目次

  1. 1. 遺贈寄付とは?
  2. 2. 主な遺贈寄付先のパターン
    1. 2-1. 自治体
    2. 2-2. 学校
    3. 2-3. 公益法人やNPO法人などの非営利団体
  3. 3. 医療や福祉に関する遺贈寄付先一覧
    1. 3-1. 社会福祉法人 中央共同募金会
    2. 3-2. 日本赤十字社
    3. 3-3. 公益財団法人 日本骨髄バンク
    4. 3-4. 認定NPO法人 国境なき医師団日本
    5. 3-5. 認定NPO法人 ロシナンテス
  4. 4. 子どもや教育に関する遺贈寄付先一覧
    1. 4-1. 一般財団法人 あしなが育英会
    2. 4-2. 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
    3. 4-3. 認定NPO法人 ワールド・ビジョン・ジャパン
    4. 4-4. 公益財団法人 日本ユニセフ協会
    5. 4-5. 認定NPO法人 国境なき子どもたち
  5. 5. 自然や動物に関する遺贈寄付先一覧
    1. 5-1. 公益財団法人 日本盲導犬協会
    2. 5-2. 公益社団法人 日本動物病院協会
    3. 5-3. 公益財団法人 日本自然保護協会
    4. 5-4. 公益社団法人 日本動物園水族館協会
    5. 5-5. 公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
  6. 6. 遺贈寄付先の選ぶ際の3つのポイント
    1. 6-1. 貢献したい地域や分野を考える
    2. 6-2. 希望するかたちで遺贈寄付ができるかどうか問い合わせる
    3. 6-3. 実際にイベントやボランティアなどへ参加してみる
  7. 7. 遺贈寄付に関してよくある質問
  8. 8. まとめ 遺贈寄付は弁護士など専門家への相談がお勧め

「遺贈寄付」とは、遺言によって遺産の全部または一部を自治体や団体などに寄付する行為を指します。

遺言書を作成すると、遺産を自由に譲り渡すことができます。家族だけでなく、自治体や慈善団体などに対する遺産の寄付も可能です。

特に近年は少子高齢化によって家族のいない人が増えているため、自治体や慈善団体に対する遺贈寄付が注目されています。遺贈寄付をすれば、理念や活動内容に共感できる自治体や団体に、遺産を有効活用してもらえます。

また、遺贈寄付は亡くなったあとに残った財産のなかから寄付するため、老後の資金を心配せずにできるほか、寄付先が一定の要件を満たしていれば相続税がかからない点も大きなメリットです。

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遺贈寄付先の候補としてよく挙げられるのは、自治体や学校、公益法人、NPO法人などの非営利団体です。

都道府県や市区町村などの自治体に遺贈寄付した財産は、地域経済の活性化や災害対策のインフラ整備など、主に街づくりのために使われます。自分が暮らしていた自治体や縁の深い自治体への遺贈寄付は、次世代の街づくりに役立つ有意義な使い道と言えます。

自分の母校など、学校に対する遺贈寄付も有意義な選択肢です。

学校に寄付した財産は、施設の拡充や講義の充実化など、生徒や学生の学習環境を整えるために活用されます。後輩たちによりよい環境で学んでほしいと考える場合は、学校への寄付を検討しましょう。

社会貢献を目的とする慈善事業は、公益社団法人や公益財団法人などの公益法人、NPO法人などの非営利団体が中心となり担っています。

非営利団体の活動内容は、医療や福祉、教育、貧困支援、自然保護などさまざまです。自分の共感できる活動をしている非営利団体を調べて、遺贈寄付先の候補としてリストアップしましょう。

医療や福祉に関係する遺贈寄付先の候補団体としては、以下が挙げられます。

  • 社会福祉法人 中央共同募金会
  • 日本赤十字社
  • 公益財団法人 日本骨髄バンク
  • 認定NPO法人 国境なき医師団日本
  • 認定NPO法人 ロシナンテス

社会福祉法人 中央共同募金会は1947年に発足し、1952年に社会福祉法人として認可された慈善団体です。「赤い羽根共同募金」などの活動を通じて高齢者や障害者、青少年や被災者などへの支援を行っています。

社会福祉法人 中央共同募金会は遺贈寄付を受け付けており、活用分野は一任できますが、遺言書によって以下のように指定もできます。

  • 子どもたちの健やかな成長のため
  • 高齢者のため
  • 障害のある人の生活支援のため
  • 生活に困窮している人たちの支援のため
  • 日本の福祉の発展のため

赤十字社は全世界で191の国と地域に広がる赤十字と赤新月社のネットワークを生かして活動する組織です。日本赤十字社はそのうちの一つで、国内外における災害救護をはじめ、苦しむ人を救うために活動しています。

主な活動は戦争や天災の際の傷病者救護活動ですが、そのほかにも人道の観点からさまざまな活動を行っています。活動している国や地域の範囲が幅広いのも大きな特徴です。

日本赤十字社に寄付をした遺産は、国内災害救護や、全国に90以上ある赤十字病院での医療事業、血液事業など苦しんでいる人々を救うために活用されます。

傷病者を助けるために遺産を使いたい場合は、日本赤十字社への遺贈寄付を検討しましょう。

公益財団法人 日本骨髄バンクは、白血病をはじめとする血液疾患のために骨髄移植などの造血幹細胞移植が必要な人と、それを提供するドナーをつなぐ公的事業です。

日本骨髄バンクに寄付した遺産は、患者の経済的負担を軽減するための費用や、ドナーが安全かつ安心して造血幹細胞を提供するために連絡調整を行うコーディネーターの活動費に使用されます。

