目次

  1. 1. 2種類の遺族年金
    1. 1-1. 遺族基礎年金の受給要件
    2. 1-2. 遺族厚生年金の受給要件
  2. 2. 再婚すると遺族年金をもらえない
  3. 3. 再婚しても遺族年金をもらえるケースは?
    1. 3-1. 子どもが再婚相手と養子縁組をしたケース
  4. 4. 子どもが祖父母と暮らすケース
  5. 5. 遺族年金受給中に再婚したときの手続き
  6. 6. 失権届を提出しなかった場合のペナルティ
  7. 7. まとめ

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国の公的年金制度では、老後の保障となる「老齢年金」、病気やけがによる障害の程度に応じて給付される「障害年金」、亡くなられた方のご遺族が受け取る「遺族年金」の3種類の給付があります。

また、制度は2階建て構造になっており、1階部分の国民年金(基礎年金)は20歳以上60歳未満のすべての方が加入し、これに加えて、会社員や公務員の方々は2階部分の厚生年金にも加入しています。

年金の給付は、加入していた制度から「○○基礎年金」、「○○厚生年金」という形で支給されます。今回のテーマである「遺族年金」も同様に、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」のふたつがあり、それぞれに受給の要件が決められています。

「遺族基礎年金」は、死亡した方が以下のいずれかの要件に当てはまる場合に、死亡した方によって生計を維持していた「子のある配偶者」または「子」が受け取ることができる年金です。

遺族基礎年金が受け取れる要件
遺族基礎年金が受け取れる要件

 「子」とは、死亡当時、婚姻をしていない以下のいずれかに該当した者となります。

  • 18歳になった年度の3月31日までの間にある
  • 20歳未満であって障害等級1級または2級に該当する障害の状態にある

 「配偶者」は、上記の「子」と生計を同じくする(生計同一)必要があります。例えば、
死亡当時に生計維持されていた配偶者と子が1人いて、その「子」が21歳であれば、「子のある配偶者」にも「子」にも該当しない、ということになります。

 なお、「生計を維持する」と「生計を同じくする」の違いですが、前者の「生計を維持する」は、死亡当時、死亡した方と生計を同一にしており、原則として年収850万円未満の方が該当します。後者の「生計を同じくする」は、死亡した方と住民票上同一世帯であった、あるいは別世帯(別居)でも、音信や訪問が定期的にあり、経済的な援助をするなど消費生活上の家計をひとつにしている方が該当します。

遺族厚生年金は、死亡した方が以下のいずれかの要件に当てはまる場合に、死亡した方の遺族が受け取ることができます。

遺族厚生年金が受け取れる要件
遺族厚生年金が受け取れる要件

遺族厚生年金を受けることができる遺族は、死亡当時、死亡した方によって生計を維持していた1)配偶者または子、2)父母、3)孫、4)祖父母の順で、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。ただし、妻以外の者は、以下の要件に該当する必要があります。

遺族厚生年金が受け取れる遺族の要件
遺族厚生年金が受け取れる遺族の要件

遺族基礎・厚生年金それぞれの優先順位を見ていくと、配偶者と子が同列に並んでいますが、配偶者が遺族基礎・厚生年金の受給権をそれぞれ有するときは、子への年金は支給停止になるという仕組みがあるため、結果的に配偶者に支給されることになります。

遺族年金は、受給している方が一定の状況に至ったときに、受給する権利がなくなります(受給権の消滅)。その受給権消滅事由の中に、「婚姻をしたとき」があるため、再婚をすると遺族年金は支給されなくなります。この「婚姻をしたとき」には内縁関係も含まれるため、社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係(いわゆる事実婚)があるような場合には、受給権は消滅となります。

再婚しても、遺族年金を引き続き受給できる場合があります。

再婚すれば、配偶者の受給権は消滅しますが、遺族年金は「子」にも受給権が発生しているため、配偶者が受給している間は支給停止されていた「子」への年金が、支給停止解除となります。つまり、配偶者に代わって、子が遺族年金をもらえることになります。ただし、「子」が以下の要件すべてを満たす場合に限ります。

  • 18歳になった年度の3月31日までの間、あるいは20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある
  • 婚姻していない
  • 父または母と生計を同じくしていない(遺族基礎年金のみ)

では、上記要件にあてはまる「子」が、親の再婚相手と養子縁組すると、どうなるでしょう。例えば、父を亡くした子が、母の再婚相手と養子縁組した場合などです。遺族基礎・厚生年金ともに「子」の受給権の消滅事由のうち、養子に関しては「直系血族または直系姻族以外の方の養子となったとき」とありますので、母の配偶者と養子縁組しても受給権は消滅せず、遺族年金を受け取ることができます。
ただし、遺族基礎年金については、両親と生計を同一にしているともらえなくなるので、子が再婚した両親とは一緒に暮らさず自活しているような場合や、次に紹介する祖父母と暮らす場合であれば、遺族基礎年金も受給可能です。

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再婚した際に、子が親とは同居せず、祖父母と同居して暮らす場合で、生計同一関係が祖父母にあるときは、遺族基礎・厚生年金どちらも子が受給可能となります。仮に祖父母と養子縁組をしたとしても、直系血族の養子となるため、受給権の消滅事由には当たりません。

遺族年金受給中に再婚した場合には、「遺族年金失権届」が必要です。遺族基礎年金の場合は再婚した日から14日以内に、遺族厚生年金は10日以内に、年金事務所または居住地域の年金相談センターへ届け出てください。具体的な失権届の様式や記入例は、日本年金機構のホームページにて確認してください。

遺族年金失権届を提出せずに遺族年金を受給し続けると不正受給とみなされて、返金の義務はもちろんのこと、罰金や罰則を受けることがあります。忘れずに届け出てください。

遺族年金は、残されたご家族の安定した生活を保障する相互扶助の制度です。制度の趣旨や内容を理解して、いざというときに備えると同時に、誤って受給してしまわないよう必要な手続きを行いましょう。年金について不安がある場合は、専門家である社会保険労務士に相談してください。

(記事は2021年11月1日時点の情報に基づいています)

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