前回まで、空き家を取得することのデメリットと、取得してしまった場合の対策について書きました。今回は具体的な売却方法について解説します。

登記簿を取得して状況確認を

まず行うことは、対象物件の登記状況を確認することです。
不動産の権利状況が記録されている登記事項証明書は、法務局に行けば誰でも取得することができます。よく「登記簿」と呼ばれる書類です。

登記事項証明書には、様々な事項が記録されています。
見てみると、面積や地目などを記録する「表題部」と所有者などを記録する「権利部」に分かれていることが確認できます。

空き家の処分を考える場合、しっかり見ていただきたいのは権利部のほうです。
権利部は、所有権に関する情報を記録する「甲区」と所有権以外の権利に関する情報を記録する「乙区」に分かれています。

甲区にすでに亡くなった方が所有権者として記録されている場合は、相続登記を行わなければなりません。
相続登記はなるべく早く行うべきです。

相続放棄をしていない相続人については、一般的に、相続登記の前提として遺産分割協議に参加してもらう必要があるからです。

登記を放置すると増え続ける相続人

付き合いのある親戚関係を考えてみましょう。
両親のきょうだいの子供、いとこなら名前と顔がわかる人は多いかもしれません。

祖父母のきょうだいの子供はどうでしょう。
まったく知らない人が多いのではないでしょうか。

登記名義が祖父母のままになっている場合、相続人はいとこまでの範囲で収まるケースが多いです。
曾祖父や曾祖母の名義になっている場合は、祖父母のきょうだいの子供や孫までが相続人になる可能性があります。

従って、遺産分割協議にあたって、親しくない人に手続きを説明し、内容を理解してもらって、納得してもらわなければならないのです。

祖父母名義の不動産については、相続人は多くても10人ほどかもしれません。
曾祖父母名義の場合は大変です。下の代の祖父母の兄弟が3人、親の代が3人、子供の代がそれぞれ3人ずつと仮定しても、相続人は27人になります。しかも、ほとんどが付き合いのない人でしょうから、連絡を取るだけでも大変です。

相続人がそれだけの数になると手続き費用も高額になりますから、空き家にそれを上回る資産価値がないと、手続きをするメリットもなくなります。
放置した期間が長いほど関係者が増えてしまうため、早めに対応しましょう。

相続人が50人…続く管理費用の支払い

以前、曾祖父の父である高祖父名義のままになっている不動産についてご相談を受けました。戸籍を確認して数えてみると、相続人は50人を超えました。会ったこともない方が大半で、手続き費用が資産価値を上回ることが明らかでした。相談者は手続きをあきらめ、がっかりした様子で帰っていきました。残念ながら、おそらく今でも管理費用を払い続けていると思います。

登記事項証明書を見てもよくわからない場合は、売却物件の近隣に事務所を構える司法書士に連絡することをおすすめします。状況についての説明を受けられるほか、売却の前提となる必要な手続きを行ってもらえる可能性が高いです。

私の事務所にも同様のご相談がよくありますが、対象物件が売却できそうな場合は、相続登記と並行して宅地建物取引業者を紹介し、並行して売却準備を進めてもらっています。

相続登記が済んでいる場合は、宅地建物取引業者にコンタクトするとよいでしょう。
知り合いの宅地建物取引業者がいない場合は、売却物件の近隣地で営業している宅地建物取引業者に連絡すると手続きを進められると思います。

相続登記義務化で依頼集中する可能性も

現在、土地の相続登記義務化が検討されており、近年中に法案が国会に提出される見通しです。登記義務が法制化された場合、司法書士事務所に依頼が集中することが予想されます。そうなると時間が余計にかかってしまうので、今のうちに手続きを始めることを勧めます。

次回は空き家を処分する場合に受けられる支援について解説します。

(記事は2020年2月1日時点の情報に基づいています)

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