弁護士と司法書士の違いとは? 業務範囲や依頼すべきケースを解説

弁護士と司法書士は、いずれも法律の専門家ですが、対応できる業務の範囲が異なります。相談したい内容に応じて、弁護士と司法書士を使い分けましょう。本記事では、弁護士と司法書士の違いについて解説します。
弁護士と司法書士は、いずれも法律の専門家ですが、対応できる業務の範囲が異なります。相談したい内容に応じて、弁護士と司法書士を使い分けましょう。本記事では、弁護士と司法書士の違いについて解説します。
目次
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弁護士と司法書士は、どちらも法律に関する試験に合格したうえで業務を行っています。しかし弁護士と司法書士では、対応できる業務の範囲に違いがあります。
弁護士が対応できるのは、法律や契約に関する事務全般です。たとえば、以下に挙げるような事柄について、弁護士は幅広く対応できます。
司法書士と比べても、弁護士の業務の範囲は広くなっています。
司法書士は、主に登記や供託に関する事務を取り扱っています。
「登記」とは、不動産の所有者の名前や住所、企業の名称や事業内容などに関する情報を公示するものです。不動産を売買するときや相続するとき、会社を設立したときや会社に関する重要な事項を変更したときなどには、登記手続きが必要になります。
「供託」とは、支払うべきお金の受け取りを拒否された場合や、誰に支払うべきか分からない場合などに、法務局にそのお金を預けるものです。供託をすれば、債務不履行の責任を免れます。
また司法書士は、裁判所に提出する書類の作成を代行することができます。たとえば自己破産の申立書類や、相続放棄の申述書の作成などは司法書士にて対応可能です。
さらに、法務大臣が定める研修を受けて試験に合格した司法書士(=認定司法書士)に限り、小規模なトラブルに関する対応を受任することも認められています。
認定司法書士は、140万円以下の請求が問題となるトラブルについて、アドバイスや簡易裁判所での訴訟の代理を行うことができます。
弁護士と司法書士を比べると、弁護士の方が対応できる業務の範囲が広くなっています。
たとえば、以下に挙げる業務は弁護士なら対応できますが、司法書士では対応できません。
法律や契約に関する問題が生じた際、弁護士と司法書士のどちらに相談すべきか迷う人は少なくありません。
依頼できる内容は金額や業務範囲の違いによって変わるため、事前に判断基準を理解しておくことが重要です。
ここでは、迷ったときに参考となるポイントを整理します。
トラブルの相手方に請求する予定の金額、または相手方から請求されている金額が140万円を超える場合には、司法書士では対応できないので、弁護士に依頼しましょう。
請求額が確定していないとしても、140万円を超える可能性がある場合は、最初から弁護士に相談することをお勧めします。
トラブルを解決するための和解交渉がまとまらない場合は、最終的に裁判所での訴訟によって解決を図ります。
弁護士は訴訟全般を取り扱うことができますが、司法書士は簡易裁判所での訴訟しか取り扱えません。簡易裁判所の管轄となる事件は限られているうえに、控訴となれば地方裁判所または高等裁判所へ移ります。
そのため、訴訟の可能性が少しでもある場合は、最初から弁護士に依頼することをお勧めします。
売買や相続によって不動産を取得する場合などには、登記手続きが必要になります。
登記手続きは、弁護士も資格上取り扱うことができますが、実際に自ら登記手続きを取り扱う弁護士は少数です。
これに対して、ほとんどの司法書士は登記手続きを取り扱っています。登記が必要になる場合は、司法書士に相談しましょう。
トラブルの相手方と激しく揉めている場合や、状況を把握しにくい場合など、解決に向けた見通しが立ちにくいときは、弁護士に相談した方がよいでしょう。
弁護士は司法書士よりも業務範囲が広いので、見通しが立ちにくい複雑な案件でも対応してもらえる可能性が高いと思われます。
弁護士と司法書士のどちらに相談すべきか判断に迷ったら、とりあえずどちらでもいいので、無料相談を申し込んでみましょう。具体的な事情を弁護士や司法書士に伝えれば、そのまま受任してもらえるのか、別の事務所に相談した方がいいのかを教えてもらえます。
無料相談を利用しても、正式に依頼するかどうかは任意です。気軽に弁護士事務所や司法書士事務所へ連絡をとり、無料相談を申し込みましょう。
