相続の不動産評価額とは?相続人の間で考えが違う場合の対処法を解説
親が亡くなって相続が発生したとき、相続税の申告や遺産分割協議の前提として、遺産目録を作成します。この時、遺産に不動産が含まれる場合、その資産価値(評価額)をいくらと考えるのか、相続人の間でもめることが少なくありません。そこで、不動産評価額の考え方について解説します。
親が亡くなって相続が発生したとき、相続税の申告や遺産分割協議の前提として、遺産目録を作成します。この時、遺産に不動産が含まれる場合、その資産価値(評価額)をいくらと考えるのか、相続人の間でもめることが少なくありません。そこで、不動産評価額の考え方について解説します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
まず相続税を申告するために作成する遺産目録では、不動産は相続税評価額で記載します。相続税評価額とは相続税や贈与税を計算するときの基準となる価格です。
不動産の相続税評価額の算出方法は、土地については「路線価方式」もしくは「倍率方式」で算出され、建物については固定資産税評価額をそのまま使用します。
では、不動産の相続税評価額を、そのまま遺産分割協議をするうえでの前提とすることができるでしょうか?
不動産の相続税評価額は、実際の取引価格(実勢価格)の8割程度の額になるように決定されています。遺産の不動産を取得したいと考えている相続人がいる場合、その人にとっては不動産の評価額が低いほど有利になるので「相続税評価額をそのまま使いたい」と主張します。
逆に、遺産に含まれる不動産を取得しない相続人にとっては、不動産の評価額が高いほど有利になるので「実勢価格で考えるべき」と主張する、という傾向にあります。
具体的に考えてみましょう。例えば、親が死亡して相続人は長男と次男の2人のケースです。
遺産は実家の土地建物(長男夫婦が同居していたもので、相続税評価額3,000万円)と、預貯金5,000万円だったとします。この場合、相続税申告での遺産総額は合計で8,000万円になります。このケースでの遺産分割協議は、どうなるでしょうか?
長男が、次男に対して「税理士作成の遺産目録で遺産総額は8,000万円だ。相続分は各2分の1だから4,000万円ずつ。実家の土地建物は自分がもらってそのまま住み続けるから、預貯金は1,000万円だけもらう。お前は預貯金4,000万円を取ればいい」と言ったとします。もしこの提案に次男が同意すれば、それで遺産分割協議は成立します。
しかし、次男が「不動産は実勢価格で考えるべきだ」と主張することが考えられます。次男の主張は「実家の土地建物の実勢価格は3,750万円(=3,000万円÷0.8)程度のはず。すると遺産の総額は8,750万円になり、2分の1だと4,375万円ずつだ。兄貴が実家の土地建物を取るのなら、預貯金の兄貴の取り分は625万円(=4,375万円-3,750万円)になる。だから預貯金の自分の取り分は4,375万円(=5,000万円-625万円)だ」という具合です。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す不動産の評価額について相続人の間での合意できれば問題ないのですが、合意できない場合には、家庭裁判所での調停を経て、最終的には審判で決定されます。この際、裁判所は遺産に含まれる不動産を遺産分割時の実勢価格で判断します。
実勢価格をいくらと考えるのかについては、遺産分割の話し合いの場面であれ、調停や審判の場面であれ、実際には根拠資料に基づいて議論することになります。
最も確実な根拠資料は不動産鑑定士の鑑定書ですが、鑑定書の作成費用が一般に30万円程度から必要になります。そこで不動産業者が無料で作成してくれることもある、簡易査定書で代用することも少なくありません。
家庭裁判所が審判で判断する際には実勢価格で判断しますから、遺産分割の話し合いにおいても実勢価格に基づく方法が正しいようにも思えます。
しかし、実際に実勢価格に基づこうとすると不動産鑑定士の鑑定書が必要となったりするため相応の手間や費用が必要になってきます。また、実勢価格をいくらと考えるかで、相続人の間で争いがエスカレートする可能性もあります。ですから、できるだけもめ事を回避するという観点で考えれば、相続税評価額をそのまま使って遺産分割を行うことも有用な判断だと思います。
(記事は2022年2月1日時点の情報に基づいています)
「相続会議」の弁護士検索サービスで
相続でもめるポイント1 認知症の親が作成した遺言書は有効か?
相続でもめるポイント2 故人の預貯金が引き出されていた時の対処法