生命保険との違いは何か

生命保険信託とは、生命保険契約における保険金の支払いを、信託銀行等に「信託」するものです。「信託」とは「信じて託す」という言葉通り、「自分の財産」を「信頼できる人」に託して、自分の目的に沿って大切な人のために運用・管理してもらう制度です。ここでいう「信頼できる人」の代わりになる信託業務を行うのが信託銀行等です。

簡単に言うと、生命保険信託は信託銀行等を保険金受取人として生命保険を契約します。万一の際に、死亡保険金を信託銀行等が受け取り、そのお金をあらかじめ指定した人に事前に決めた支払期間・支払方法で支払うものです。

大きな特徴は、通常の生命保険と違って、保険金の受取人や受け取り方法を自由に設定できることです。一般的な生命保険の保険金受取人は、配偶者や子、親、兄弟姉妹など一定の親族に限定され、受け取り方法も一括払いや年金払いが通常です。生命保険信託は、それらを自由に設定できるのです。

障害者や認知症の人への相続に有効

生命保険信託は、どのような人に向いているのでしょうか。それは、死亡保険金を渡したい人が、未成年者や障害者、認知症、要介護状態、事業を継がせたい後継ぎ(子以外の人)であるような場合です。

つまり、保険金を渡したい人の財産管理能力に不安がある場合や、親族以外の人に保険金を渡したい場合に有効な商品だと言えるでしょう。

例えば、シングルマザーやシングルファザーで、子どもは未成年といったケースなど、死亡保険金を直接受け取っても、子ども自身が管理することは困難だと考えられる状況があるとします。

この時、生前に「万一のときには、生活費として毎月20万円を子どもの面倒を見てくれる人の銀行口座に振り込む」と決めておけば、信託銀行等がそのとおりに支払ってくれるわけです。

また、信託銀行等が管理している財産の一部の払い出しや支払条件の変更等を行うことができる「指図権者」を、あらかじめ決めることもできます。

さらに、最初に財産を受け取る「第一受益者」が死亡した場合に備えて、「第二受益者」や「第三受益者」を定めることができたり、「第二受益者」が死亡した際に、残った財産をあらかじめ指定した公益法人等の帰属権利者に寄附することを定めたりできる信託銀行等もあります。

信託にかかる費用は

生命保険信託の利用上の注意点は、生命保険としての負担と、信託としてのコスト負担が必要になる点、節税になるわけではない点などが挙げられます。生命保険信託は、元が生命保険契約なので保険料負担が発生します。保険料は保険会社によって異なるので、割高でないかどうかを比較検討することも重要です。

また、それ以前に、その保障が本当に必要かどうかを冷静に検討すべきでしょう。必要以上の保障に加入するのは保険料がもったいないですし、そのお金を貯蓄や運用に回したほうが効率がいいと言えます。

そして生命保険信託は、対象となる生命保険契約の「保険金請求権」を「信託」するかたちになるので、信託銀行等に支払う手数料が発生します。この手数料は信託銀行等によって異なります。一般的には、信託契約締結時の手数料、金銭信託設定時の手数料、信託期間中の管理手数料などがかかります。

生命保険信託の事例を比較すると・・・

例えば、第一生命保険の契約者兼被保険者が利用できるみずほ信託銀行の生命保険信託「想いの定期便」という商品の場合、死亡保険金1,000万円以上が対象で、手数料は以下の通りです。

・信託契約締結時:55,000円(税込)
・金銭信託設定時:死亡保険金の2.2%(税込)、金銭信託を設定しない場合は110,000円(税込)
・金銭信託設定時の運用期間中の信託報酬:年22,000円(税込)+信託金の元本×(下限年0.01%~上限年6%)

一方、プルデンシャル生命の契約者兼被保険者が利用できるプルデンシャル信託の生命保険信託の場合は以下の通りです。

・信託契約締結時:5,500円(税込)
・金銭信託設定時:保険金総額の2.2%(税込)、一括交付の場合は110,000円(税込)
・金銭信託設定時の運用期間中の信託報酬:年22,000円(税込)

以上、2社のケースだけ取り上げましたが、取り扱いの信託銀行等によって細かな部分が異なるので、きちんと比較検討することが重要です。そのうえで、これらの手数料を支払ったとしても生命保険信託に魅力を感じられる場合に、利用を検討するとよいでしょう。

遺言書や成年後見制度と併せて検討を

生命保険信託は、相続発生後の死亡保険金の受取人や受け取り方法を自由に設定できるメリットはありますが、相続税などの節税対策として有効というほどではありません。生命保険信託の課税方法は、基本的に通常の生命保険と同様だからです。

保険金受取人が法定相続人なら、保険金の非課税枠(法定相続人の人数×500万円)が使えますが、それ以上の特別な節税はありません。保障の必要性と信託の必要性、コスト負担を慎重に検討すべきでしょう。

ちなみに、相続発生後の遺産分割や処分方法を指定したい場合は、遺言書を書いておくことが有効ですし、成年後見制度などもありますので、必ずしも生命保険信託が最も有効な手段だと言えるわけではありません。家族構成や相続人、死亡保険金を渡したい人の状況などによってケースバイケースです。

自分が死亡した場合の相続について何らかの不安を感じているのであれば、早めに信頼できる人(会計士や税理士、FPなど)を見つけて相談してみるのもよいでしょう。その際は、くれぐれも1人だけでなく、複数の専門家に相談して、様々なアドバイス(選択肢)を聞いたうえで、自分に最も適しているものはどれかを慎重に検討しましょう。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)