目次

  1. 1. 国際相続とは?
  2. 2. 国際相続に関する相続税の基本ルール
    1. 2-1. 日本国内にある財産|常に日本の相続税が課されるケース
    2. 2-2. 海外にある財産|日本の相続税が課されるかは「居住地」と「10年」が決め手になる場合
  3. 3. 相続税の課税対象となる海外資産の例
  4. 4. 海外における相続税の課税ルール
    1. 4-1. アメリカにおける相続税
    2. 4-2. フランスにおける相続税
    3. 4-3. 相続税がない国もある
    4. 4-4. 国ごとの課税ルールを理解することが重要
  5. 5. 日本と海外の相続税が二重にかかるケースについて
    1. 5-1. 日本に住みながら海外資産を所有しているケース
    2. 5-2. 海外在住の親が死亡し、日本に住む子どもが相続するケース
    3. 5-3. 日本在住の親が死亡し、海外在住の子どもが相続するケース
    4. 5-4. かつて海外に居住しており、日本国籍を持たない親から相続するケース
    5. 5-5. 3カ国以上の国に財産があるケース
  6. 6. 日本と海外の二重課税を回避する「外国税額控除」とは?
  7. 7. 国際相続に関する相続税申告の手続きと費用
    1. 7-1. 日本在住者が外国に対して相続税申告をする場合
    2. 7-2. 海外在住者が日本の相続税申告をする場合
  8. 8. 国際相続にかかる税金についての注意点
    1. 8-1. 相続税の申告期限や納付方法は、国や地域によって異なる
    2. 8-2. 海外送金には時間や費用がかかる
    3. 8-3. 海外資産の相続税評価は難しい
    4. 8-4. 国外財産調書の提出を要する場合がある
  9. 9. 国際相続と税金に関してよくある質問
  10. 10. まとめ 国際相続の適切な処理は国際税務に強い税理士に相談を

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国際相続とは、一般的には異なる国に住む人々や財産について行われる相続手続きを指します。

近年では家族や親族が異なる国籍を持つ場合や、遺産の対象が複数国にわたるケースが増加しており、国際相続は非常に身近な課題となりつつあります。各国の法律や税制が異なるため、相続手続きの複雑化に伴い法的なトラブルも起こりやすい状況です。たとえば、相続財産に対する課税方法や相続権の優先順位など、国ごとに異なる規定があり、これを理解しないまま手続きを進めると予期せぬ負担や紛争を招くリスクがあります。

また、国際相続では遺言書の有無や内容の有効性が重要なポイントですが、特定の国で効力を持つ遺言書が他国では有効とならない場合もあり、事前対策が必要と言えます。国際相続の基礎知識を持つことは手続きの複雑さを軽減し、遺族への負担を最小限に抑えることにつながります。

国際相続は、被相続人や相続人の住んでいる場所や期間、国籍などによって、納税義務の範囲が異なります。国際相続における納税義務の範囲を、ケース別に見ていきます。

日本国内にある財産には、被相続人または相続人が日本に住んでいるかどうかに関係なく、日本の相続税が課される場合があります。課税の対象については、図版「国際相続における納税義務の範囲」のとおりです。

国際相続における納税義務の範囲を図解。黄色のエリアに該当すると、国内外の財産が対象となる
国際相続における納税義務の範囲を図解。黄色のエリアに該当すると、国内外の財産が対象となる

図版「国際相続における納税義務の範囲」で常に日本の相続税が課されるケースは、次のとおりです。

【ケース1】
被相続人が相続時に日本国内に居住し、相続人も日本国内に居住している場合は、国内外の全財産が課税対象になります。

【ケース2】
被相続人が相続時に日本国内に居住しておらず、相続人は相続時に日本に居住していた場合は、国内外の全財産が課税対象になります。

【ケース3】
被相続人が相続時に日本国内に居住しているものの、相続人は相続時に日本国内に居住していない場合で、日本国籍で10年以内に日本に住所がある限り、国内外の財産に相続税が課されます。ただし、日本国内に居住していない場合でも日本国籍で10年以内に住所がないケースでは国内財産のみの課税となります。

【ケース4】
被相続人が相続時に日本国内に居住していないものの、10年以内に住所があり、かつ相続人は相続時に住所がなく、10年以内にも住所がない場合でも、日本国籍があるのであれば、国内外の財産に相続税が課されます。

また、被相続人が相続時に日本国内に居住しておらず、10年以内にも住所がない状態で、相続人は相続時に住所がない場合でも、日本国籍があり10年以内に居住していたケースでは、国内外の財産に相続税が課されます。

