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  1. 被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税

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亡くなった父は台湾国籍ですが、日本国内に財産があります。ただ、相続人による遺産分割協議が相続税の申告期限までに成立しませんでした。この場合の申告はどうなりますか?(神奈川県在住 53歳男性)

結論として、日本国内における相続実務において、相続税の計算は、被相続人(亡くなった方)や相続人の住所地、国籍によって変わるものではありません。日本の税法に基づいて行われます。しかし、被相続人が外国籍である場合には、相続手続きについては、被相続人の本国法が適用される点に注意が必要です。

相続手続きとは、日本においては、相続発生後に行う相続人の確定、遺言書の有無の確認、相続財産および債務の調査、遺産分割協議のような一連の手続き全般を指します。

海外に関係する相続では、こうした各手続きも国ごとの法律や実務が影響してくるため、事前に制度の違いを理解し、専門家に相談することが不可欠になります。

日本の相続税の申告の計算にあたっては、まず、日本の民法における法定相続人および法定相続分を前提として相続税の総額を計算します。これは、被相続人が外国人であっても変わることはありません。税額控除や税率の適用といった計算のベースとなる部分は、あくまで日本法の枠組みで統一されています。

しかし相談者のように被相続人(亡くなった人)であるお父様が外国籍の場合、相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立していないときは、お父様の本国法(台湾)による法定相続人が、本国法による法定相続分により遺産を取得したものとして相続税の申告をすることになります。これは先にお伝えしたように外国籍の被相続人の場合、相続の手続きは、日本では適用通則法により取扱いを定めています。つまり「法の適用に関する通則法」第36条では、国際相続があった場合の準拠法に関して「相続は、被相続人の本国法による」と定めているのです。

そして、さらに相続税の申告期限までに遺産分割協議書が成立していないときは、日本の民法に規定する相続人および相続分にしたがって遺産を取得したものとして、相続人の税額を計算して相続税の申告をすることになります。

このように、被相続人が外国籍である場合でも、相続税の総額の算出に用いる法は日本の民法である一方で、各相続人の課税価格の算定にあたっては、被相続人の本国法である台湾の各相続人の課税価格の計算を適用する必要が生じる点で、適用する法が異なることとなります。

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この点については、国税庁の質疑応答事例においても次のように整理されています。

【照会要旨】
外国人が死亡した場合における相続税の総額の計算は、日本の民法の規定による相続人及び相続分を基として計算することとしていますが、各人の課税価格を計算する場合において、遺産が未分割のときは、日本の民法の規定による相続人及び相続分を基として計算するのか又は本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算するのかいずれによりますか。

【回答要旨】
法の適用に関する通則法第36条により相続は被相続人の本国法によることとされていますから、被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算することとなります。

このように、被相続人や相続人の国籍・住所地、あるいは相続財産の所在地によっては、各国の準拠法や手続きの違いに対応する必要があります。

相続手続きを円滑に進めるためには、現地の相続制度や関連法令に精通した専門家との連携が不可欠です。特に国際相続においては、海外の専門家との調整に慣れている税理士を選ぶことが、実務上の負担やリスクを最小限に抑える鍵となります。

(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています。質問は実際の相談内容をもとに再構成しています)

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