1.印鑑証明書とは

印鑑証明書とは、自治体に登録した印鑑が、登録した本人の印鑑に間違いないことを証明するための書類です。正式には「印鑑登録証明書」といいます。不動産や自動車を購入するとき、公正証書を作成するときなど、特に本人の意思確認が必要な場合に使われます。
実印と、印鑑証明書を取得する際に必要になる印鑑登録証(印鑑登録カード)は非常に重要なものなので、その2つをどちらも持っているのであれば「本人に間違いない」と通常考えられます。印鑑登録された印鑑でハンコを押してもらい、印鑑登録書を提出することで、登録した本人の意思によるものであると信用してもらうことができ、簡単かつ確実に本人によるものであると確認することができるのです。

1-1.印鑑登録の方法

印鑑登録の方法は、自分自身で行う場合と、代理人に依頼する場合の2つがあります。登録する場所は、住民登録をしている市区町村の役所です。なお、15歳未満の方は印鑑登録をすることができません。

(1)自分自身で行う場合
登録する本人が、①登録する印鑑と、②官公署の発行する顔写真付きの身分証明書(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)を役所に持参すれば即日登録することが可能です。

(2)代理人に依頼する場合
本人がやむを得ず手続きできない場合には、委任状を作成して代理人にお願いして登録することも可能ですが、少し時間がかかります。

まず、代理人が①登録する印鑑、②委任状、③代理人の身分証明書を役所へ持参して手続きを行います。すると後日、本人の自宅に回答書が届くので、本人が必要事項を記入したうえで、再度代理人が①登録する印鑑、②回答書、③委任状、④本人の身分証明書、⑤代理人の身分証明書、⑥代理人の印鑑(認印で可)を役所へ持参すれば手続きが完了します。

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2.印鑑証明書が必要な相続手続き

遺産分割に関する手続きは重要なものが多く、印鑑証明書の提出が求められる場面は多いです。以下、具体例を見ていきましょう。

2-1.遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書を作成する際は、相続人全員の印鑑証明書が必要です。遺産分割後に、後述する様々な手続きの際に印鑑証明書の提出が求められるため、遺産分割協議書を作成する際に印鑑証明書を提出することになります。

2-2.預貯金の払い戻し

預貯金の払い戻しの際には、どのような方法で相続したかによって、必要な印鑑証明書が分かれます。大きく分けると以下の3つです。

(1)遺言書がある場合または相続人が1人の場合
 預貯金を相続する方の印鑑証明書
(2)遺産分割協議書がある場合
 相続人全員の印鑑証明書
(3)家庭裁判所による調停や審判手続きで分割方法が決まった場合(調停調書や審判書がある場合)
 預貯金を相続する方の印鑑証明書

2-3.株式の名義変更

株式の名義変更の際にも、上記の預貯金の払い戻しの際と同じように、印鑑証明書が必要です。

2-4.相続登記

遺産分割協議書によって、不動産の登記名義を変更する際は、相続人全員の印鑑証明書が必要です。なお、遺言がある場合や、家庭裁判所の調停調書や審判書がある場合は、印鑑証明書は必要ありません。

2-5.相続税の申告

遺産分割協議書を作成している場合、相続税の申告の際にも相続人全員の印鑑証明書の提出が必要です。

2-6.死亡保険金の受け取り

生命保険を契約していた場合には、受取人の本人確認のため、死亡保険金を受け取る際に受取人の印鑑証明書の提出が求められます。

3.特に注意が必要なケース

以上のように、印鑑証明書は遺産相続の様々な場面で要求されます。しかし、日本に居住しておらず、国内に住所登録がない方は印鑑登録ができず、印鑑証明書を取得することができません。このような場合にはどのような手続きを踏めばよいのでしょうか。

3-1.相続人が海外居住

海外に居住している方がいる場合、印鑑証明書に代わり、署名証明(サイン証明)を利用します。署名証明は、在外公館で発行するもので、海外に居住している方自身が在外公館へ出向き、その場で領事の面前で署名し、その署名が確実に本人のものだと証明してもらいます。

具体的な手続きとしては、①遺産分割協議書など署名する必要がある書類を在外公館に持参する、②領事の面前で署名押印する、③遺産分割協議書等と署名証明書を綴り合せて割り印を押してもらう、という流れで作成します。②のとおり、領事の面前で署名押印する必要があるため、遺産分割協議書等には事前に署名押印をせずに、持参します。

その際の必要書類は、①申請書、②申請者の有効なパスポート、③滞在資格を証明する書類、④遺産分割協議書など署名する必要がある書類です。詳細は、各国の日本国総領事館のホームページにも記載されています。

3-2.相続人が未成年

法律上、未成年者は1人では有効に法律行為をすることができず、法定代理人が行う必要があります。未成年者の法定代理人は、通常は親権者である親になります。
しかし、遺産分割においては、未成年者が相続人となる場合、親も相続人になっています。すると、親自身が自分にとって有利になるように、子に不利な内容で遺産分割をしてしまうおそれがあり、親と子で利害が対立してしまいます。

そこで、このような場合には、未成年の子のために特別代理人を選任してもらうよう家庭裁判所に申立て、親ではなく特別代理人が遺産分割の話し合いをすることになります。特別代理人は、通常、叔父や叔母など相続人ではない親族が選ばれることが多いですが、適切な人がいない場合には弁護士など専門家が選ばれることもあります。
このように、特別代理人が選任されて遺産分割協議書を作成した際には、特別代理人の印鑑証明書が必要となります。

4.印鑑証明書の取得方法と期限

印鑑証明書は、①役所で取得する方法、②コンビニで取得する方法があります。

4-1.印鑑証明書の取得方法

(1)役所で取得する方法
住民登録した市区町村の窓口で取得できます。その際、印鑑登録をした際に受け取った印鑑登録証(印鑑登録カード)が必要です。なお、代理人が取得する場合でも、基本的には委任状は不要です。
(2)コンビニで取得する方法
マイナンバーカードを持っていれば、コンビニなどで印鑑証明書を発行することが可能です。年末年始を除き、午前6時30分から午後11時の間に取得することができるため、日中役所へ行くことが難しい方などは、マイナンバーカードを取得しておくことがおすすめです。

4-2.印鑑証明書の期限

印鑑証明書自体には、特に有効期限が記載されているわけではありません。
しかし、提出する先によって、発行から一定の期間内の印鑑証明書の提出を求められることがあります。預貯金の払い戻しや株式の名義変更、死亡保険金の受け取りなどの際には、発行から3カ月以内のものを求められることが多いです。金融機関によっては、発行から6カ月以内でも可能というところもあります。提出先ごとにそれぞれで設定しているため、手続きの際には事前に期限の有無について確認しておくとよいでしょう。
一方、不動産の相続登記や相続税の申告の際には、特に期限はありません。

5.まとめ

以上のように、遺産相続の際には、印鑑証明書が必要となる場面が多数あります。いざ手続きをする際に慌てることのないように準備しておくとともに、もし相続手続きについて心配事があれば、悩む前に弁護士などに相談しましょう。

(記事は2021年6月1日時点の情報に基づいています)