海外にある財産について、日本の相続税が課されるかどうかは被相続人と相続人の居住地、および過去10年間の日本での居住歴が影響します。

海外にある財産について、日本の相続税が課税されるケースは以下のとおりです。

【ケース1】
被相続人が相続時に日本国内に居住し、相続人も日本国内に居住している場合は、国内外の全財産が課税対象になります。

【ケース2】
被相続人が相続時に日本国内に居住しておらず、相続人は相続時に日本に居住していた場合は、国内外の全財産が課税対象になります。

【ケース3】
被相続人が相続時に日本国内に居住しているものの、相続人は相続時に日本国内に居住していない場合で、日本国籍で10年以内に住所がある限り、国内外の財産に相続税が課されます。ただし、居住はしていない場合でも日本国籍で10年以内に住所がないケースでは国内財産のみ課税の対象となります。

【ケース4】
被相続人が相続時に日本国内に居住していないものの、10年以内に住所があり、かつ相続人は相続時に住所がなく、10年以内にも住所がない場合でも、日本国籍があるケースでは、国内外の財産に相続税が課されます。

また、被相続人が相続時に日本国内に居住しておらず、10年以内にも住所がない状態で、相続人は相続時に住所がない場合でも、日本国籍があり10年以内に居住していたケースでは、国内外の財産に相続税が課されます。

海外にある財産について課税されないケースは以下のとおりです。

【ケース5】
被相続人も相続人も相続時に日本国外に居住しており、かつ相続人に日本国籍があっても過去10年以内に日本に住んでいない場合は、海外の財産には相続税が課されません。

【ケース6】
被相続人も相続人も相続時に日本国外に居住しており、かつ相続人は日本国籍がない場合は、海外の財産には相続税が課されません。

相続税の課税対象となる海外資産には、さまざまな種類の財産が含まれます。

まず、海外にある不動産が挙げられます。たとえば、被相続人が保有していた海外の住宅や土地、コンドミニアムなどの別荘などは、相続時に日本および他国でも課税対象となる場合があります。

次に、海外に保管している美術品や骨董品も対象です。特に価値が高い絵画や彫刻、アンティークの家具などは、相続財産として扱われるため、適切に評価され課税されることになります。ただし、美術品は欧州の一部の国々では非課税の場合があります。

さらに、海外の金融機関に預けられている資産のほか、暗号資産、NFTなども課税対象です。海外の銀行口座や証券口座に預けられている現金や、株式や債券などの投資商品は、相続人や被相続人の居住状況によって日本や他国でも相続税の対象となることがあります。これらの海外資産に関しては、正確な資産の把握と評価および申告が求められます。

日本に相続税があるように、海外にも国ごとに相続税に相当する税金が存在します。各国の課税ルールや適用範囲は異なるため、国際相続においてはそれぞれの税制を理解することが重要です。例として、アメリカとフランスの相続税制度、そして相続税がない国について説明します。

アメリカには、日本の相続税に相当する「遺産税(Estate Tax)」という制度があります。アメリカでは、被相続人がアメリカ居住者である場合のほかに、米国籍や市民権を保持していると、その資産がアメリカ国内外にあるかどうかにかかわらず、すべての財産に遺産税が課されるのが基本です。

たとえば、アメリカに居住している日本国籍の人が、アメリカに7億円、日本に3億円の財産を持って亡くなった場合、その総額10億円がアメリカの遺産税の対象となります。また、相続人が日本在住の場合は日本の相続税も課税されるため、同じ10億円に対して二重課税の問題が生じることがあります。

アメリカでは、相続税が課される際に一定の控除額が設けられており、控除額を超えた部分に対して課税が行われます。日本と異なり、この控除額や税率は毎年のように変更されるため、最新の税制に基づいて評価を行うことが重要です。

アメリカの遺産税が日本の相続税と大きく異なるのは、アメリカは英米法に基づいた管理清算主義の遺産分割方法を採用している点です。これは「検認裁判(プロベート)」と言われ、この手続きを経なくては分割ができない相続制度になっています。プロベートが終了するまで1年以上かかることがほとんどです。

また、遺産税の計算方法は管理精算主義に基づいた遺産税方式を採用しており、被相続人が納税義務者である点が日本とは大きく異なっています。

フランスは日本と同じように大陸式の相続手続きとなっています。

ただし、課税範囲が特有である点に注意が必要です。フランスにある財産が相続の対象になる場合、フランスに居住していた被相続人だけでなく、相続人の居住状況も課税に影響を与えます。

