目次

  1. 1. 相続税の税務調査は5、6人に1人の割合で実施
  2. 2. どのような人が税務調査の対象になるのか
  3. 3. 実地調査はどのように行われるか
  4. 4. 税務調査で指摘を受けるとどうなる?
  5. 5. 税務調査を受けないよう対策を

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相続税に関する手続きは、申告書を提出して納税すれば終わると思われがちです。しかし、申告が終わって忘れたころに税務調査が行われることもあります。税務調査が行われると、多くの場合は申告漏れや計算ミスが指摘され、税金を追加で納めることになります。

この記事では、相続税の税務調査とはどのようなものか詳しくご紹介します。もし、税務調査が行われることになった場合でも、どのように調査が行われるかを知っておけば多少は安心できるでしょう。

関連記事:相続税の税務調査は税理士に頼むべき!「強い」税理士の見つけ方も解説

税務調査とは、税務署が申告内容について申告漏れや計算ミスがないかどうかを調べるものです。

相続税の税務調査では、実地調査のほか簡易な接触と呼ばれる調査が行われます。実地調査は、税務職員が相続人の自宅を訪問して行います。簡易な接触は、電話・文書による連絡や相続人を税務署に呼ぶなど、税務職員が訪問しない調査です。

両方を合わせると、申告書を提出した人のうち5、6人に1人の割合で税務調査が行われています。(件数は相続人の数ではなく亡くなった被相続人の数で集計しています。)

相続税の税務調査は、税務職員の人事異動などの事情から、申告書を提出した翌年か翌々年の8月から11月ごろに実施されることが多くなっています。3年以上経ってから実施される場合もありますが、申告期限から5年を過ぎれば調査が行われることはありません。申告内容に誤りがあっても修正を求めることができなくなるためです。

税務調査の対象は無作為に選んでいるわけではありません。申告漏れや計算ミスがあると見込まれるケースを事前に調べてから調査を行います。例をあげると、次のようなケースで実施されることが多くなっています。

  • 申告書の計算が間違っている
  • 相続した遺産が多いはずなのに相続税の申告が少ない
  • 相続人が自分で申告書を作成して税理士が関与していない

相続税の申告書の一部は機械で読み取ることができ、税額の計算に誤りがないかが自動的に判定されます。単純な計算ミスはこの段階で見つけられます。

次に、亡くなった被相続人に遺産がどの程度あったかを税務職員が推測し、申告内容が正しいかどうかの検討が行われます。

税務職員はこの過程で、被相続人の過去の所得や固定資産税の課税状況を確認します。あわせて、不動産の名義変更の有無、保険金の支払状況、預金の入出金履歴などあらゆる情報を入手します。

多額の遺産を相続したと見込まれるのに、相続税の申告が想定よりも少ないことがわかれば、相続人に直接話を聞くなどして事情を確認することになります。

相続人が自分で申告書を作成して税理士が関与していない場合も、税務調査の対象になることが多くなります。専門家が関与していなければ、申告内容が誤っている可能性が高いからです。

ところで、「申告書を出さなければ税務署は遺産を相続したことがわからないから、税務調査が行われることもないだろう」と思う人がいるかもしれません。しかし、死亡届を出せば税務署に連絡されることになっているため、申告をしないで隠し通すことは不可能です。実際に、相続税を申告していない人に対しても毎年1,000件程度税務調査が行われています。

税務調査のうち実地調査は、税務職員が2名で相続人の自宅を訪問して行います。通常は、事前に連絡します。大勢の税務職員がいきなり自宅に押しかけてくる強制捜査は、多額の脱税が疑われるなど特に悪質な場合に限られます。

相続人のもとに税務署から連絡があれば、対応できる日程を決めます。申告を税理士に依頼した場合は、その税理士のところに連絡があります。税理士にも調査に立ち会ってもらった方がよいので、話し合って日程を決めましょう。

実地調査の当日は、午前中は税務職員からの質問があり、午後には通帳や金庫などの確認が行われます。最後に指摘事項が通知され、夕方には終了します。

午前中の質問では、故人だけでなく相続人の職業、収入、財産の状況などを事細かに聞かれる場合があります。午後には、通帳や現金の保管場所を見せるように言われることもあります。プライバシーにかかわるだけに抵抗があるかもしれませんが、あらぬ疑いを持たれないようにできるだけ協力するように心がけましょう。

通常、実地調査はこの1回のみとなります。その後税務署で検討が行われたり、相続人または税理士が税務職員の質問事項に答えたりするため、すべて終了するには1カ月から3カ月程度かかります。

申告を税理士に依頼していない場合でも、実地調査の対応は可能な限り税理士に立ち会ってもらうことをおすすめします。税務職員の指摘が相続人にとって極めて不利な場合でも、税理士がいなければ反論できないからです。

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実地調査が行われると、8割以上で申告漏れや評価誤りの指摘があります。税務職員の訪問がない簡易な接触でも、6割以上で何らかの誤りが見つかっています。

指摘を受けた場合は、相続人が自ら修正申告(以前提出した申告書を修正して正しい税額に直す手続き)を行います。申告をしていなかった場合は、期限後申告(期限を過ぎてから新たに申告書を提出する手続き)を行います。

修正申告をして相続税を追加で納税することになった場合は、過少申告加算税や延滞税も納めなければなりません。過少申告加算税は申告を誤ったことへのペナルティで、延滞税は正しい税額の納付が遅れたことに対するペナルティです。

相続税を申告していなかった場合は、過少申告加算税に代えて無申告加算税が課されます。意図して財産を隠していたなど悪質な場合は、過少申告加算税・無申告加算税に代わってより重い税率の重加算税が課されます。

税務調査の指摘に不服がある場合は、3カ月以内に税務署長に再調査の請求ができます。再調査の結果に不服がある場合は、1カ月以内に国税不服審判所に審査を求めることができます。審査の結果に不服がある場合は、裁判で争うことになります。

再調査や審査請求では、納税者の主張が認められることが少ない上に、結果が出るまでに時間がかかります。また、専門家のサポートも必要で、多額の報酬がかかります。税務調査の指摘によってよほど大きな不利益を被る場合でない限り、税務当局と争うことはおすすめできません。

ここまで、相続税の税務調査について詳しくご紹介しました。税務調査が実施されると、対応するのに精神的な負担がかかるだけでなく、高い確率で相続税を追加で納めることになってしまいます。

相続税をはじめから正しく申告しておけば、税務調査が実施される可能性は格段に低くなります。相続税に強い税理士に申告を依頼することをおすすめします。申告内容の詳細な説明を記した書面を添付する「書面添付制度」を利用する税理士であれば一層心強いでしょう

(記事は2019年11月1日時点の情報に基づいています)

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