目次

  1. 誰が受け取れる?「生計を一にしていた遺族」に限定
  2. 相続財産ではないが所得税は支払う必要あり
  3. 5年以内の請求期限と必要書類に注意
  4. 他の給付制度との違い

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数か月前に父が急逝しました。父は公的年金を受け取っていました。先日、友人から「未支給年金があるかもしれない」と教えてもらいました。この「未支給年金」とはどういう制度なのでしょうか? 相続財産とは違うのでしょうか。父の年金は母との家計の一部として使っていたので、手続きの期限や注意点があれば、早めに知っておきたいです。 (東京都在住・48歳女性)

未支給年金とは、年金受給者が亡くなった後、本来であれば支払われるはずだった年金で、まだ支払われていない分を指します。具体的には、死亡月分までの年金で、受け取る前に本人が亡くなってしまったために支給されなかった年金です。未支給年金は、一見すると相続財産の一部のようにも見えますが、法律上は別扱いとされ、請求には専用の手続きと要件が定められています。

公的年金(国民年金・厚生年金)は、偶数月の15日に、前月・前々月分をまとめて後払いで支給される仕組みです。このため、受給者が月の途中で亡くなった場合でも、その月の分までは支給対象となり、未払いとなっていれば「未支給年金」として請求できます。

たとえば、6月5日に亡くなられた場合、6月15日支給予定の4月・5月分の年金がまだ振り込まれていない状況であれば、4月・5月・6月分が未支給年金の対象となります。
6月20日に亡くなられた場合は、4月・5月分はすでに6月15日に支給されているため、6月分のみが未支給年金の対象です。
また、7月20日に亡くなられた場合は、6月・7月分は8月15日支給予定でまだ未支給のため、6月分・7月分が未支給年金の対象となります。

この未支給年金は、相続放棄をしていても請求が可能です。手続きは、遺族が故人の死亡届(受給権者死亡届)と同時に、「未支給年金・未支給給付金請求書」を年金事務所などに提出して行います。

未支給年金の対象には、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金・寡婦年金などが含まれます。請求できるのは、死亡月とその前月分の最大2カ月分です。ただし、公的年金は偶数月に2カ月分まとめて支給されるため、支給のタイミングと死亡日によって、実際に未支給となるのは1カ月分か2カ月分のいずれかになります。

一般的には、奇数月に亡くなれば2カ月分、偶数月に亡くなれば1カ月分の請求となることが多いですが、正確な金額は支給状況によって異なります。死亡後に発生する年金(遺族年金等)は含まれません。

未支給年金は、法定相続人であっても自動的に受け取れるわけではありません。受け取れるのは、故人が亡くなられた時に「生計を一にしていた遺族」に限られており、次のような優先順位が設けられています。

①配偶者
②子
③父母
④孫
⑤祖父母
⑥兄弟姉妹
⑦その他の三親等以内の親族(甥、姪、おじ、おばなど)

未支給年金の請求における「生計を一にしていた」とは、故人と請求者が、経済的に結びつきのある生活をしていたかどうか、つまり、同じ生活の経済単位に属していたかを判断する基準です。同居していたかどうかに限らず、生活費の援助などを通じて実質的に生活を共にしていたと認められる関係を指します(例:仕送りを受けていた子、扶養されていた親など)。
より具体的には、年金実務上、次のいずれかに該当する場合に「生計を一にしていた」と判断されます。

① 亡くなった人と住民票上、同一世帯に属していた場合
② 亡くなった人と住民票上は別世帯だったが住所は住民票上、同一だった場合
③ 住民票上の世帯も住所も異なるが、亡くなった人から生活費や療養費等の援助を受けていた、または亡くなった人に援助していたと認められる場合(例:定期的な送金、起居の共通など)

未支給年金は相続財産ではないため、「相続放棄」をしていても上記の条件を満たせば請求が可能です。 

遺族が支給を受けた未支給年金は、相続財産ではありませんが、所得税においては、取得した遺族の一時所得に該当し確定申告が必要になります。ただし、一時所得には50万円の控除があるため、その取得をした年において、他に一時所得もなく、その未支給年金を含む一時所得の金額の合計額が50万円以下である場合には、確定申告は不要です。

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未支給年金を受け取るには、年金事務所などへの請求手続きが必要です。主に以下の書類を提出します。

  • 未支給年金・未支給給付請求書
  • 故人の年金証書
  • 戸籍謄本や住民票など、請求者との関係・生計同一性を示す書類
  • 亡くなった方の住民票の除票、および請求者の世帯全員の住民票の写し
  • 請求者と故人が別世帯である場合は、「生計同一関係に関する申立書」
  • 死亡診断書の写し
  • 請求者名義の通帳(振込先確認用)
  • 生計同一関係を証明する書類(申立書、送金記録など)

特に注意すべきは「時効」です。未支給年金には、5年の消滅時効があり、この期間を過ぎると、原則として請求する権利が消滅します。やむを得ない事情がある場合には、例外的に時効が猶予される可能性もありますが、基本的にはできるだけ早めに手続きを行うことが重要です。

「未支給年金」とは、故人が亡くなる月までに受け取るはずだった年金が、まだ支払われていない場合に、その分を遺族が請求によって受け取れる制度です。

「遺族年金」や「死亡一時金」は、一定の要件を満たす遺族に支給される新たな給付ですが、未支給年金はあくまで、故人にすでに発生していた「年金の未払い分」です。そのため、一度限りの支給であり、支給を受けるには遺族が自ら手続きをしなければなりません。

この制度の最も重要なポイントは、請求しなければ支払われないことです。

原則として、年金事務所から「未支給年金があるかもしれません」と知らせてくれることはありません。

以下のようなケースで気づくご家族が多いようです。
・通帳を確認しても、最後の年金が入金されていない
・死亡後に振り込まれた年金が、銀行によって返金処理された
・死亡届の提出後、年金事務所に相談した際に説明を受けた

なお例外的に、市区町村に死亡届を提出した情報が年金機構に連携され、事務所から問い合わせがあることもありますが、これはあくまで手続き確認であり、「未支給年金があります」という案内ではありません。

実際の請求にあたっては制度を正しく理解しておく必要があります。

相続税の申告を税理士に依頼されている場合は、「準確定申告(じゅんかくていしんこく)」という、亡くなった人(被相続人)がその年に得た所得について、相続人が代わりに行う確定申告まで必要か否かの判断をしてくれます。準確定申告は通常の確定申告と違い、死亡日から4か月以内に提出する必要があります。

しかし、未支給年金だけを例にとると、管轄は年金事務所です。請求書類の準備など、手続き面でも複雑な点があるため、不明な点がある場合は年金事務所に早めに相談することをおすすめします。誤解や手続きの遅れによって給付を受け損ねることのないよう、正確な情報にもとづいた対応が求められます。

(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています。質問は実際の相談内容をもとに再構成しています)

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