目次

  1. 1. みなし相続財産とは?
    1. 1-1. みなし相続財産に該当するもの
    2. 1-2. なぜ相続財産として「みなす」のか
    3. 1-3. みなし相続財産は相続放棄しても受け取れる
  2. 2. 二つの代表的なみなし相続財産
    1. 2-1. みなし相続財産の代表例① 死亡保険金
    2. 2-2. みなし相続財産の代表例② 死亡退職金
  3. 3. 死亡保険金と死亡退職金には非課税枠がある
    1. 3-1. 法定相続人の考え方は基礎控除と同じ
    2. 3-2. 相続放棄をした人は非課税枠を使えない
    3. 3-3. 死亡保険金と死亡退職金の非課税枠の考え方
  4. 4. その他に注意したいみなし相続財産
    1. 4-1. 生命保険契約に関する権利
    2. 4-2. 定期金に関する権利
  5. 5. みなし相続財産の遺産分割と相続税について
    1. 5-1. 遺産分割の対象とならない
    2. 5-2. 「配偶者や子、親」以外が受け取ると相続税が2割増し
    3. 5-3. 非課税枠があるのは死亡保険金と死亡退職金だけ
    4. 5-4. 生命保険契約は内容に注意
  6. 6. みなし相続財産と遺留分の関係
  7. 7. まとめ:みなし相続財産の判定は税理士に相談を

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みなし相続財産とは、相続税法上、相続や遺贈によって取得した財産とみなされるものです。民法上、相続や遺贈で取得したものではないけれど、相続税法では相続財産として扱います。

具体的に、みなし相続財産には主に次のものが該当します。

  • 死亡を基因とする生命保険金(以下「死亡保険金」)
  • 亡くなった人が生前に勤めていた会社から支払われる退職金(以下「死亡退職金」)
  • 生命保険契約に関する権利
  • 定期金(個人年金保険など)に関する権利
  • 特別縁故者への相続財産の分与
  • 特別寄与者が支払いを受ける特別寄与料
  • 遺言による低額譲受
  • 遺言による債務免除益

この他、相続や遺贈で何ら財産を取得していないけれど、相続時精算課税制度の下で、被相続人の生前に贈与された財産や贈与税の非課税措置の対象となった教育資金や結婚・子育て資金の使い残しも相続財産とみなされて相続税がかかります。

なぜ相続や遺贈で取得していないにもかかわらず、相続税法では相続財産として扱うのでしょうか。それは課税の公平を図るためです。

たとえば、「被相続人の死亡後に相続人の手に渡る生命保険金」は、民法上の相続財産ではありません。だからといって課税しないでいると、「すべての財産を生命保険金にかえてしまおう」と考えて実行する人も出てきます。

そうなると、課税が不公平になってしまいます。「現金100万円を相続する家は相続税がかかるのに、死亡保険金100万円が相続人に支払われる家では相続税がかからない」という状態が生じてしまうのです。

こういったことにならないよう、相続や遺贈と同様の経済効果をもたらす財産には、「相続があった」とみなして相続税を課税するのです。

みなし相続財産は、民法上の相続財産ではないため、相続放棄をした人が受取人となっていても、受け取ることができます。ただし相続放棄をした人がみなし相続財産を受け取った場合には、「非課税枠」を使うことができません。

みなし相続財産として多くの家の相続で登場するのは次の二つです。

死亡保険金とは、被相続人の死亡をきっかけに相続人や受遺者に支払われる生命保険金です。被相続人に帰属した財産ではなく、あくまでも保険契約に基づいて支払われるので、民法上は「受け取った人の固有の財産」となります。

ここでいう死亡保険金は、次の三つの要素をすべて満たしたものです。

  • 保険料負担者=被相続人
  • 被保険者=被相続人
  • 受取人=相続人または受遺者

ポイントは「被相続人が保険料を負担していた」という点です。この保険料の支払いを、受取人本人が負担していたら一時所得として所得税の課税対象となり、受取人以外の人が負担していたら贈与税の課税対象となります。具体例を下の表にまとめました。

生命保険は保険料の負担者や受け取り人によって課税される税金が違います
生命保険は保険料の負担者や受け取り人によって課税される税金が違います

さらに、保険料を全額被相続人が負担するなら受け取った死亡保険金全額に相続税が課税されますが、被相続人の負担が一部だけなら、次の式で計算した金額が課税対象となります。

被相続人が保険料の一部のみを負担していた場合の課税対象額の求め方
被相続人が保険料の一部のみを負担していた場合の課税対象額の求め方

ここでいう死亡退職金は、前に述べたように「亡くなった人が生前に勤めていた会社から支払われる退職金」のこと。被相続人が亡くなったことで、本来被相続人が受け取るべき退職金を相続人が取得したときも、みなし相続として課税対象となります。

名目は関係ありません。「慰労金」「弔慰金」「花輪代」といった名称で支給されても、実質的に退職手当としての性質をもつものはすべて含みます。

この死亡退職金として相続税の対象となるものは「被相続人の死亡日以後3年以内に支給が確定したもの」です。3年を超えて支給されたものは、相続人の一時所得として所得税の対象となります。

