見人が代わって訴訟を提起できます。非嫡出子本人の直系卑属(子や孫など)やその法定代理人も死後認知訴訟を提起できます。
相手方は、検察官です(人事訴訟法12条3項)。本来、認知請求は父親を相手方にすべきですが、その父親は亡くなっているため、検察官が相手方を担うことになります。

父の死後3年以内です。期間が限られているので、過ぎてしまわないように注意してください。

非嫡出子本人の住所地または父の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、死後認知を求める訴状を提出します。その後、被告となる検察官に訴状が送られ、裁判所で第1回期日が開かれて、審理が始まっていきます。
また「利害関係人」として、父親の相続人(父親の配偶者や嫡出子など)に訴訟が係属したことが通知されます。父親の相続人は死後認知訴訟の当事者ではないものの、「補助参加」という形で訴訟に参加することが可能です。被告である検察官は事情を知らないため、実質的には非嫡出子と配偶者・嫡出子の間の争いになります。

審理においては、非嫡出子が父親との親子関係を証拠によって立証することが必要です。つまり、認知請求では、通常、DNA鑑定の結果が最も有力な証拠になります。もっとも、死後認知訴訟では父親が死亡しているので、父親の協力は得られません。そこで、他の近親者(父親の嫡出子など)にDNA鑑定の協力を求めることになります。ただ、あくまでも協力を求めるもので強制することはできません。上記のとおり、実質的な紛争相手ということもあって、協力が得られないこともあります。
ただし、DNA鑑定を行えないからといって、必ずしも死後認知が認められないわけではありません。父親と母親との出会いから妊娠、出産に至る経緯などを写真やメール、手紙、証言などで立証することが可能な場合もあります。

相続人の意見が割れたら弁護士に!
相続トラブルに強い弁護士の選び方 相談するメリットや費用も解説
相続トラブルに強い弁護士の選び方 相談するメリットや費用も解説

死後認知請求を認める判決が出たら、判決書と確定証明書を持参して役所に認知の届出をします。

訴訟を提起する前に亡くなった父親の遺族に連絡をしておくかどうかも1つのポイントです。
法的には事前に連絡する必要はありません。ただ、父親の遺族とは、DNA鑑定の協力やその後の遺産分割などでやり取りが必要なため、できる限りの配慮をしておくことに越したことはありません。
遺族にとっては、ただでさえ自分の夫や父親に認知していない子がいたことを知れば大いに困惑するところです。更に訴訟にもなっているとすれば、より一層困惑することが予想されます。そのため、事前に連絡を入れておき、父親の遺族にも考える時間を与える方が望ましいと思われます。

死後認知が成立した後の相続の方法を解説します。既に遺産分割が成立しているかどうかによって方法が変わります。死後認知訴訟には一定の期間がかかるため、死後認知が認められる頃には既に遺産分割が成立していることも少なくありません。

前提として、死後認知された非嫡出子にも嫡出子と同じだけの相続分が認められています。嫡出子と非嫡出子で相続分の区別はされていません。

遺産分割前であれば、認知された非嫡出子も遺産分割協議に参加して遺産を分ける形になります。

遺産分割後であれば、認知された非嫡出子は、他の相続人に対して、法定相続分に相当する金銭の支払いを請求できるのみです(民法910条)。なぜなら、既に成立した遺産分割を無効にして改めて遺産分割協議をし直すことは他の相続人にとって負担が大きく、混乱を招きかねないためです。

弁護士への相続相談お考え方へ

  • 初回
    無料相談
  • 相続が
    得意な弁護士
  • エリアで
    探せる

全国47都道府県対応

相続の相談が出来る弁護士を探す

死後認知を成立させるのは死後認知訴訟を起こさなければならず、認知が成立したら他の相続人との遺産分割や金銭請求などの交渉も必要になってきます。父親の遺族は非嫡出子の存在を快く思わないことが多いため、非嫡出子本人が遺族と直接やり取りをするのは心理的な負担が多いでしょう。このように、死後認知の問題に1人で対応するのは荷が重いので、いち早く弁護士に相談することをお勧めします。

(記事は2021年7月1日時点の情報に基づいています)