たとえば、相続人がフランスに居住していない場合には、フランス国内にある資産のみが課税対象となります。

しかし、相続人が過去10年間のうち6年以上フランスに居住していた場合には、フランス国外の資産も含めて課税対象とされます。このように、フランスでは相続人の居住状況も海外資産に対する課税の範囲に大きく影響してきます。

また、フランスの相続税制度は、配偶者は相続税が免除される一方、子ども、兄弟姉妹、甥姪によって税率が異なります。また、一定の非課税枠が設けられていますが、この非課税枠は、フランス国内の財産だけでなく、国外の財産にも適用されるため、相続人がフランスに長期居住している場合には重要な考慮ポイントになります。

フランスは日本と同様に大陸法に基づいた包括承継主義という遺産分割方法を採用しているものの、相続税の計算方法はそれに基づいた遺産取得税方式が採用されており、納税義務者が相続人である点がアメリカと異なっています。

シンガポールやオーストラリアなど、相続税が存在しない国もあります。これらの国では、相続人が財産を取得する際に特別な税負担が発生しないため、税務面での手続きは比較的シンプルです。ただし、相続税がないからと言っても安心はできず、贈与税や譲渡所得税などのかたちで課税が行われる場合もあります。

また、これらの国では遺産税はないものの、遺産を分配する際には、米国のようにプロベートという裁判検認手続きを経る国も多く存在しており、注意が必要です。

国ごとに異なる課税ルールや、二重課税を防ぐための各国間の協定を適切に理解することが、国際相続をスムーズに進めるために非常に重要です。

相続税が課されるかどうか、またその税額を左右する要因については、各国の最新の税制を把握する必要があり、特に専門的な知識が求められます。国際相続においては、各国の課税ルールや税制の仕組みを熟知した税理士や弁護士と連携し、最適な方法で資産承継を行いましょう。

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海外にある財産に対して日本の相続税が課される場合、その財産が所在する国でも相続税が課され、二重課税の対象となることがあります。たとえば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 日本に住みながら海外資産を所有しているケース
  • 海外在住の親が死亡し、日本に住む子どもが相続するケース
  • 日本在住の親が死亡し、海外在住の子どもが相続するケース
  • かつて海外に居住しており、日本国籍を持たない親から相続するケース
  • 3カ国以上の国に財産があるケース

日本に住みながら海外資産を所有しているケースでは、日本の居住者は全世界の財産に対して相続税が課されるため、海外資産が所在国で課税されると日本での課税と重複します。

海外在住の親が死亡し、日本に住む子どもが相続するケースでは、親の財産が海外にある場合、所在国で課税されると同時に、日本国内に居住する相続人にも日本の相続税が課されます。

日本在住の親が死亡し、海外在住の子どもが相続するケースでは、日本国内にある資産には日本の相続税がかかり、子どもが居住する国でも日本の資産が相続税の対象となる可能性があります。

かつて海外に居住しており、日本国籍を持たない親から財産を相続するケースでは、居住国や国籍により、相続財産が多重に課税されるリスクがあります。このような場合、日本の税法だけでなく、財産が所在する国の相続税制度も確認しなければなりません。

3カ国以上の国に財産があるケースでは、それぞれの国で各相続税が課税される可能性があります。

なお、二重税額控除は二国間条約のため、間接的な3カ国目の相続税が控除ができない可能性があるという点が問題となります。

このような場合、相続税の二重課税防止協定や国内法があるかどうか、その他該当条項の適用も検討する必要があります。複雑な国際税務の対応が求められるため、国際相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。

外国税額控除は、日本の居住者が日本と海外の両国で、同じ財産に対して相続税または遺産税がかかってしまった場合に、その外国税額を日本の相続税から控除できる制度です。これにより、国外と国内での二重課税を回避し税負担を軽減することができます。

たとえば、総財産価額1億5000万円(日本国内財産1億円、米国不動産5000万円)で、日本の相続税総額が2250万円(うち米国の遺産について日本でかかる相続税額600万円)だった場合は次のような仕組みで控除されます。

控除限度額=日本で課される相続税額×(外国財産/総財産価額)
=2250万円×(5000万円/1億5000万円)
=750万円

実際の控除額=600万円

控除限度額の750万円と外国で支払った相続税額の600万円を比較し、少ない金額である600万円が実際控除額になります。

この結果、米国遺産税は全額控除ができ、日本での相続税額は1650万円となります。したがって、総額負担は2250万円(日本の相続税1650万円 +米国の遺産税 600万円)になります。

外国税額控除ができる対象者は、日本の居住者であり(住所が日本にあるか、1年以上日本に居住)、国内で納税義務を負う相続人または受遺者です。適用要件は海外にある財産が日本の相続税法の課税対象財産であり、その財産に対して外国で課された相続税または遺産税があることなどです。

