税務署は相続税が発生しそうな家を知っている?

今年に入って父親を亡くしたというAさんが、慌てたように相談にやってきました。「父が亡くなって半年ほどたつのですが、先日片付けのために久しぶりに実家に戻ってみたら、税務署からこんな書類が届いていたんです。どうすればいいでしょうか?」

相続税が発生しそうな人が亡くなると税務署は、「相続税の申告を忘れないように」と書類を送ってきます。書類は2種類あって、相続税がかかりそうな人には「相続についてのお知らせ」、より確実に相続税がかかると思われる人には「相続税の申告等についてのご案内」が送られてきます。Aさんに届いたのは、「相続税の申告等についてのご案内」。

不動産を持っている方や生前収入の高かった方などが亡くなると、これらの書類が送られてくるようです。こんなものを送ってくるなんて、税務署が各家庭の財産を把握しているということ!?と考えるとちょっと怖いですよね。

Aさんは、お父さんの財産に相続税がかかるなんて思ってもいなかったと言います。お父さんの財産は、自宅(評価額3000万円)と預貯金が2000万円程度で、総額5000万円ほどありました。
Aさんは一人っ子で、お母様は既に他界しています。つまり、法定相続人はひとりです。相続税の課税ラインは、法定相続人がひとりの場合は3600万円ですから、5000万円の相続財産があれば相続税がかかることになります。

「お知らせ」が届いてから相続税の準備をしても遅い

Aさんのように税務署から「お知らせ」などの書類が届いたことで、はじめて相続税がかかるかもしれないと気づく方もいらっしゃいます。
しかし、書類が届くのはおおむね相続から半年前後、遅い場合には9カ月もたってから届いたなんて話があるなど比較的ゆっくりです。しかも、これらの書類は、基本的には亡くなった方のご住所に届きますから、書類が来たことに家族は気づかないという可能性もあるのです。

相続税の対象となった場合、申告書は相続開始後 10カ月以内に提出し、相続税は原則現金一括払いです。期限内に申告できない場合は、「無申告加算税」というペナルティが科されます。「無申告加算税」は納付すべき税金の5〜20%。それ以外に「延滞税」という利息のようなものが付きますが、これが年8.9%※(最初の2カ月のみ年2.6%※)と高利貸なみの年率なのです。
※平成30年から令和2年までの期間。利率は期間によって変動します。

「申告期限内にとにかく相続税の申告書を作ればいいんでしょ」と思われるかもしれませんが、相続税の申告書を作るのはなかなか大変な作業です。

まずは、亡くなった方のすべての財産を確認するところからスタートするのですが、人ひとりの財産をすべて探し出すのは至難の業です。
預金通帳だって複数の銀行で作っていることがありますし、証券会社、保険会社、ゴルフ会員権など、とにかく現金換算できるものは、すべて相続財産です。
最近ではネットバンキングやネット証券なども普及していて、そういうところで口座などを作っていると、家族が探し出せないという可能性も……。もちろん土地や建物だって、しっかり調査して相続税の計算のための評価額を決める必要があります。

今回のご相談者であるAさんは、一人っ子で相続人は1人でしたが、相続人が複数いる場合は、誰がどの財産をもらうのかも申告期限までに決めなければいけません。

また、「相続税の納税資金が足りない!」なんてこともままあります。手持ちの現預金では相続税が払えないということになれば、納税資金を準備するのも一苦労です。

つまり、税務署からの「お知らせ」などの書類が届いてからでは相続税の申告や納税が間に合わないという方もいるのです。
「うちには大した財産がないから多分大丈夫」とタカをくくっている方、本当に相続税がかからないかどうか、ぜひ確認していただきたいと思います。
高い相続税を払った上に無用なペナルティまで科せられることになれば、ましてや相続税が高額で払えないなんてことになったら……。残されたご家族は泣くになけません。

税務署からのお知らせに慌てないためには

家族にこんな思いをさせないためにも、エンディングノートなどを利用して、ご自分の財産リストを把握してみてください。厳密にやろうとすると、面倒くさくなるかもしれませんので、まずはざっくりで結構です。それをもとに、自分に万一があった時に、相続税がかかるのかどうかを確認してみましょう。
事前に相続税がかかるとわかれば、節税対策をすることもできますし、納税資金の準備も可能です。また、財産を把握することで、どの財産をだれに残すか、などを考えるきっかけにもなります。
エンディングノートには、相続税の簡易確認ができるものも売られています。是非活用してみてください。

(記事は2020年7月1日現在の情報に基づきます)