目次

  1. 1. 法定相続人以外でも相続できる
  2. 2. 遺言を正確に実現する

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私は独身で一人っ子。亡くなった両親も一人っ子です。現在、法定相続人がいない立場ですが、こういう場合も遺言状が必要なのでしょうか?

質問を聴いてくれた日本公証人連合会長の大野重國さんは、こう強調します。「それは絶対に必要です。法定相続人がいない場合、財産は国に帰属することになります。お世話になった人や公益財団などに遺贈するなどの意思を遺すことをおすすめします」
このように、法定相続人以外にも財産を遺したい場合は、財産を贈与する「遺贈」という形で相続が可能になります。

法定相続人以外の人に財産を引き継いでもらいたいと思っていても、きちんと意思を遺さないと、形になりません。「長年、早逝した長男の妻に介護してもらっていた方がいました。しかし、亡くなった長男の妻は法定相続人ではありません。しかも、長男には子どもがいない。このケースは遺言がない限り、長男の妻は相続できず、長年の苦労が報われません。また、長年連れ添った内縁の妻や夫に相続させたい場合も同じです」

遺贈や複雑な事情がからむ場合、第三者の遺言執行者を介在させるほうが、スムーズに進む場合もあります。

日本公証人連合会が配布している冊子「遺言のすすめ」=東京都千代田区

例えば、後妻との間に子どもがいて、先妻との間には、先妻の連れ子がいるケースです。先妻の連れ子は相続関係にありません。しかし、「自分の子どものように可愛がった連れ子にも財産を残したい」と考えると、遺贈という手段があります。

しかし、その手続きを家族の相続人にまかせるのは心情的に抵抗があると思います。また、隠し子を遺言状で認知することも可能ですが、これは死後にもめごとが起きるのは火を見るより明らかです。

「隠し子を死後に認知したいといった場合は、親族以外の遺言執行者を選任することをおすすめします」

遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人。遺言執行者は各相続人の代表として、財産目録の作成や相続財産の管理、相続登記など、さまざまな手続きを行う権限を持ちます。

遺言執行者は、未成年者や破産者以外であれば誰でもなれますが、実際には弁護士や信託銀行が遺言執行者になることがほとんどです。

大野さんは、こうも教えてくれました。「第三者に相続不動産を遺贈する場合も、遺言執行者がいる方がいい。遺贈登記をするためには、相続人全員が登記義務者となり、名義変更手続きをしなければなりません。相続財産となった預金を払い戻す際にも、当該財産の共同相続人全員の押印が必要となります。遺言執行者がいれば、その印鑑だけですべて事足ります。適任者がいれば、遺言執行者を指定しておくようお勧めしています」

次回は、権利や財産を保護するハイブリッドな備えがテーマです。

(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)

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