公正証書遺言のススメ 「争続」を防ぐのに作成すべき人とは……
「公証役場に行ってみた!」シリーズの第2回。今回は「争続」を防ぐポイントを取材しました。「財産が少ないから大丈夫」と考えている人が思わぬ事態に巻き込まれることもあるそうです。
「公証役場に行ってみた!」シリーズの第2回。今回は「争続」を防ぐポイントを取材しました。「財産が少ないから大丈夫」と考えている人が思わぬ事態に巻き込まれることもあるそうです。
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遺言状を作ってみようかな―。「こう考えたら、すぐにでも」と強調するのは、日本公証人連合会長の大野重國さん。散歩の途中でも、「公証役場」の文字が目に入れば、ふらりと立ち寄って正解。なんと相談だけなら無料なのです!
大野さんは「遺言状の作成に取り掛かるまでの相談は無料です。予約して来ていただくときは、戸籍謄本、登記簿謄本、銀行預金の通帳の写しがあれば、なお良い。さらに基本的な相続人の名前、生年月日、不動産の所在地などもあれば話がスムーズですが、メモ書きでも十分です」と教えてくれました。
遺言状は満15歳以上になれば誰でも作成が可能です。大野さんによると、働き盛りの人も少なくなく、なかには結婚を機に遺言状を作る人もいるそうです。
「遺言状は何度でも書き換えが可能。同じ公証役場に依頼すれば、データが残っているので費用も抑えることができます。遺言状の最大の目的は遺産分割争議を避けること。仲の良かった兄弟でも、揉めることが多いのが遺産相続です。それを未然に防ぐのが遺言状なのです」
たしかに自分の死後に、家族が揉めるのは忍びないもの。どう死ぬかのシミュレーションは、どう生きるかにもつながります。遺言状の作成は自分の人生と向き合う大切な時間かもしれません。
遺言状がないと、民法の規定で財産は一定の範囲内の親族(法定相続人)に分配されます。もし、法定相続人がいない場合は、最終的に国庫に納まることになってしまいます。
ここで覚えていてほしいのが、遺言がないと思いを実現できないばかりか、相続を巡る親族間の争いをも引き起こしていまうという点です。財産を大切な人に確実に遺すために有効な公正証書遺言。では、様々な相続の事例と具体的な公正証書遺言の作成についてご紹介しましょう。
大野さんによると、遺言を作成したほうがいい人とは「子供のいない夫婦」と「子供が2人以上いる夫婦」だそうです。その理由を説明しましょう。
例えば、子供のいない夫婦で、夫にきょうだいがいる場合、夫が亡くなると、奥さんが4分の3、きょうだいが4分の1の法定相続分になります。夫が全財産を妻に相続したいという思いがあっても、遺言状がない場合は遺産を分割する協議をしなければならなくなります。これが大変。
「普段、付き合いのないきょうだいの場合、『長いこと行き来もないし、いらないよ!』ということも多いのですが、今は権利意識が強くなり、『法律上、もらえるものならもらっておきたい』と考える人が少なくありません。きょうだいの仲が良くても、ぎくしゃくするのが相続です。ごきょうだいが相続を放棄する意思があっても、その配偶者が納得しないケースも多い。さらに財産が少ない人ほど相続争いが起きるのです」
え! 財産が少ないほうが揉める?
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探すこれには驚きました。相続争いというと、富裕層に起きるイメージがありましたが、実際に家庭裁判所で争われるのは、財産が1千万円以下のケースが多数を占めています。
「現金があれば相続人同士で分割できますが、小さな土地や建物だけで、預貯金がない場合は、それを売却する必要があります。さらに、そこに年老いた母親が一人暮らしをしている場合、家を売るためにアパートなどに引っ越してもらわなければならない。酷な話です。こうした悲劇をなくすため、民法が見直され、来年の4月から配偶者居住権が認められるようになります」
「うちには財産なんてないから大丈夫!」なんて考えている人は要注意。財産が少ない人ほど、死後、親族間に遺恨を残してしまう可能性があるのです。
次回は、そうならないため、遺言を形にする遺言執行者の大切さなどをお伝えします。
(記事は2019年12月1日時点の情報に基づいています)