目次

  1. 1. 遺産のお金を振り込んでくれないのはなぜ? 考えられる主な原因
    1. 1-1. 遺産分割が成立していない
    2. 1-2. 代表相続人や遺言執行者が手続きを進めていない
    3. 1-3. 金融機関が相続手続きの審査を行っている
    4. 1-4. 他の相続人が遺産を使い込んでいる
    5. 1-5. その他考えられること
  2. 2. 遺産の種類別|親族が亡くなった後の手続きと期間
    1. 2-1. 預貯金
    2. 2-2. 有価証券
    3. 2-3. 生命保険金
    4. 2-4. 不動産や自動車
  3. 3. 遺産が振り込まれないときにすべきこと
    1. 3-1. 代表相続人や金融機関などに状況を確認する
    2. 3-2. 遺産分割協議がまとまらないときは、調停を申し立てる
    3. 3-3. 使い込まれた遺産の返還を請求する
  4. 4. 遺産が振り込まれないとき、弁護士に相談・依頼するメリット
    1. 4-1. 遺産が振り込まれない原因を特定できる
    2. 4-2. 他の相続人に対応してもらえる可能性が高まる
    3. 4-3. 交渉や裁判手続きの対応を任せられる
  5. 5. 遺産相続でお金が振り込まれないときに関するよくある質問
  6. 6. まとめ 遺産が振り込まれないトラブルは早めに弁護士に相談を

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遺産分割とは、相続人全員で相続人それぞれがどの財産をどれだけの割合で相続するかという遺産の分け方を決める手続きのことです。相続人が複数いる場合に遺産である預貯金を払い戻すためには、原則として遺産分割の成立が必要となります。

遺産分割が成立していない場合には、金融機関は相続人全員の同意がないと預貯金の払戻しに応じないのが通常です。

遺産分割が成立していなければ、それが遺産のお金が振り込まれない原因となることがあります。

「代表相続人」とは、複数の相続人を代表して、預貯金の払戻しなどの手続きを行う人のことです。

代表相続人が選任された場合、その人が他の相続人に代わって金融機関などとやり取りをすることになります。遺産分割によってお金の分け方が決まっていても、代表相続人の多忙や知識不足などによって、手続きを上手く進められていない場合には、遺産が振り込まれるのが遅くなることがあり得ます。

一方で「遺言執行者」とは、遺言書に書かれた内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言書によってお金の分け方が決まっていても、遺言執行者がいるときは遺言執行者のみが遺言の内容を実現する権利を有することになるので、相続人は自ら手続きをすることはできません。そのため、遺言執行者が手続きを上手く進められていない場合には、遺産が振り込まれるのが遅くなることがあり得ます。

適切に相続手続きの申請を行ったとしても、金融機関内部での書類の審査などが必要となるため、すぐに預貯金の払戻しが行われるわけではありません。

必要となる日数は、書類の量や混雑状況などによって異なりますが、申請してから概ね1週間~1カ月程度が目安となります。書類に不備や不足があれば、さらに時間がかかります。

ご自身のケースでどれくらいの日数がかかるのかについては、申請先の金融機関に直接確認するのがよいでしょう。

他の相続人による使い込みによって相続財産であるお金が無くなってしまっている可能性も考えられます。

たとえば、相続人の一人が被相続人の生前にキャッシュカードを使って無断でお金を引き出してしまっているケースや、被相続人の死亡後、金融機関によって口座が凍結されるまでの間にお金を引き出してしまっているケースがあります。

他の相続人による使い込みが疑われる場合には、金融機関に取引履歴の開示を請求し、不審な出金がないか確認するとよいでしょう。

相続人の数が多い場合や海外在住の相続人がいる場合などにも、手続きに時間がかかり遺産が振り込まれるのが遅くなることがあるでしょう。

親族が亡くなって相続が発生した場合、必要な手続きと完了までにかかる期間は遺産の種類によって異なります。

必要となる書類も遺産の種類によって異なりますが、ほとんどの手続きにおいて、相続関係を示す書類が必要となります。相続関係を示す書類としては被相続人と相続人との関係を確認できる戸籍謄本等がありますが、枚数が多くなりがちであり、複数箇所に提出しなければならない場合には特に大変です。

