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親の支援で住宅購入する際の非課税措置は?【2026年年末まで延長】 要件や手続き、注意点を解説
住宅を購入するのに親支援を受ける場合の注意点をまとめました(c)Getty Images
親(祖父母など直系尊属を含む)からの支援で住宅を購入する際、贈与税の非課税措置があるので検討する方は多いでしょう。2024年度の税制改正で住宅取得等資金の非課税措置が2026年末まで3年間延長されました。ただし、この非課税措置を使うと、親の遺産を相続する段階になって相続税を抑えられる特例が使えないことがあります。非課税措置の手続きや要件、そして注意点を税理士が解説します。
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1. 親からの支援で住宅が購入できる「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」とは
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置とは、親や祖父母といった直系尊属から住宅の購入や増改築のためのお金を受け取っても、一定額まで贈与税がかからない制度です。贈与を受ける年の1月1日時点で、18歳以上の受贈者が対象になります(ただし、2022年3月31日以前の贈与により財産を取得した場合は20歳以上)。制度の要件について解説します。
1-1. 非課税限度額1000万円の要件
新築・購入・増改築の契約をした場合、贈与税の非課税の上限額は次のようになっています。
- 省エネ・耐震性・バリアフリーの住宅……1000万円
- 上記以外の住宅……500万円
「1」の具体的な要件は下記のいずれかを満たす必要があります。
- 省エネ…断熱等性能等級5以上または一次エネルギー消費量等級6以上であること。
※既存住宅、増改築は断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上であっても、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅または2024年6月30日までに建築された住宅なら1.の要件に当てはまるものとみなされます。
- 耐震性…耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上または免震建築物であること。
- バリアフリー…高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること。
2024年度の税制改正では、住宅取得等資金の非課税措置が2026年末まで3年間延長されましたが、「1」の非課税限度額が1000万円の住宅の要件について、新築住宅についてはこれまでの「断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上であること」から原則、「断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上であること」と条件が厳しくなったので注意が必要です。
1-2. 特例を活用する要件
また住宅取得等資金の贈与の非課税の特例を受ける住宅は、主に下記の要件を満たさなくてはいけません。この他、住宅の要件では新築、取得の場合と増改築の場合でさらに細かい要件があり、受贈者の要件も細かく規定されています。詳しくは「国税庁のオフィシャルサイト」をご確認ください。
【住宅の要件】
- 日本国内にある住宅であること
- 対象となる家屋の床面積が40㎡以上240㎡以下で、かつ床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるもの
また受贈者(贈与をされる方)の要件は、下記の通りになります。
【受贈者の要件】
- 贈与者(贈与する方)の直系卑属(子や孫)であること
- 贈与された年の1月1日時点で18歳以上であること(令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上)
- 贈与を受けた年の所得税の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積が40㎡以上50㎡未満の場合には、1,000万円以下)
- 住宅取得等資金の贈与税非課税特例の適用を受けたことがない
1-3. 実際の非課税枠はもっと大きい
この制度を利用する時の非課税枠は、実際はさらに増えます。贈与税そのものにも「基礎控除」という非課税制度があるからです。なお、贈与税には「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」の2つの制度があります。
2023年度税制改正大綱で、暦年課税制度を使った生前贈与の持ち戻し(生前贈与された財産を相続財産に戻した上で相続税を計算するルール)の対象期間が死亡前3年から7年に延びたり、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除枠が新たに加わったりと、相続に関連する課税ルールの大きな見直しがあり、2024年1月1日から適用されています。
住宅取得等資金の非課税枠1000万円を使う時は、実際の贈与税の非課税額は次のようになります。
- 暦年課税制度…基礎控除額110万円+非課税枠1000万円=1110万円まで非課税
- 相続時精算課税制度…基礎控除額110万円(年間)+特別控除額2500万円(累計)+非課税枠1000万円=3610万円まで非課税
1-4. 非課税措置の部分は相続税の対象外
「生前贈与したら相続税はかからない」と思う人が多いのですが、生前贈与をしても相続税の対象となることがあります。次のようなケースです。
- 死亡日以前の7年以内に通常の贈与(暦年課税制度)で贈与した時(2023年度の税制改正に伴い、2024年1月1日以降の贈与については、これまでの3年から段階的に期間が延長されました。2031年1月1日からは完全に7年間の加算になります)
- 相続時精算課税制度の適用を受けて贈与した時
ただし、住宅取得等資金の贈与税の非課税措置の部分は、相続税の対象とはなりません。