この控除を受けるためには、相続税の申告書に「外国税額控除に関する明細書」と海外で支払った税金の証明書(納税証明書)などを添付して提出する必要があります。

留意点としては、原則的には租税条約が対象としている各国の国税に限定されるため、州などの遺産税は対象外になります。また、外国での相続税額が高額の場合、日本で控除できる金額には上限があるため、すべてが控除されないことがある点にも留意する必要があります。

国際相続に関する相続税申告の手続きと費用を、日本在住者が外国に対して相続税申告をする場合と海外在住者が日本の相続税申告をする場合の2つに分けて解説します。

日本在住者が海外に所在する財産を相続するときは、財産の所在国で相続税の申告を行う必要に迫られる場合があります。手続きや必要書類は国ごとに異なり、現地の法律や税務規定に従う必要があります。

一般的に必要な書類としては、被相続人の死亡証明書、相続人の身分証明書、戸籍謄本、場合によってはマイナンバーの入った写真付証明書を求められ、日本の公証手続きが必要になる場合もあります。また、米国などではITIN(納税者番号)を取得する必要もあります。同時に、銀行口座残高証明や不動産の権利証書など相続財産に関する証明書の提示も求められ、国ごとに追加の書類が必要になることもあります。

この手続きには、現地財産の公的文書を取得する際の費用や、それらの日本語への翻訳費用、国によっては財産の評価手続きの際の不動産鑑定士などの費用、あるいは現地の税務専門家である弁護士や税理士のサポート費用など、日本国内の通常の相続手続きに比べて考慮すべき費用が多く発生します。

このように、国際相続は、手続き上各国の税制に精通した現地専門家との連携が重要であるため、費用面での負担が増すのが特徴です。

海外在住者が日本国内にある財産を相続する場合は、日本の相続税申告手続きを行う必要があります。

まず、相続税申告の流れとしては、被相続人の死亡を確認したあと、国内外の相続人が申告期限までに必要書類をそろえ、税務署に申告書を提出します。申告に必要な書類は、被相続人の戸籍謄本や死亡診断書、相続人全員の戸籍抄本および住民票、不動産や金融資産の評価に関する資料などが含まれます。

海外在住相続人については、相続税申告のために必要な個人の書類として、パスポートと、居住者であることを証明するその国での宣誓供述書を取得し、それらを日本語に翻訳する必要があります。

また、申告書の提出には、日本国内の代理人を指定することが求められる場合があり、そのための報酬が別途かかる可能性があります。このように、海外在住相続人が日本の相続税申告を行う場合、翻訳や代理人報酬など、日本在住相続人よりも多くの費用が必要になることが一般的です。

国際相続にかかる税金に関する注意点は主に4つあります。

国際相続においては、相続税の申告期限や納付方法が国によって異なるため、対象国の税法をきちんと確認する必要があります。たとえば、アメリカでは被相続人が亡くなった日から9カ月以内に遺産税の申告と納付を行う必要があります。また、アメリカのプロベート制度においては、遺産の分配や相続税の納付前に遺産の内容や相続人を裁判所が確認する手続きが行われます。

プロベート手続きは時間がかかるケースが多く、申告や納税がスムーズに進まない場合が少なくありません。そのため、日本においては未分割申告をしておき、その後2年以内に修正申告をすることがやむを得ない場合もあります。

また、アメリカなどは納税のために小切手を用いることも許されています。相続の対象国ごとに異なる税法や制度に対応するためには、現地の専門家への相談も有効です。

相続税を納付するために海外送金を行う場合、送金には時間と手数料がかかるため、事前に確認しておくことが大切です。さらに、最近ではマネーロンダリング対策法により海外に送金しても着金するまでの金融機関側のチェックが長引く傾向にあり、海外送金は一層厳しさを増しています。

なお、各金融機関で設定されている手数料が異なるため、最適な方法を選択することでコストを抑えられます。

送金までに期間を要するため、特に申告や納付期限が厳格な国においては、期限内に納付が完了しないとペナルティーが科される可能性があり、送金にも計画的な対応が求められます。

海外資産は国内の財産と比べて相続税評価が難しい場合が多いです。評価には現地調査が必要なケースがあり、特に不動産や美術品などの評価は難航する傾向にあります。

海外資産の評価方法は一律時価適用ですが、現地の評価基準と日本の評価基準が異なっており、さらにはいくつもの評価方法があった場合には、日本での申告用に価値を適正に評価することが難しくなるケースがあります。