そのような場合、「法定相続情報証明制度」を利用することで手続きの負担を軽減できます。

法定相続情報証明制度とは、必要書類とともに法務局に申請することで、「法定相続情報一覧図の写し」の交付を受けられる制度です。法定相続情報一覧図の写しは、戸籍謄本等の代わりとして使用することができるため、相続手続きに際して戸籍謄本等の束を提出する必要がなくなります。また、無料で複数枚発行してもらうことができるため、相続手続きを同時に複数行う場合にも便利です。

利用方法は法務局のホームページに掲載されています。

預貯金の相続については、まず銀行などの金融機関に連絡し、被相続人が亡くなったことを伝えます。これにより、被相続人名義の預貯金口座は相続手続きが完了するまで凍結され、引き出すことができなくなります。

必要となる手続きや書類は、遺言書や遺産分割協議書の有無などによって異なり、金融機関によっても異なるため、手続きをする金融機関に直接確認するのがよいでしょう。

払戻金の口座への振込みを依頼した場合、概ね1週間~1カ月程度して指定の口座に振り込まれます。

株式などの有価証券の相続手続きについては、証券会社に連絡し確認しましょう。

資産を引き継ぐために、証券会社に口座を開設しなければならない場合もあります。

被相続人が特定の相続人を生命保険金の受取人として指定していた場合、その相続人は遺産分割を行わずとも生命保険金を受け取ることができます。

このような場合、生命保険金を受け取る権利は遺産に含まれず、遺産分割の対象とならないからです。

受取人として指定された相続人は、保険会社に連絡し被保険者が死亡したことを伝えた上、保険金の請求手続きを行うことになります。

保険金は、必要な書類を提出した日の翌営業日から5営業日程度で支払われる場合が多いようです。

不動産や自動車を取得した場合には、被相続人から自分への名義変更が必要となります。

不動産については法務局で、自動車については運輸支局等で手続きを行うことになります。

不動産については申請後1週間~1カ月程度、自動車については申請当日に名義変更が完了するのが一般的なようです。

なお、不動産や自動車を売却する予定であっても、いったん名義変更を行う必要があります。

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遺産のお金が振り込まれない場合、まずは、その原因を調査する必要があります。お金が振り込まれない原因によって取るべき対応が異なるからです。

たとえば、書類の不足であれば追加の書類を用意すれば足りますが、代表相続人が使い込んでいる場合にはその人に返還を求めなければなりません。

原因を調査するため、代表相続人や金融機関に連絡し、手続きの進行状況を確認するとよいでしょう。

なお、手続きが遅れていることについて、代表相続人に何ら落ち度がない場合もあるため、代表相続人のせいだと決めつけるような言い方は避けるべきです。

遺産分割を行う場合、まずは、相続人全員で協議をするのが通常です。協議がまとまったらその内容を遺産分割協議書の形にします。

一方、協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

遺産分割調停とは、裁判所に間に入ってもらって、遺産分割について話し合う手続きのことです。遺産分割調停は、相続人全員が関与する必要があるため、申立人以外の相続人全員を相手方として、申し立てることになります。

申立先となる裁判所は、原則として、相手方の住所地の家庭裁判所です。相手方が複数いる場合には、そのうちの誰かの住所地となります。

話し合いがまとまった場合、調停成立となり、調停での合意の内容が記載された「調停調書」が作成されます。

一方、話し合いがまとまらず、調停不成立となった場合、自動的に審判手続きに移行します。審判手続きでは、裁判官が様々な事情を考慮して、遺産の分け方について審判を下します。審判の内容は「審判書」に記載されます。

