目次

  1. 1. 死亡退職金は受取人固有の財産?それとも相続財産?
  2. 2. 受け取った死亡退職金に相続税はかかるのか?
  3. 3. 受け取った死亡退職金には相続税の非課税枠がある
  4. 4. 死亡退職金の注意点
    1. 4-1. 弔慰金の取扱いは?
    2. 4-2. 死亡退職金の受取人を遺言で指定できるか?
    3. 4-3. 受取人が定められている死亡退職金を受取人以外が取得したらどうなるのか?
  5. 5. まとめ|難しいと感じたら税理士に相談を

死亡退職金は、受取人が支給者である企業等から退職給与規定等に基づき直接支給を受けるものであり、受取人である遺族の生活保障を目的としているため、判例の多くは、被相続人の本来の相続財産ではなく、受取人固有の財産と解しています。

死亡退職金が被相続人の本来の相続財産でなく受取人固有の財産であることで、以下の点に注意が必要です。

①退職給与規定等で受取人に指定されている相続人が相続放棄をしても死亡退職金は受け取れる

②死亡退職金は原則として遺産分割協議の対象には含まれない

ただし、退職給与規定等に死亡退職金の受取人が定められていない場合、その死亡退職金は本来の相続財産に該当して、遺産分割の対象となると解する説があります。

③小規模企業共済の死亡共済金は、内縁の妻でも受け取れる

小規模企業共済の死亡共済金の受給者の範囲および順位は、民法上の相続の一般原則とは異なり、小規模企業共済法に規定されています。以下参考リンクに具体的な受給者順位等が記載されていますが、第一順位者である配偶者については、備考欄で「内縁関係者も含む(戸籍上の届出はしてないが、事実上婚姻と同様の事情にあった方)」とされています。

上記の通り、死亡退職金は、被相続人の本来の相続財産ではありませんが、被相続人が死亡したために相続人等に支給されるものであることから、本来の相続財産と経済的実質は異なりません。そこで、死亡退職金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象とされています。

ただし、死亡退職金が全て相続税の課税対象とされているわけではありません。相続税の課税対象となる死亡退職金は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものになります。死亡退職金であっても、死亡後3年を経過してから支給が確定したものについては、相続税の課税対象とはならず、遺族の一時所得として所得税の課税対象になります。

上記の通り、死亡退職金は相続税の課税対象となりますが、相続人に限り、受け取った死亡退職金のうち一定の金額(非課税限度額)は非課税とされています。

非課税限度額は次の式により計算した額です。

500万円 × 法定相続人の数(※) = 非課税限度額

(※) 法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

死亡退職金の非課税の取扱いについて、具体的な計算例は以下の国税庁HPタックスアンサーをご確認ください。

参考リンク:国税庁HP タックスアンサー「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」

なお、この死亡退職金の非課税の取扱いは、相続人以外の人が受け取った死亡退職金には適用されないので注意が必要です。つまり、相続放棄した人は死亡退職金を受け取ることはできますが、はじめから相続人でなかったものとみなされるので、非課税の適用はありません。

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死亡退職金については他にも注意すべき点がありますが、以下いくつか注意点を紹介します。

被相続人の死亡に際して死亡退職金以外に、弔慰金や花輪代、葬祭料などを受け取ることがあります。これらの弔慰金等は通常、相続税の対象になることはありませんが、以下のような場合には相続税の課税対象となるので注意が必要です。

  1. 被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分は相続税の対象になります。
  2. 上記1以外の部分については、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額とし、その金額を超える部分に相当する金額は退職手当金等として相続税の対象となります。

(1) 被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
 被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

(2) 被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき

 被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額
出典:国税庁HP タックスアンサー「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」

被相続人の勤務先企業の退職給与規定等に死亡退職金の受取人が定められている場合、死亡退職金はその受取人固有の財産となるので、被相続人が生前にその受取人と異なる人を遺言で受取人として指定することはできないと考えられます。

例えば、被相続人の勤務先企業の退職給与規定等に死亡退職金の受取人の第一順位者として配偶者が定められていた場合、配偶者と長男で遺産分割時に話し合って死亡退職金は長男が取得するとします。この場合、死亡退職金は、配偶者の固有の財産となり遺産分割の対象とならず、配偶者の相続税の課税対象となり、長男は配偶者から死亡退職金相当を贈与により取得したとして贈与税が課税されます。ただし、死亡退職金が代償分割における代償債務の支払いとして配偶者から長男に支払われている場合には、長男に贈与税の課税は生じず、代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算を行うことになります(以下国税庁HPタックスアンサー参照)。

出典:国税庁HP タックスアンサー「No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算」

会社役員の死亡退職金など、金額が大きい場合には非課税限度を上回って相続税の課税対象となる部分が生じる場合もあります。非課税限度額の計算や上記注意点など、難しいと感じたら早めに税理士に相談することをおすすめします。

(記事は2022年5月1日時点の情報に基づいています)