相続は不動産の登記から遺産分割の争いまで幅広い手続きが発生し、内容によって依頼先が変わります。
家族が亡くなったときの遺産分割や相続放棄のほか、将来的なトラブルを防ぐための遺言書作成など、生前対策も重要です。
弁護士と司法書士では対応できる範囲が異なるため、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。
司法書士は、相続について以下の業務などを取り扱うことができます。
ただし、相続争いが発生している場合には、司法書士がその争いの解決を取り扱うことは基本的にできません。
不動産の相続登記は、取り扱っている弁護士が少ないため、司法書士に依頼しましょう。なお、先に弁護士へ相談して、弁護士から司法書士を紹介してもらうこともできます。
弁護士は、相続に関する業務全般を取り扱うことができます。具体的には、以下の業務などが挙げられます。
相続人同士が争っている、遺産が使い込まれた、遺言書の内容に問題があるなど、何らかのトラブルが生じているときは、司法書士ではなく弁護士に依頼する必要があります。
相続の手続きの中には、司法書士と弁護士のどちらに依頼しても対応できる場合があります。たとえば、遺産の分け方について相続人同士で争いがなく、その他のトラブルも生じていない場合や、遺言書の作成など生前の相続対策を進めたい場合は、いずれの専門家にも依頼できます。
借金問題を解決するための「債務整理」には、任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。
手続きの内容や請求額によって、依頼できる専門家は司法書士か弁護士かに分かれます。
自分の状況に合った解決方法を選ぶためにも、それぞれの対応範囲を理解しておきましょう。
債務整理の種類 | 概要 |
---|---|
任意整理 | 銀行や消費者金融などの債権者と交渉して、 利息・遅延損害金のカットや返済期間の延長などを認めてもらいます。 |
個人再生 | 裁判所の手続きを通じて、借金などの債務を減額してもらいます。 |
自己破産 | 裁判所の手続きを通じて、借金などの債務を免責してもらいます。 原則として、高額の財産などは処分されます。 |
司法書士は、1社当たり140万円以下の任意整理を取り扱うことができます。また、個人再生や自己破産については、裁判所に提出する書類を依頼者に代わって作成できます。
個人再生や自己破産を司法書士に依頼しても、申立後の手続きは自分で行わなければなりません。対応をすべて任せたいなら、司法書士ではなく弁護士に依頼することをお勧めします。
一方、少額(1社当たり140万円以下)の任意整理であれば、司法書士も依頼先の候補となります。
弁護士は、任意整理・個人再生・自己破産のいずれも取り扱うことができます。
司法書士とは異なり、弁護士が取り扱える任意整理の金額に制限はありません。また、個人再生や自己破産については、裁判所に提出する書類の作成だけでなく、申立て後の手続きも代理人として対応してもらえます。
債務整理に関する弁護士の業務範囲は幅広いので、迷ったら弁護士に相談するのがよいでしょう。特に個人再生や自己破産を考えているなら、弁護士への相談を強くお勧めします。
債務整理の中には、司法書士と弁護士のどちらに依頼しても対応できる場合があります。たとえば、借金の額が1社当たり140万円以下で任意整理を検討しているケースや、個人再生や自己破産の書類作成だけを専門家に任せ、申立て後の手続きには自分で対応する予定であるケースでは、いずれの専門家にも依頼できます。
交通事故の被害者は、加害者側に対して損害賠償を請求できます。交通事故の損害賠償は高額になる場合もあり、保険会社との交渉や裁判など専門的な対応が必要です。
弁護士と司法書士では業務範囲が異なり、依頼できる内容は金額や手続きによって変わります。ここでは両者の違いと判断基準を解説します。
司法書士が交通事故の損害賠償請求を受任できるのは、請求額が140万円以下の場合のみです。
この場合も、保険会社との示談交渉や簡易裁判所での訴訟には司法書士が対応できますが、訴訟が地方裁判所以上の裁判所で行われる場合は対応できません。
弁護士は、交通事故の損害賠償請求を金額にかかわらず取り扱うことができます。保険会社との示談交渉に加えて、訴訟もどこの裁判所で行われるかにかかわらず、弁護士が代理人として対応可能です。