なお、相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金については、修正申告を提出することになります。このとき、延滞税はかかりません。過少申告加算税も、税法に規定する「正当な理由があると認められる」に当てはまるため、非課税となります。

【関連記事】死亡退職金は受取人の財産になる? それとも相続財産か? 相続税の扱いや注意点も解説

死亡保険金と死亡退職金にはそれぞれ「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。この金額になるまで、死亡保険金にも死亡退職金にも相続税はかからないのです。ただ、次の点を押さえておく必要があります。

法定相続人の考え方は、相続税の基礎控除額の計算と同じです。具体的には次のようなルールがあります。

  • すでに死亡した人・欠格や廃除に該当する人は含めない
  • 相続放棄をした人も相続人の数に含める
  • 代襲相続をした人も法定相続人の数に含める
  • 養子は、他に実子がいないなら2人まで、実子がいるなら1人まで含める

死亡保険金は相続放棄をしても受け取れます。民法上は相続財産ではなく、相続人固有の財産だからです。ただし、非課税枠を使えるのは相続で財産を取得した相続人だけです。つまり、相続放棄をした人は、非課税限度額の計算の際には法定相続人の数に含まれますが、相続放棄した人が死亡保険金を受け取っても相続税の非課税枠を使えません。

次の事例で比較してみましょう。

例:相続人は母と子の2人、子が1000万円の死亡保険金を受け取る

非課税枠は「500万円×2人=1000万円」です。

【母と子の両方が財産を相続するとき】
子の受け取る死亡保険金1000万円に1000万円の非課税枠が適用されます。課税される金額は0円です。

【母のみが相続し、子が相続放棄をするとき】
子の受け取る死亡保険金に非課税枠は使えません。1000万円全額が相続税の対象となります。

死亡保険金と死亡退職金の両方が発生したら、非課税枠は次のような考え方をします。

  • 死亡保険金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
  • 死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人の数

先ほどの相続人は母と子の2人という事例で考えてみましょう。母と子が相続し、子が死亡保険金1000万円を、母が死亡退職金1000万円を受け取るとします。この場合、それぞれに1000万円の非課税枠が適用され、どちらも課税額は0円となります。

【関連記事】生命保険に相続税はかかる? 非課税になる条件を税理士が解説

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これまで解説してきた例以外にも、みなし相続財産があります。中でも次の二つは、注意しておきたいものです。

保険契約には、死亡保険金だけでなく、解約返戻金や満期保険金を受け取るものがあります。「保険料負担者=被相続人」「保険契約者=被相続人以外」の契約で、被相続人の死亡後に保険事故が発生し、契約者が保険金を受け取る場合です。これは、みなし相続財産となり相続税がかかります。課税対象となるのは、これまでに払ってきた保険料ではなく、解約返戻金に相当する額になります。

たとえば、父が保険料の負担者で、保険契約者が子、被保険者が母だったとします。父が亡くなった時点で、解約返戻金相当額がみなし相続財産となり、契約者である子に相続税が課税されます。

生命保険契約以外でも、被相続人死亡後に年金や保険金などの定期金を受け取るケースがあります。「保険料負担者=被相続人」「保険契約者=被相続人以外」という契約で、相続開始後に定期金給付事由が発生して契約者がお金を受け取る場合です。これもみなし相続財産として課税対象になります。

みなし相続財産には次の点に注意しましょう。

死亡保険金も死亡退職金も相続税法では相続財産とみなされますが、民法上は相続人固有の財産です。そのため、遺産分割の対象になりません。

みなし相続財産の受取人が「配偶者や子、親」以外なら注意しましょう。納める相続税が2割増しになるからです。

特に相続人でない孫を死亡保険金の受取人に設定するときは要注意です。非課税枠が使えないだけでなく、相続税も1.2倍支払うことになります。「受取人を誰にするか」は慎重に検討しましょう。

「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が適用できるのは、死亡保険金と死亡退職金の二つのみです。他のみなし相続財産には当てはまりません。

生命保険は契約内容によって課税が変わります。上記で説明してきたようにみなし相続財産となり非課税枠が適用されるものもあれば、非課税枠が使えないものもあります。さらに、みなし相続財産どころか民法上の相続財産として遺産分割の対象になるものもあります。契約内容には十分注意しましょう。

みなし相続財産は民法上の相続財産ではないため、原則、遺留分の対象ともなりません。ただし、たとえば保険金の受取人となった相続人は多額の保険金を受け取った一方で、ほかの相続人には分割する遺産がほとんどなかったなど、相続人の間に著しい不公平が生じていると認められた場合には、みなし相続財産も遺留分の対象となると考えられています。

死亡保険金や死亡退職金などは、民法上の相続財産ではなく受取人固有の財産として扱われます。しかし、課税の公平性を図るために相続税法上、みなし相続財産として扱われ、課税されます。

何がみなし相続財産にあたるかについては、特に生命保険は契約で扱いが変わるので難しいところです。判断一つで納めるべき税金が変わります。他にも、遺言で被相続人から財産を譲渡されたり、被相続人からの借金を遺言で免除されたりするケースもみなし相続財産として課税されます。

みなし相続財産の判定は難しいものです。「わかりにくいな」と感じたら税理士に相談しましょう。

(記事は2023年1月1日時点の情報に基づいています)

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