例えば、親が亡くなる2年前に住宅取得等資金の非課税措置と暦年課税制度を使い、合計1110万円の購入資金を親から受け取った場合、非課税枠の1000万円は、相続財産に持ち戻さなくていいわけです。また、相続時精算課税制度を併用して3610万円を受け取った場合、非課税枠1000万円は持ち戻さなくてもよいことになります。これに加え、2024年1月1日以降の贈与分については、基礎控除額である年110万円の部分も相続財産に持ち戻す必要はありません。
2. 親からの支援で住宅購入すると相続で困ることも
親からの支援で住宅を購入すると様々なメリットがあります。しかし一方、親が亡くなり、相続が始まったら次の点で注意が必要です。
2-1. 小規模宅地等の特例が使えない
相続財産の中には大抵、親の住んでいた家があります。敷地の評価額は高額になりがちですが、小規模宅地等の特例を使うと330㎡まで80%減額できます。評価額が300㎡で1000万円だったとしても、200万円に抑えられるのです。
ただし、いくつか条件があります。その一つが「自宅を引き継ぐ人の条件」です。親と別居の子が自宅を相続し、この特例で評価額を抑えたいのなら、次の条件を満たさなくてはなりません。
- 被相続人に配偶者や同居していた法定相続人がいないこと
- 相続開始時までに、持ち家に住んだことがないこと
- 相続開始以前3年以内に自分自身や配偶者、親や兄弟姉妹などの3親等内の親族、同族会社などが保有する家に住んだことがないこと
- 相続した家を相続開始時から相続税の申告期限まで所有していること
親からの支援で住宅を購入すると、たいていは「2」に引っかかります。結果、小規模宅地等の特例が使えなくなってしまうのです。
2-2. 不動産取得税・登録免許税がかかる
住宅を取得した時、不動産取得税や登録免許税がかかります。ただし、相続で取得した時は軽減されるのです。まず不動産取得税です。新築、購入で住宅用の不動産を取得すると、「固定資産税評価額×3%」の税金がかかります。しかし、親の家を相続すれば非課税です。
次に登録免許税です。住宅を購入すると次の税金がかかります。
- 土地…固定資産税評価額×1.5%
- 建物…新築だと「固定資産税評価額×0.15%」、購入だと「固定資産税評価額×0.3%」
一方、相続だと土地・建物ともに「固定資産税評価額×0.4%」です。建物の税率は自分で購入した方が安いのですが、土地は相続した方が節税になります。
2-3. 遺産分割で揉めることも
兄弟姉妹など他に相続人候補がいるなら、親からの支援が将来の相続争いを招くおそれがあります。特定の相続人がもらい過ぎた結果、他の相続人の取り分がなくなることがあるからです。
取り分のなくなった配偶者や子は、最低限の相続分として「遺留分」を主張できます。遺留分の対象は相続財産だけではありません。次のような生前贈与も含まれます。
- 相続開始前1年以内の贈与
- 相続開始前1年より前の贈与であっても、遺留分を侵害することを双方承知の上で行われた贈与
- 結婚や住宅購入のための資金であり、特別受益にあたるもの
取り分のない相続人から遺留分を主張されたら、金銭で支払わなくてはなりません。親からの支援を受けたばかりに、相続後に出費しなくてはならなくなるわけです。支援を受けるなら、他の親族とのバランスを考慮しなくてはなりません。
2-4. 相続時精算課税制度との併用に注意
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置と相続時精算課税制度と併用するなら、次の点に注意しなくてはなりません。
- 相続時精算課税制度を使った間柄の贈与は、二度と暦年課税制度を使えない
- 期限内に申告しないと20%の贈与税がかかる
- 贈与税の申告をした贈与額の累計が非課税枠2500万円を超えると一律20%で贈与税がかかる
- 相続時精算課税制度で贈与した財産は基礎控除額である年110万円分を除き、すべて贈与時の価額で相続財産に持ち戻す(孫への贈与でも相続税がかかる)
3. 住宅取得等資金等の贈与の非課税措置の手続きと必要書類
次に申請、手続きの方法について解説します。非課税の特例を受けるには、贈与のあった翌年の2月1日から3月15日までの間に、必要書類をそろえて所轄の税務署に申請をしなくてはいけません。以下、申請時に必要となる書類です。
【必要書類】
- 贈与税申告書
- 受贈者の戸籍謄本など、受贈者の氏名・生年月日・贈与者が直系尊属であることを証明する書類
- 源泉徴収票など贈与を受けた年分の合計所得金額を明らかにする書類
- 登記事項証明書
- 売買契約書や工事請負契約書の写しなど、住宅の取得状況や要件にあてはまるかどうかを示す書類
戸籍謄本は、受贈者が直系尊属からの支援かどうかを確認するために必要となります。本籍地が役所から取り寄せることができます(郵送も可能)。住宅取得等資金の特例には先述の通り所得制限があるため、源泉徴収票や確定申告書で説明をする必要があります。
登記事項証明書や売買契約書、工事請負契約書は住宅に関する書類となります。所有者や広さ、いつ誰が購入したのかを証明する書類となります。このほか、取得した住宅の種類に関する書類も必要です。
詳しくは、国税庁が配布しているチェックシートで確認してください。
【参考】〔2023年分〕住宅取得等資金の贈与税の特例に係る「チェックシート」及び「添付書類」の区分
なお、この制度は一度しか使えません。過去にこの非課税制度を使ったことがあるかどうかを、事前に2009年分以降の贈与税の申告書で確認しておくといいでしょう。
4. まとめ|親の支援を受けるか相続するか…困ったら税理士に相談を
住宅購入の際、親や祖父母から資金援助があっても一定額まで贈与税がかからない制度が「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」です。一方で、親が亡くなった後の「親の家の相続」は否定的にとらえられがちですが、メリットもあります。小規模宅地等の特例で評価額を減らせるほか、相続して売却したときの譲渡所得課税は「空き家の3000万円控除」や「取得費加算の特例」で抑えられることがあるのです。
「親の支援で住宅購入」も「親の家を相続」も、それぞれメリット・デメリットがあります。また、両方を上手に活用することも可能です。「自分はどうしたらいいのか」で悩んだら、税理士に相談するとよいでしょう。
(記事は2024年1月1日時点の情報に基づいています)
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