目次

  1. 1. 贈与するお金を保険料にしてむだ遣いさせない
  2. 2. 保険契約者と保険金の受取人を「子ども」にすると節税効果
  3. 3. 子どもが保険料の負担をしたことを明確にする

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最近、保険会社さんでも「保険料贈与プラン」を積極的に勧めているようです。このタイプの保険に加入するメリットは、大きく次の二つが考えられます。
(1)生前贈与した現金を保険料にすることで、無駄遣いさせないという効果がある
(2)高額な相続税がかかる人の場合、保険の加入の仕方を所得税型にすることで、節税効果が見込める

(1)は「あげた現金を無駄遣いされない」ということです。贈与税の非課税枠を利用して節税をする場合、「長きにわたって、コツコツと贈与する」ことが高い効果を生むというのは既に説明している通りです。
しかし、毎年現金をあげて、それを湯水のように使われたくないし、かえって子どもの自立を妨げてしまうのではないか、と危惧する方も少なくありません。その点、あげたお金で生命保険に加入させれば、とりあえずは無駄遣いをされないという安心感もあります。年金型の保険などにしておけば、受取時期も金額も指定することができます。

一方、(2)の節税効果を期待するというのは、「生命保険の加入の仕方によって税金が変わってくる」という性質を利用したものです。相続税型の生命保険金には、相続税のかから
ない非課税枠(500万円×法定相続人の数)があり、この範囲内であれば、相続税の節税対策に役立ちます。しかし、この非課税枠を超えた部分は相続税の対象となってしまうため、高額な生命保険に加入していれば相続税の負担が増えて、せっかくの保険金の手取りが減ってしまうことがあります。

しかし(2)のように、保険の加入方法を所得税型に変えれば、かかる税金を低く抑えることが可能になります。具体的には、保険契約者(保険料負担者)と保険金の受取人を子どもにするのです。子どもが生前贈与でもらった現金を生命保険料として支払い、父(もしくは母)が亡くなった時に、その子ども本人が受取人になる生命保険契約にするのです。

税金が低く抑えられる理由は、所得税の税金の計算方法に秘密があります。
ここからは、ちょっとむずかしい話になりますが、少しの間、がまんしてお付き合いください。
この場合の所得税とは、生命保険金の儲けに対してかかる税金です。生命保険金の儲けというのは、払った保険料と受け取った保険金の差額です。しかも、生命保険金を受け取った場合は「一時所得」という種類の所得になるのですが、「一時所得」にかかる所得税は、他の所得にかかる所得税に比べてとてもオトクなのです。

たとえば、3000万円の生命保険金を受け取るのに1000万円の保険料を支払った場合、儲けは、3000万円-1000万円=2000万円ですよね。「一時所得」の場合、この儲けの2000万円から50万円を引いて、なおかつその残額を2分の1にしてから税率をかけるのです。
(2000万円-50万円)×1/2=975万円

つまり、3000万円の保険金を受け取っても、975万円に対してだけ、所得税がかかることになるわけです。
これに対して、相続税型で受け取った場合、生命保険料をいくら払っていたとしても関係ありません。非課税枠を超える部分は、受け取った保険金がそのまま相続税の対象となってしまいます。

ただ、実際どのくらいの節税効果があるのかは、相続税で見込まれる税率と所得税の税率を比較してみないと判断できませんが、高額な相続税が見込まれる場合、非課税枠以上の保険への加入を検討している場合は一考を要します。

この方法を利用するときに気をつけたいのは、保険料を負担したのは子であること
を明確にしておくということです。相続が発生した際に税務署から「本当は親が保険料を負担したのでは?」などと疑われては、元も子もありません。
そのためには、親子間であっても贈与契約書を作成する、預金口座を通して贈与の記録を残す、保険料の引き落としは子どもの口座から行うなど、客観的な証拠を残しておくことが大切です。

(記事は2021年1月1日時点の情報に基づいています)

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