目次

  1. 1. 生命保険金に相続税がかかるとは限らない
  2. 2. 生命保険金には相続税の非課税枠がある
  3. 3. 生命保険金が非課税枠を超えても基礎控除が適用されることも
  4. 4. 非課税枠のある生命保険金、ない生命保険金
    1. 4-1. 非課税枠のある生命保険金
    2. 4-2. 非課税枠のない生命保険金
  5. 5. 生命保険金にかかる相続税の計算方法
    1. 5-1. 個々の生命保険金にかかる相続税額はわからない
    2. 5-2. 生命保険金に相続税がかかるかどうかはわかる
    3. 5-3. 課税される生命保険金の計算は
  6. 6. 生命保険金にかかる相続税の注意点
    1. 6-1. 相続放棄をすると非課税枠の適用がない
    2. 6-2. 孫の受け取った生命保険金は2割加算
  7. 7. まとめ|判断が難しい生命保険金は税理士に相談を

被相続人(亡くなった人)が被保険者となっている生命保険金は、被相続人の死亡後、相続人に支払われます。相続の時期に支払われると「相続財産」と思うかもしれません。しかし、実は相続税ではなく、ほかの税金がかかることがあります。

どんな税金がかかるかは、保険料の負担者や受取人から次のように判断します。

生命保険にかかる税金のパターン図。被保険者と負担する人によって変わる
生命保険にかかる税金のパターン図。被保険者と負担する人によって変わる

【生命保険にかかる税金のパターン】

  • 保険料を被相続人が負担していた場合:相続税
  • 保険料を保険受取人が負担していた場合:所得税
  • 被保険者は被相続人だが、負担者と受取人がそれぞれ別の生きている
  • 人の場合:贈与税

上記のうち、相続税の対象となる生命保険金は、民法上、受取人の固有の財産であって、相続財産ではありません。しかし、相続税法では、亡くなった被相続人自身が保険料を負担し、被相続人の死亡をきっかけに支払われることから「実質は相続で得た財産である」とみなして、相続税の対象としています。民法上は相続や遺贈で取得したものではないものの、相続税法では相続財産として扱う「みなし相続財産」という考え方です。

このほか、相続人に支払われた生命保険金のうち、契約上の受取人が被相続人になっていたものにも相続税がかかります。ただし、こちらは「みなし相続財産」ではなく、「本来の相続財産」として扱われます。

【関連記事】みなし相続財産とは 代表例の死亡保険金と死亡退職金をわかりやすく解説

先ほど、みなし相続財産として扱われる生命保険金についてお伝えしました。この生命保険金のすべてに相続税がかかるわけではありません。

相続税法は「生命保険金は被相続人死亡後の相続人の生活の支えである」と配慮し、課税されない部分(非課税枠)を次のように設けています。

生命保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

ここでいう「法定相続人」とは、民法上の相続人のことです。非課税枠の計算では、相続放棄をした相続人も法定相続人の数に含めます。相続人が子ども5人で、そのうち1人が相続放棄をしたとしても、非課税枠は「500万円×5人=2500万円」となります。

生命保険の非課税枠を超えた金額に関しては、その他に相続した財産を含めて計算した正味の遺産総額から相続税の基礎控除が適用されます(詳しい計算は後述)。

相続税の基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

法定相続人の詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。

【関連記事】法定相続人とは誰のこと? 対象者の範囲と順位を詳しく解説

生命保険金には非課税枠がありますが、必ず適用されるわけではありません。受け取る人の立場や生命保険金の中身によって変わります。

非課税枠が適用される生命保険金は、次の要件を満たしたものです。

  1. 被保険者と保険料負担者…被相続人
  2. 受取人…相続人

なお、ここでいう「相続人」には、相続放棄した人を含みません。

「被保険者と保険料負担者が被相続人」である生命保険金でも、相続放棄をした相続人や相続人でない人が受け取ったものには、非課税枠は適用されません。

【関連記事】相続放棄をしても生命保険はもらえる? 受け取る条件と注意点を解説

このほか、被相続人が保険料を負担し、相続人が受け取った生命保険金でも、非課税枠が使えないものがあります。すでにお伝えした「契約上の受取人が被相続人だった生命保険金」です。入院給付金や生存保険金、特約還付金などが該当します。

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ここで生命保険金にかかる相続税の計算方法を確認しましょう。

相続税は、個々の相続財産に対して直接かかるのではありません。計算が少し複雑です。

各人の課税価格を計算し、全員分を合計したあと、基礎控除額を差し引いて課税される遺産総額を算出します。これを法定相続分で案分して仮の相続税額を計算し、その後、実際に相続した額に合わせて本来の納税額を計算します。

こうした流れであるため、受け取った生命保険金にかかる相続税の額は、直接はわからないのです。相続税の計算式に関する詳細は、下記の記事をご確認ください。

一方、生命保険金に相続税がかかるかどうかはわかります。相続人全員が受け取った生命保険金の合計が「500万円×法定相続人の数」以下であれば、相続税はかかりません。

逆に、受取合計額がこの非課税枠を超えると、「相続人が受け取った生命保険金の合計額-(500万円×法定相続人の数)」の部分につき、相続税がかかります。

繰り返しになりますが、ここでいう「相続人」には、相続放棄をした人や相続人でない親族は含みません。

かかる相続税額はわかりませんが、課税される生命保険金の額はわかります。次の式で計算します。

引用元:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)
引用元:No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金(国税庁)

たとえば、相続人が配偶者と長男と次男の3人で、次男が相続放棄をしたとします。母も長男も次男も400万円ずつ受け取ったなら、相続税のかかる生命保険金の計算は次のように行います。母と長男の課税される生命保険金の額はいずれも0円で、2人は非課税となります。

  • 非課税限度額(非課税枠):500万円×3人=1500万円
  • 母の課税される生命保険金の額:400万円-1500万円×400万円/800万円<0 すなわち0円
  • 長男の課税される生命保険金の額:400万円-1500万円×400万円/800万円<0 すなわち0円
  • 次男の課税される生命保険金の額:400万円(相続放棄をしたため)

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生命保険金にかかる相続税にはいくつか注意点があります。

生命保険金を受け取っても、受取人である相続人が相続放棄をすると非課税枠は使えません。「相続財産を承継する相続人」にしか適用されないのです。

相続放棄をした人が受け取った生命保険金には全額、相続税がかかります。「500万円×法定相続人の数」という非課税枠の計算でカウントされることとは別の話なのです。

相続対策として生命保険金の受取人を孫にするときは、注意しなくてはなりません。「被相続人の配偶者」「被相続人の一親等の血族(子、両親)」以外の人が納める相続税は、本来の相続税額の2割増しです。つまり、相続人でない孫が受け取った生命保険金は、非課税枠の適用がないだけでなく、相続税がかかる場合1.2倍の相続税を納めることになります。

この他、生命保険金にはたくさんの注意点があります。実際、「どういった税金がかかるか」「非課税枠は使えるのか」といった判断は、専門的で難しいものです。1人で考えるより、税理士に相談したほうが安心でしょう。

(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)