1.代償金の基本知識

そもそも「代償金」とはどういったお金なのでしょうか?

代償金とは、特定の遺産を相続する人が、遺産を受け継ぐ代わりに他の相続人へ払うお金のことです。たとえば不動産を1人の相続人が相続して他の相続人が何も受け取れなかったら、他の相続人の法定相続分が無視されてしまい、他の相続人は不満を持つでしょう。そこで、不動産を相続する相続人が、他の相続人の法定相続分に応じた代償金を払うことで公平に遺産分割を行います。

このように代償金支払いによって遺産分割する方法を「代償分割」といいます。

1-1.代償分割すべきケースとは

代償金の支払いによって解決すべきケースは、「分割できない財産」が残された場合です。以下の四つが代表例です。

・不動産
・株式
・車
・骨董品や絵画などの動産

こういったものは物理的に分割できませんが、一人が受け取って他の相続人へ代償金を払うと公平に分けやすくなります。

1-2.代償金の計算方法

■遺産の評価
まずは遺産の評価を行います。たとえば不動産なら簡易査定を行って時価を算定しましょう。車なら中古車サイトで相場を確認したりディーラーや中古車ショップに持ち込んで調べたりします。

上場株式なら株価を参考にして評価します。非上場株式の場合、専門的な評価方法を適用しなければならないので公認会計士に相談するのがよいでしょう。

■各相続人の法定相続分を計算
次に各相続人の法定相続分を計算します。たとえば子どもが3人で相続するならそれぞれの法定相続分は3分の1ずつです。

■代償金額を計算
法定相続分の結果を以下の計算式にあてはめると、代償金額を算定できます。

遺産評価額×法定相続分

たとえば3000万円の価値のある不動産が残されて長男が相続し、相続人は長男、次男、長女という子ども3人としましょう。

遺産評価額×法定相続分=3000万円×3分の1=1000万円

つまり、次男と長女へ支払うべき代償金額は1000万円ずつ。長男は次男と長女へそれぞれ1000万円ずつの代償金を支払えば、公平に遺産相続ができることになります。

2.代償金の支払いを遺言書で指定する

遺産相続が起こったら、基本的に相続人同士で話し合って遺産分割方法を決めなければなりません。

たとえば長男に土地建物を相続させたい場合でも、実際に子どもたちがどういった解決方法を選択するかはわかりません。親の希望度おりに長男が土地建物を相続して代償金を支払うかもしれませんが、子どもたちが合意して不動産を売却して解決する可能性もあります。

死後に不動産などの資産を確実に残してほしい場合、遺言書で代償分割を指定しておきましょう。

2-1.遺言書で代償金による分割を指定すべきケース

以下のような状況であれば、遺言書で代償分割を指定するメリットが大きくなります。

・不動産を売却せず、一人の相続人に引き継いでほしい場合
・一人に不動産を残したいが、そうなると他の相続人が不満をもってトラブルになりそうな場合
・遺留分請求権者が相続人に含まれる場合

2-2.遺言書で代償分割を指定するための書式

遺言書で代償分割を指定する際の書式は下記を参考にしてください。

第〇条 遺言者は、遺言者の有する以下の不動産を、長男田中一郎に相続させる。

長男に相続させる土地の表示と建物の表示

第〇条 長男田中一郎は前条記載の相続に対する負担として、長女佐藤花子に1000万円、次男田中次郎へ1000万円をそれぞれ代償金として支払う。

■無効にならないよう、要注意!
遺言書を作成するときには、間違いのないようにくれぐれも注意しましょう。

不動産をきちんと特定できなかったり相続人の表記を間違えたりすると、遺言書が無効になってしまう可能性があります。

不安があれば専門家に相談しながら遺言書の文面を書くのがよいでしょう。

2-3.遺言執行者を選ぶべき理由

遺言書を作成するときには、遺言執行者を選任するようお勧めします。遺言執行者がいたら、その人が不動産の登記などの遺産分割手続きを行ってくれます。

相続人たちに手間をかけずに済みますし、非協力的な相続人がいても遺言内容を実現しやすくなるメリットがあります。

■誰を遺言執行者に指定するのか?
遺言執行者は、遺言書で自由に指定できます。

このとき相続人を選任してもかまいませんが、あまりお勧めではありません。他の相続人が不満を抱いてトラブルになる可能性が高くなるためです。

できれば相続人以外の第三者を選びましょう。弁護士に就任してもらうと、相続手続きもスムーズに進めてもらえて安心です。

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3.遺産相続トラブルを避ける方法

代償分割時には、遺産の評価額や具体的な代償金の支払額を巡って相続人同士で争いが発生するケースが少なくありません。

たとえば代償金を支払う長男は「不動産は2400万円の価値しかないから代償金額はそれぞれ800万円ずつである」と主張しても、代償金を受け取る次男や長女は「3000万円の価値があるから代償金は1000万円払ってほしい」と希望するかもしれません。

また、遺言書で代償分割を指定しても、実際に相続人に現金がないと代償金を支払えない問題もあります。

そうした場合を想定し、トラブルを防止するために有効な二つの方策を紹介します。

3-1.代償金の金額をあらかじめ指定する

遺言書で代償分割を指定するときには、代償金の金額も指定しておきましょう。

遺言書で代償分割を指定する文例で示したように「代償金として1000万円支払う」などと書いておけば、相続人たちが遺産の評価や代償金の計算をする必要がありません。無駄な争いを回避できます。

3-2.不動産の相続人に現預金を受け継がせる

不動産や株式などを相続させる相続人には、代償金支払い用の現預金を受け継がせましょう。たとえば生前贈与で現預金を渡す、生命保険金を受け取らせる、遺言で現預金も相続させるなどの対応が有効です。

まとめ:遺産相続に強い弁護士の力も借りよう

不動産などの資産を特定の相続人に受け継がせたいなら、遺言書で代償分割を指定しましょう。

ただし、その際には代償金の金額をいくらにするのか、遺言執行者を誰にするのかなど、検討しなければならない事項がいくつもあります。遺言書が無効にならないよう、正しい方法で作成しなければなりません。

より確実に希望を実現したいなら、遺産相続の専門家である弁護士の力を借りましょう。まずは相続に積極的に取り組んでいる弁護士に遺言書作成の相談をしてみてください。

(記事は2021年2月1日時点の情報に基づいています)