生命保険金は原則として遺産とは別

生命保険金は、法律上は、原則として遺産とは別物であり、相続財産には含めません(ただし、法律ではなく税金の世界(相続税申告の場面)では遺産に含めて計算しますので、注意が必要です)。
そのため、生命保険金は、遺産分割の対象とはなりません。
これは、生命保険金はその性質上、保険契約に基づき受取人が受け取るものであって、受取人固有の財産と考えられているからです。
つまり、生命保険金以外の財産を相続人間で分割した上で、生命保険金の受取人となっている人は別途、生命保険金を受け取ることができる、ということになります。

生命保険金が特別受益になることもある

上記の通り、生命保険金は遺産とは別物であり、原則として遺産分割の対象とはなりません。
ただ、あまりに額が多額で、遺産総額と比較した際の割合も大きい場合には、その他の共同相続人との間で非常に不公平な結果になってしまうことがあります。
そのため、そのような場合には、特別な贈与を遺産に戻して計算して公平を図る制度(特別受益制度)を生命保険の場合にも当てはめ、生命保険金を特別受益に準じて遺産に戻して計算することがあります。

具体的にはどのような場合に特別受益に準じて扱うのか

では、具体的には、どのような場合に、特別受益に準じて扱うことになるのでしょうか。
これについては、はっきりとした基準があるわけではありません。
過去に裁判所が判断したところによれば、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断」すると考えられており、事案ごとに、様々な事情を考慮して判断する、「総合考慮」です。
ただ、これまでの例では、相続財産の総額が約8423万円、生命保険金の額が約5154万円、比率が61.1%の事案で、特別受益に準じて扱うことを認められたケースがあります。

特別受益に準じて扱う場合の計算方法

では、生命保険金を特別受益に準じて扱う場合、遺産分割にはどのような影響があるのでしょうか。
上記で説明した、相続財産の総額が約8423万円、生命保険金の額が約5154万円という事例で、相続人が子2人であった場合、

遺産額=8423万円+5154万円=1億3577万円
各相続人の相続分(2分の1)=1億3577万円÷2=6788万5000円

となり、相続人はそれぞれ6788万5000円を相続すべきということになります。
ただ、生命保険金を受け取った者は、5154万円をすでに取得しておりますので、差額の1634万5000円のみを相続し、残りの遺産6788万5000円はもう一方の相続人が取得できるという形で、相続人間の平等が図られることになるのです。

おまけ:生命保険の保険料を別の相続人が出していた場合

事案は変わりますが、たまに相談としてあるのが、父を契約者とする生命保険について、保険料を長男が支払い、受取人を長男にしていたところ、父が亡くなってから確認すると、受取人が次男に変更されていた、というケースです。
たしかに、生命保険の契約者は被相続人である父ですので、受取人も父の意思で自由に変更することが可能です。

しかし、このようなことをされては、長男としてはたまったものではないでしょう。このような場合には、長男は、父が支払うべき保険料を自分が支払うことによって、「父の財産を維持又は増加させた」として、寄与分を主張することが考えられます。
長男が支払った保険料の全額が寄与分として認められるかは必ずしも明らかではありませんが、これにより、支払い分の取り戻しができる可能性があります。
また、本来は父が支払うべき保険料を長男が立替支払いしていたと理解すれば、長男は、父に対して、立替保険料の返還請求権という債権を持っていたと考えることもできます。
父が亡くなったことにより、その債務が法定相続分に従い長男と次男に相続されたことになりますので、この考えに立てば、長男は次男に保険料の半額を返還請求できる余地があります。

このように、本来は遺産と別物となる生命保険も、場合によっては遺産分割と密接に関係することがあります。
自分の財産をどのように分けるか悩んでおられる方にとっても、生命保険の性質を考慮することで、意思に沿った分割が可能となることもありますので、悩まれた際にはぜひ弁護士に相談してみてください。

(記事は2020年11月1日時点の情報に基づいています)