こんにちは、終活弁護士の伊勢田篤史です。前回のコラムでは、子どもの立場からできる相続対策のお話をしました。

さて、みなさんは「相続」にどのような印象を持たれていますか。
経験したことがなくても、「相続はもめる」などとネガティブな印象を持つ方は多いのではないでしょうか。

確かに、大なり小なりもめることが多いです。そのため、危機意識を持って、しっかりと事前対策をする必要があります。

しかし、残念ながら高齢者の中には「相続はもめると言われているけど、うちには関係ない」と考える方が多いように思います。そこで今回は、相続に対する危機意識を正しく持っていただくため、どのようなご家族が、相続でもめやすいのかをご紹介します。ぜひ、ご自身の家族が当てはまるかどうかを確認してください

相続でもめやすい家庭とは?

相続でもめやすいかどうかは、以下のフローチャートで簡易診断できます。なお、このチャートは、子どものいる家庭で遺言を作成していないケースが対象です。子どものいない夫婦は、亡くなった方の親きょうだいが配偶者とともに相続人となる可能性があり、相続でもめる可能性が高いといえます。注意が必要です。

子どもの数が多ければ多いほど・・・

まず、一人っ子の場合は、相続で揉めるリスクはほぼゼロとなります(まれに、別の子どもが発覚するケースがありますが)。なぜなら、争いたくても、争う相手がいないからです(争いたい人はいないかと思いますが)。相続において、「一人っ子」は有利な立場といえるでしょう。

では、争う相手がいる場合、つまり子どもが2人以上いる場合は、一般的に相続でもめ る可能性が高まります。もちろん、2人よりも3人、3人よりも4人・・・と子どもの数が多いほど、もめる可能性は高くなります。

なお、こういった一般論に対して、「うちの子どもたちは仲が良い」と反論したい方もいるでしょう。しかし、「仲が良い」から相続でもめることはないというのは、大きな誤解です。

まず、「うちの子どもたちは仲が良い」ということ自体が、親の誤解であることはよくあります。昔は仲が良かったきょうだいでも、結婚、出産、転勤、受験、持ち家購入、親の介護など取り巻く環境がどんどん変化することで、関係にも変化が生じます。

一方で、子どもたちと顔を合わせる機会が減ってしまうと、なかなかその変化の機微を感じ取るのは難しいといえるでしょう。

次に、仮に「うちの子どもたちは仲が良い」状態でも、相続の発生でもめ始めることはよくあります。逆に「仲が良い」ことで、他の兄弟姉妹に対する期待があると、その期待が裏切られてしまった場合には、愛情が憎悪に変わり、こじれてしまうケースがよくあります。

以上のとおり、相続において「うちの子どもたちは仲が良い」から「もめない」ということは全く期待できません。

子どもが2人以上いるという親世代の方は、相続でもめる可能性が高いことを認識しましょう。子世代の方からすれば、きょうだいがいる場合には相続で揉める可能性が高いことを認識しておくとよいでしょう。なお、各きょうだいが結婚している場合は、もめるリスクが一段と高くなりますので、ご注意ください。

自宅不動産が財産の50%を超えたら要注意

子どもの数と同じく重要な要素として、各家族の財産の内容(財産構成)が挙げられます(なお、今回は自宅不動産以外の投資用不動産を持っていないケースに限定します。投資用不動産を有しているケースについては、またの機会にお話したいと思います)。

まず、自宅不動産を所有しているかどうかがポイントとなります。所有していない場合は、預貯金など現金化しやすい資産が、全体の財産に占める割合が高いケースが多いと考えられます。相続でもめる可能性は抑えられるでしょう。

一方、自宅不動産を所有しているケースでは、その不動産価値が全体の財産のうち50%以上を占める場合は注意が必要です。

50%と聞いてどのような印象を持たれるでしょうか。不動産の価値なんて高いのだから、50%以上に決まっているじゃないか、と思われる方も多いかと思われます。

子どもが2人以上の場合、遺産の半分以上が自宅不動産となると、上手く分けることが難しくなります。1人が不動産を相続すると、ほかのきょうだいの取り分が明らかに不利になるためです(子が3人以上だと、より難しくなることは明白です)。

不動産を共有にすればよいではないか、と思われるかもしれません。ただ、このような対応は問題の先送りにすぎず、次世代の親族が非常に苦労することになります。お勧めできません。

危機意識を持って相続対策を

以上、相続でもめやすい家族についてお話させていただきました。もちろん、相続は各家族の問題なので、一律に語ることはできません。しかし、一定の傾向を押さえることで、危機意識をもって対策を行うことが可能です。

正しい危機意識をもって、しっかりと対策していきましょう。

まとめ

親の世代へ

子どもが2人以上いるなら、しっかりと相続対策を検討しましょう。子どもたちは仲がよいから揉めないなんていうのは幻想です。

子の世代へ

親が、自宅不動産を所有している場合は、要注意。きょうだいがいたら、まず相続でもめるものと考えて、しっかりと対策をしていきましょう。

(記事は2019年11月1日時点の情報に基づいています)