この場合、必要な資料の収集や現地の評価方法の確認が求められるため、相続税申告に対応する税理士や評価専門家の支援が欠かせません。海外資産の評価を誤ると、税額が過大または過小になるリスクがあるため慎重な対応が求められます。

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国外に一定額以上の財産を保有している相続人は、「国外財産調書」の提出が求められます。国外財産調書の提出対象者は、日本国内に住所を持ち、その年の12月31日時点で国外財産の価額が5000万円を超える人です。この調書には、財産の種類や価額、所在地などを記載し、翌年の確定申告と同時に税務署に提出する必要があります。

提出しなかった場合や虚偽の記載をした場合には、罰則として無申告加算税や重加算税が課される可能性があり、悪質とみなされれば刑事罰の対象になるおそれもあります。

国外財産に関する所得税や相続税などの申告を正確に行うためにも、国外財産調書の提出義務を確認し、適切に対応することが重要です。

Q. 海外の相続税申告を日本の税理士に依頼できる?

海外での相続税申告を日本の税理士に依頼することは可能ですが、対応できる税理士は限られています。

国際相続に強い税理士であれば、現地の税理士や弁護士などの専門家と連携し、複雑な海外の税制にも対応することが可能です。特に、相続財産が複数の国にわたる場合や、複雑な税制が絡む場合には、こうしたネットワークを持つ税理士に相談することが効果的です。

ただし、税理士の選定には時間がかかることがあるため、早めの相談が望まれます。

Q. 日本に住む家族と遺産分割協議をする必要があるが、海外在住で帰国できない場合、どうすればよい?

帰国できない場合でも、遺産分割協議を進める方法があります。Zoomなどのウェブ会議システムを利用すれば、直接会わずにオンラインで協議を行うことができます。

また、協議が終わったら、遺産分割協議書をEメールや宅配便でやりとりし、必要な署名を行います。このような手段を活用することで、物理的な距離を超えてもスムーズに遺産分割協議は行えます。

Q. 海外在住です。日本の家族と書類をやりとりするのに郵便がなかなか届かない場合は、どうすればよい?

海外在住者が日本の家族と書類をやりとりする際、郵便が遅れることはよくあります。この場合、重要書類のやりとりを効率化するために、通常の連絡はメールのほか、LINEやWhatsAppなどのチャットアプリで済ませるのも一つの方法です。

ただし、遺産分割協議書やその他の原本が必要な書類については、余裕をもって手配し確実に届く方法を選ぶことが大切です。急ぎの書類には追跡可能な国際宅配便を利用するのも有効です。

そのうえで、書類を海外に郵送する際には、EMS(国際スピード郵便)、DHL、FedEx、UPS、国際書留郵便、電子署名付きデジタル送信などを利用する選択肢があります。これらのなかから、郵送費用や期日に応じて選択するとよいでしょう。

Q. 日本の永住権を持っていても、海外で相続税がかかることはある?

日本の永住権を持っている場合でも、海外にある資産については、その所在国の相続税が課されるケースがあります。

国によっては、自国に所在する財産に対して相続税を課す規定が設けられており、日本国内の相続人であっても影響を受けるこケースがあります。そのため、財産が所在する国の税制を事前に確認し、必要であれば現地の税理士に相談することをお勧めします。

Q. 相続税がかからない国の銀行口座に財産を移しておくと節税になる?

相続税がかからない国の銀行口座に財産を移すことで、日本の相続税から逃れられるという考え方もありますが、必ずしもそうではありません。

たとえば、シンガポールや香港などの相続税がない国に資産を移しても、日本の相続税法では、日本の居住者が海外の資産を相続する場合、全世界の財産が課税対象となります。したがって、残念ながら財産を移動しただけでは日本の相続税対策になることはありません。

ただし、被相続人および相続人ともに10年以上日本に居住していなかった場合は節税になる可能性はあります。

また、送金手数料や為替変動リスク、国によってはプロベート費用などほかのコストも考慮しなければならず、結果的に節税効果が小さいことも多いのです。したがって国際相続では節税方法に慎重であることが重要となっています。

国際相続は、被相続人や相続人の居住地、財産の所在国に応じて相続税の適用が異なります。また、相続税と酷似の課税方法、たとえばローカル税や州税、固定資産税、登録税などで課税することもあり複雑な税制が絡むことが多い分野です。

各国の相続税申告時期や評価方法も異なるため、日本と海外で二重課税が発生するケースもあり、慎重な対応が必要です。また、期限や納付方法、書類のやりとりなど、実務上の課題も少なくありません。国際相続の税務を適切に処理するためには、国際税務に精通した税理士に相談し、専門的なサポートを受けることが最も確実です。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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