目次

  1. 1. 大切な家族への説明
  2. 2. 年末年始に伝えてみては
  3. 3. 家族会議に必要な準備
  4. 4. 話し合いは法定相続人だけで
  5. 5. 親子双方の心構え
    1. 5-1. 親からの視点
    2. 5-2. 子どもからの視点
  6. 6. 家族の将来考えて

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今回、取材したのは、公認会計士で税理士の五十嵐明彦さんです。「相続で家族がもめないための『生前会議』の開き方」を監修している経験も踏まえ、家族会議を行う上での注意点を教えてもらいました。

残された家族が相続でもめないために必要な遺言。しかし、事前に説明もなしに遺言だけが残っては、子どもたちにとっては、寝耳に水。親をしのぶどころか、親を恨むトラブルにつながる危険性があります。
「そもそも法定相続人が100%納得する相続はないと思っています。きょうだいの仲が悪いと、ほとんどもめます。仲が良くても、一人でも疑問を呈したり、納得しなかったりする人がいれば、必ずトラブルにつながります」と語る五十嵐さん。

平等に分けたとしても、「俺は長男で家業を継いだんだから、平等はおかしい」、「私はずっと介護をしたのに!」といった不満は出てくるもの。そこで、遺言書を書く前に、自分と子どもたちの気持ちをすり合わせる必要があるのです。

特に、借金などのマイナスの財産がある人は、注意が必要です。相続放棄の期限は3ヶ月しかないので、その期間を過ぎると、子どもたちに借金が引き継がれてしまう恐れもあります。このため、「負の相続」がある人は、必ず伝えておく必要があります。たとえば、土地を担保にした借金がある場合など、マイナス分を被ってでも相続したほうがプラスになるケースもあります。そうした判断を相続放棄の期限内にするためにも、生前の説明が必要です。

五十嵐さんは「相続税を申告した後で、税務調査が入り、『この預金が申告されていない』と指摘を受けることもあります。預金口座が複数ある場合は、一つにまとめておく準備なども大切です」と話します。たしかに、いつ作ったのか、すっかり忘れている銀行口座が複数ある人も少なくありません。生前会議は、自分のすべての財産をきちんと把握することからスタートです。

年末年始は、家族が一堂に会する貴重なタイミング。相続について切り出そうとする人もいるかもしれません。

そうは言っても、のんびりと里帰り気分で集まった子どもたちを前に、いきなり切り出すのは難しいものです。そこで、半年後のお盆休暇に、本格的な家族会議を開くことを目標に、この年末年始は「そろそろ相続について考えている」と、子どもたちに伝えることをお勧めします。そうすれば、半年後に家族で話し合おうという合意を得ることにも、つながります。子どもたちにすると、それまでに心の準備を整えることができます。

明治大学商学部3年生時に公認会計士の試験に合格。現在は、税理士のほか社会保険労務士としての資格も持つ。税理士法人「タックス・アイズ」の代表社員を務めており、代表的な著作には「相続破産 危ない相続税対策、損する遺産」(朝日新聞出版)などがある。

次に、半年後の家族会議に向けて必要な準備についてまとめてみました。

・生前会議の出席者リスト
・実印
・不動産登記簿
・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
・財産目録
・株式、有価証券
・生命保険の保険証券
・ゴルフ会員証書
・賃貸契約書(不動産を人に貸している場合)
・借用書(人からお金を借りている場合)
・誰かの連帯保証人になっている場合には、その契約書
・相続の専門家を探しておく

すべてそろえなくてもよいので、最低限、預金や不動産、有価証券、保険、そして借金の有無などを記した簡単な財産目録を作成しましょう。そして、財産をどのように分けたいのか、例えば、平等にしたいのか、それとも差異をつけるのか、といった自分の気持ちを整理。「なぜ、このような内容にしたのか」という理由を明確な文章にまとめます。

そうした上で、子どもたちに相続を切り出してみてください。すべてを明らかにせず「これぐらいでいいよね」という確認でも構いません。

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五十嵐さんは、「生前会議で大事なことは、必ず法定相続人だけで話し合うこと。それぞれの配偶者を入れるようなことがあると、必ずもめます。会議がもめると修復が困難になることが多い。もし決裂したら、弁護士などの第三者に入ってもらう方法もあります」と指摘します。

もめないためには、どうしたらいいのか。五十嵐さんの意見をもとに、親子双方の心構えをまとめてみました。

・自分の財産を把握し、配偶者や子どもたちにどのように分配したいか考えをまとめる。
・親から相続したものは、すべて自分の名義に変更しておく。
・簡単な財産目録を作成する。
・子どもたちに「そろそろ考えているけど」と相続についての話題を投げかける。
・会議は親が主導し、交通費などの経費も負担したほうが集まりやすい。

・子どもから切り出すのは難しいもの。親の風邪など軽い病気やケガに加え、孫の誕生といったライフステージの変化をきっかけに、相続の話を持ち出してみる。
・有名人の相続ニュースや話題などを切り口に「うちもそろそろ」と持ちかける。
・会議の場では、親が「何を考えているんだろう」、「なぜ、このような考えに至ったのか」を理解する。
・疑問があれば、感情的にならず、なぜ、そのような分け方や考え方になったのかを納得できるまで聞く。

生前会議は、子どもの側からは、なかなか切り出せないもの。ここは親が自ら動いて、子どもの負担を軽減してあげましょう。「生前会議がうまくいけば、相続でもめることはほとんどありません」と五十嵐さんは話します。法定相続人との気持ちがまとまれば遺言書の作成もスムーズです。

この年末年始は、将来の家族のあり方を考えてみる機会にしてみませんか?

(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)

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