調停や審判で預貯金を取得した場合、調停調書や審判書を使って預貯金の払戻しを受けることができます。

他の相続人によって遺産が使い込まれている場合、その相続人に対して返還を求めることになります。この場合、内容証明郵便で返還を求める旨の書面を送付した後、返還について話し合いを行うのが通常です。

相手が話し合いに応じなかったり、返還を拒否したりするような場合には、訴訟を提起するなどの法的措置をとる必要があります。

また、場合によっては、相手が財産を勝手に処分できないようにする仮差押えの申立てを行うこともあります。

遺産が振り込まれない原因には様々なものがあり得ますが、弁護士に調査を依頼することで早期に原因を特定できる可能性があります。

弁護士は、弁護士会を通じて、官公庁や企業などの団体に照会して必要な事項の報告を求める弁護士会照会を利用することができるため、原因を突き止められる可能性が高まります。

相続に関して、他の相続人が非協力的だったり、無関心だったりするケースがあります。

このような場合、ご自身で連絡しても対応してもらえないことがあります。弁護士を立てることで、他の相続人に本気であることが伝わり、対応してもらえる可能性が高まります。

実際、自分で連絡をしても無視されていたのに、代理人弁護士が連絡をしたら返答があったというケースもしばしばみられます。

遺産を取得するにあたって、相手との交渉が必要となる場合があります。

弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として交渉にあたります。弁護士は法的知識を駆使して説得力のある交渉を行うことができるため、有利な交渉結果を得られる可能性が高まります。

交渉での解決が困難な場合には、訴訟や調停といった法的措置を検討しなければなりません。訴訟や調停の手続きにおいては、自分の言い分を法的に整理して主張しなければならないため、専門的な知識がなければ対応するのは難しいでしょう。

また、日常生活を過ごしながら訴訟や調停の準備をしたり、期日に出席したりするのは容易なことではありません。

弁護士に依頼することで、訴訟や調停の手続きを任せることができます。

Q. 他の相続人によって遺産を使い込まれている場合、どうすべき?

使い込んだ相続人に対して返還を求め、返還に応じないときは訴訟を提起することも必要です。相続開始後、遺産分割前に遺産が使い込まれた場合には、その遺産がまだ存在するものとみなして遺産分割を行うことができるケースもあります(民法第906条の2)。

どの方法が適切であるのかは事案によって異なるため、弁護士に相談するのがよいでしょう。

Q. 遺産が振り込まれないまま、相続税の申告期限が来たらどうすべき?

相続税の申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月)までに遺産が振り込まれていなくても相続税の申告義務があります。遺産分割が成立していればその内容で、未成立のときは法定相続分に基づいて申告します。手元資金が足りないときは、延納(分割払い)や物納の制度を利用できる可能性があります。

Q. 親族との仲が悪化するのが心配なときはどうすれば良い?

遺産が振り込まれない場合でも、すぐに使い込みを疑うのは避けましょう。誤解だった場合、関係が悪化するおそれがあります。まずは事情を確認し、冷静に話し合うことが大切です。感情的な対立がある場合は、弁護士に間に入ってもらう方法も有効です。

遺産のお金が振り込まれない原因には、遺産分割が成立していない、代表相続人の手続きの遅れ、金融機関での審査、他の相続人による使い込みなど様々あり、原因の特定が困難なこともあります。

まずは代表相続人や金融機関など関係者に連絡し、手続きの進行状況を確認することが重要です。話し合いで解決が難しい場合には、家庭裁判所での調停や、使い込まれた財産の返還請求、仮差押えなどの法的手続きを検討する必要があります。

また、戸籍書類の収集や他の相続人らとのやり取りをはじめ煩雑な作業が伴うため、自力での対応は時間的・精神的な負担が大きくなりがちです。

弁護士に依頼すれば、原因の調査・特定や手続きの代理、他の相続人との交渉、調停・訴訟対応まで一貫してサポートを受けられるため、早期解決の可能性が高まります。

遺産の振込が滞っている、または他の相続人との関係が悪化しそうなときは、早めに弁護士へ相談し、状況に応じた適切な対応を取ることが大切です。

(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)

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