さらに弁護士には、後遺症が残った場合の後遺障害等級認定もサポートしてもらえます。
交通事故の損害額は、数百万円以上の高額となるケースが多いです。また、事故直後の段階では損害が少ないように思われたとしても、よく調べると高額となることが分かるケースも少なくありません。
上記の特性を踏まえると、交通事故の損害賠償請求を取り扱うには、140万円以下の請求しか受任できない司法書士の業務範囲は狭すぎるように思われます。最初から弁護士に依頼した方が安心でしょう。
認知症などで判断能力が低下した場合、財産管理や契約行為を代理する成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
この申立てでは、書類作成だけを依頼するのか、裁判所での手続きまで任せたいのかによって依頼先が変わります。
弁護士と司法書士の役割の違いを理解しておきましょう。
司法書士は、成年後見人の選任を申し立てる際、家庭裁判所に提出する書類の作成を依頼者に代わって行うことができます。
ただし、司法書士は家庭裁判所の手続きを代理することができません。したがって、家庭裁判所に申立書類を提出した後は、裁判所とのやり取りを自分で行う必要があります。
弁護士は、成年後見人の選任申立てに必要な書類の作成に加えて、家庭裁判所での手続きを代理することができます。
申立てを行った後は、成年後見人の選任要件を満たしているかどうかや、後見人候補者が適任かどうかなどについて審理が行われます。
その過程で、家庭裁判所が申立人に対して質問等を行うことがありますが、弁護士に依頼していれば代理人として対応してもらえるので安心です。
成年後見人の選任申立てについて、手続きへの対応をすべて専門家に任せたいなら、代理人として申立てができる弁護士に依頼する必要があります。
ただし、対立する相手方のいるトラブルに比べると、成年後見人の選任申立てに関する審理が複雑化することは少ないので、申立人自身で対応できるかもしれません。
もし司法書士費用が弁護士費用より安いなら、書類作成だけを司法書士に依頼して、申立て後の手続きは自分で対応するというのも一つの考え方としてあり得るでしょう。
認知症対策や相続対策として、近年では「家族信託」が注目されています。
家族信託は、財産を信頼できる家族に預けて管理してもらう仕組みです。家族信託を設定する際には、信託契約の締結や財産の名義変更などが必要になります。
家族信託は、弁護士と司法書士のどちらにも相談や依頼ができます。
信託に関する法律の理解や、将来のトラブルを想定して適切な対策を考える能力が重要です。弁護士か司法書士かにかかわらず、これらを備えている専門家に依頼しましょう。
残業代の未払い・過度な長時間労働・ハラスメント・不当解雇などの勤務先とのトラブルは、自力で解決するのは難しいケースが多いので、専門家に相談して解決を図りましょう。
勤務先とのトラブルについて、弁護士と司法書士のどちらに依頼するのがよいかの判断基準を紹介します。
司法書士が取り扱うことのできる勤務先とのトラブルは、問題となる金額が140万円以下のケースに限られます。たとえば、請求額が140万円以下の未払い残業代請求などが代表例です。
これに対して、請求額が140万円を超える請求や、不当解雇のように具体的な金額を計算できないケースは、司法書士による受任が認められていません。
なお、勤務先との和解交渉が決裂した場合には「労働審判」によって解決を図ることがあります。しかし、労働審判は地方裁判所で行われる手続きのため、司法書士は取り扱えません。
また、訴訟によって解決を図る場合も、司法書士が取り扱えるのは簡易裁判所で行われる場合のみです。
弁護士は、勤務先とのトラブルを幅広く取り扱うことができます。
たとえば、未払い残業代請求やハラスメントを理由とする損害賠償請求は、金額にかかわらず弁護士に依頼できます。
不当解雇のように明確な金額を計算できないケースでも、弁護士に依頼すれば対応してもらえます。
また弁護士は、勤務先との和解交渉が決裂した場合の労働審判や訴訟も、金額などの制限なく取り扱うことができます。
勤務先とのトラブルは、和解交渉が決裂して労働審判に持ち込まれるケースがよく見られます。
司法書士は労働審判を取り扱えませんが、弁護士は労働審判を取り扱うことができます。解決方法の選択肢の一つとして労働審判を見据えるなら、弁護士に依頼した方が安心です。
