目次

  1. 1. 遺言書があれば「争族」になりにくい
  2. 2. 遺言書の有効性は判断能力の程度による
  3. 3. 後日の紛争発生に備えて医療記録などの準備が重要
  4. 4. できれば公正証書遺言にしておくこと
  5. 5. まとめ

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親が死んだときに遺産をどう分けるかで相続人の間で争いが発生してしまうことを「争族」と言ったりします。相続が「争族」になってしまうことを避けるためには、遺言書を作成しておくことが重要です。

遺言書があれば、相続人に法律上保障されている一定の相続財産である遺留分が侵害された場合を除き、相続人はたとえ内容に不満があっても法的には争う方法が限られます。そのため、遺言書がない場合よりも「争族」になりにくいと言えます。

では、親が既に認知症になってしまっている場合、遺言書を作成することはできるのでしょうか? 作成した遺言書が有効か否かは、遺言書を作成した時点における、親の判断能力(法律用語としては「遺言能力」といいます)がどの程度であったかで判断されます。

認知症になっているからといって、直ちに遺言能力がないと判断されるわけではありません。個人の症状に応じて判断されます。

せっかく親が遺言書を作成していても、親が亡くなった後になって相続人の一部から「遺言書が作成された時期にはもう認知症になっていたから、その遺言書は無効だ」という主張が出てくることもあります。

そのような場合には、遺言書が有効か、それとも無効かは、最終的には裁判で争うことになります。裁判で重要になるのは、遺言書を作成した時点での、親の判断能力の程度を客観的に証明できる資料があるかどうかです。

こういったケースを考えると、親が遺言書を作成する際には、親の判断能力について医師に診断書を書いてもらう、カルテの写しをもらっておくといった、客観的な医療記録を残しておくことが重要です。

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遺言書の有効性をもっとも確実にするためには、公証役場の公証人にお願いして公正証書で遺言書を作成する方法があげられます。

親がすでに認知症になっている場合、公証人から医師の診断書の提出を求められます。しかし、診断書に記載された判断能力の程度が法定後見制度の「後見・保佐・補助」の3区分のうち保佐相当の段階までであれば、多くの場合、公証人は遺言能力があると判断して公正証書遺言を作成します。

そして公正証書遺言が作成されていれば、後日、親が認知症であったことを理由に遺言書の有効性を争われたとしても、遺言書が無効であると判断される可能性は大幅に低くなります。

相続を「争族」にしないためには、遺言書を作成しておくことが大切です。そして親が既に認知症になっている場合でも、遺言書が作成できないわけではありません。ただし後日、遺言書が無効であると争われたりしないために、遺言書作成当時の親の判断能力について医師の診断書やカルテなどの医療記録を確保しておくことが重要です。

もっとも確実な方法は、公証人に依頼して公正証書遺言を作成する方法です。公正証書遺言が作成されていれば、遺言書が無効と判断される可能性は大幅に低くなりますので、不安がある場合には、公正証書で遺言書を作成する方法をおすすめします。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)

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