離婚を考えている場合や、相手から離婚を切り出されて困っている場合は、司法書士ではなく弁護士に相談することをお勧めします。離婚について、司法書士が対応できる業務はかなり限定されているためです。
たとえば、財産分与に伴う不動産の所有権移転登記や、離婚調停の申立書の作成などは司法書士に依頼できます。しかし、離婚に当たって決めるべき条件についての詳しい相談を受けられないなど、十分な対応は期待できません。
弁護士に依頼すれば、離婚に関する手続きや決めるべき離婚条件について、幅広いサポートやアドバイスが受けられます。離婚問題を抱えているなら、弁護士に依頼しましょう。
刑事弁護を取り扱うことができるのは弁護士のみです。司法書士は、刑事弁護を取り扱うことができません。
警察から取調べを求められるなど、犯罪行為を疑われている場合には、弁護士に相談しましょう。
司法書士費用は弁護士費用より安いと言われることもありますが、実際にそうとは限りません。費用は各事務所が自由に定めており、依頼先によって異なるからです。
無料相談などを利用した際に見積もりを提示してもらい、比較検討したうえで依頼先を決めましょう。
仮に司法書士費用が安く感じられても、司法書士の業務範囲は狭く限定されている点に注意を要します。司法書士に依頼した後、業務範囲外の問題が発生し、弁護士に依頼し直す必要が生じるケースも少なくありません。
費用が高いか安いかだけに着目せず、必要な対応を十分に行ってもらえるかどうかをよく検討したうえで、司法書士と弁護士のどちらに依頼するかを判断してください。
司法書士から弁護士への切り替えはできますが、司法書士に支払った着手金は原則として返還されません。
遺産の分け方がすでに決まっているなら、遺産分割協議書の作成の依頼先は原則として弁護士または行政書士となります。
司法書士には、行政書士資格を併せ持っているか、または遺産に不動産が含まれている場合に限り、遺産分割協議書の作成を依頼できます。
遺産の分け方がまだ決まっていないなら、遺産分割協議書の作成は弁護士に依頼してください。
契約書作成の依頼先は、主に弁護士または行政書士となります。司法書士は行政書士資格を併せ持っていることがあるので、そのような司法書士に依頼することも考えられます。
ただし、内容的に複雑な契約書を作成する場合や、将来のトラブルのリスクを防ぎたい場合には、トラブル対応の経験が豊富な弁護士に依頼するのが安心です。
司法書士が取り扱うことのできる紛争(トラブル)は、問題となっている額が140万円以下のケースに限られていることを意味します。140万円超の紛争を取り扱えるのは、弁護士だけです。
強制執行について裁判所に提出する申立書類の作成は、司法書士に依頼できます。ただし、司法書士が依頼者の代理人として強制執行を申し立てることはできません。
受験科目の数や内容、受験資格などに違いがあります。
弁護士になるための司法試験では、基礎的な法律についての幅広い知識や論述能力が問われます。司法試験を受験するためには、法科大学院を修了するか予備試験に合格しなければなりません。また、司法試験に合格した後は約1年間の司法修習を経て、「二回試験」と呼ばれる最終試験に合格する必要があります。
司法書士試験でも、基礎的な法律についての知識が幅広く問われます。問題は択一式が中心ですが、登記に関する実務的な科目が設けられているのが特徴的です。司法書士試験は、原則として誰でも受験できます。
行政書士は、官公署に提出する書類や法律文書の作成を取り扱っています。
弁護士とは異なり、行政書士は複雑な事項についての法律相談を受けたり、トラブルの解決を代行したりすることができません。
また司法書士とは異なり、行政書士は登記や供託の手続きを代理することができません。
弁護士と司法書士はどちらも法律の専門家ですが、対応できる業務の範囲に違いがあります。
弁護士の業務範囲は幅広いので、迷ったら弁護士に相談するのが安心です。ただし、登記や供託の手続きは司法書士が得意としています。相談したい内容に応じて、弁護士と司法書士を使い分けましょう。
どちらに相談すればいいか分からないなら、とりあえずどちらでもいいので、弁護士か司法書士の無料相談を利用してみましょう。早い段階で相談することが、悩みのスムーズな解決に繋がります。
(記事は2025年10月1日時点の情報に基づいています)
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