重大な血液疾患に苦しんでいる人々を助けるために遺産を使いたい場合は、日本骨髄バンクへの遺贈寄付を検討するとよいでしょう。

認定NPO法人 国境なき医師団日本は、紛争や自然災害、貧困などにより危機に直面する人々に対して、独立、中立かつ公平な立場で緊急医療援助を届ける非営利団体です。

国境なき医師団日本に寄付した遺産は、紛争地や難民キャンプ、国内避難民のキャンプ、自然災害の被災地で、外科治療や栄養失調の治療、基礎医療や予防接種の無償提供などに活用されます。

世界各地における医療支援のために遺産を使いたい場合は、国境なき医師団日本への遺贈寄付をご検討ください。

認定NPO法人 ロシナンテスは、日本発祥の医療支援団体です。妊産婦や新生児の死亡率が高いスーダンやザンビアを中心に、医療が受けられない地域に住む人々へと医療を届けています。

ロシナンテスに寄付した遺産は、主に発展途上国における保健医療事業や水衛生事業などのために活用されます。困難な環境で暮らす人々への医療事業を支援したい場合は、ロシナンテスへの遺贈寄付が有力な選択肢となるでしょう。

子どもや教育に関係する遺贈寄付先の候補団体としては、以下の例が挙げられます。

  • 一般財団法人 あしなが育英会
  • 公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
  • 認定NPO法人 ワールド・ビジョン・ジャパン
  • 公益財団法人 日本ユニセフ協会
  • 認定NPO法人 国境なき子どもたち

一般財団法人 あしなが育英会は、病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたちや、障害があるために親が十分に働けない家庭の子どもたちなどを、奨学金、教育支援、心のケアなどによって支える民間非営利団体です。

あしなが育英会に寄付した遺産は、遺児の奨学金や心のケアの支援、東日本大震災遺児支援、アフリカ遺児の教育支援などに活用されます。

経済的にも精神的にも苦しい状況にいる子どもをサポートするために遺産を使いたい場合は、あしなが育英会への遺贈寄付を検討しましょう。

セーブ・ザ・チルドレンは、日本を含む約120カ国で子どもの権利を実現するための活動を行う国際NGOです。日本では公益社団法人として活動し、子どもを暴力や虐待から保護し、適切な教育を受けられるようにする支援などを行っています。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンに寄付した遺産は、日本を含む世界約120カ国での緊急人道支援、保健衛生の改善、教育、子どもの保護などに活用されます。

非道な行為から子どもを守り、教育の機会を確保するために遺産を使いたい場合は、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンへの遺贈寄付をご検討ください。

ワールド・ビジョンは、日本を含む約100カ国において、困難な状況で生きる子どもたちのために活動する国際NGOです。日本では認定NPO法人として活動しています。

ワールド・ビジョン・ジャパンに寄付した遺産は、世界の子どもたちの水衛生、教育、保健、栄養、生計向上に関する開発援助事業や、緊急援助、復興支援、防災問題の解決などのために活用されます。

すべての子どもたちが健やかに成長できる世界を実現するために遺産を使いたい場合は、ワールド・ビジョン・ジャパンへの遺贈寄付が有力な選択肢となるでしょう。

ユニセフは、日本を含む約190の国と地域において、最も支援の届きにくい子どもたちを最優先に支援する国連機関です。日本では公益財団法人として活動しています。

日本ユニセフ協会に寄付した遺産は、世界150以上の国と地域において予防接種の提供や栄養不良の改善、教育の質の向上、緊急事態下の子どもたちの保護などのために活用されます。

世界の中でも特に困難な状況にある子どもたちを支援するために遺産を使いたい場合は、日本ユニセフ協会への遺贈寄付をご検討ください。

認定NPO法人 国境なき子どもたちは、日本で設立された国際協力NGOです。貧困ゆえに十分な教育を受けられない子どものために、「国境を超えてすべての子どもに教育と友情が届く社会」を目指し、アジアと中東で教育支援を行っています。

国境なき子どもたちに寄付した遺産は、カンボジア、フィリピン、パキスタン、ヨルダン、バングラデシュ、パレスチナなどの子どもたちに教育機会を提供する活動などに活用されます。

これらの地域の子どもをサポートするために遺産を使いたい場合は、国境なき子どもたちへの寄付を検討するとよいでしょう。

自然や動物に関係する遺贈寄付先の候補団体としては、以下の例が挙げられます。

  • 公益財団法人 日本盲導犬協会
  • 公益社団法人 日本動物病院協会
  • 公益財団法人 日本自然保護協会
  • 公益社団法人 日本動物園水族館協会
  • 公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン

公益財団法人 日本盲導犬協会は、良質な盲導犬の育成などを行い、視覚障害者が安全に生活し、かつ社会参加できるようにサポートしている団体です。盲導犬と視覚障害への理解を広げる活動、引退した盲導犬のケア、訓練士の育成なども行っています。

日本盲導犬協会に寄付した遺産は、盲導犬の出産設備の維持管理、訓練費用、医療費、引退後のケア費用などに活用されます。

視覚障害者が安心して暮らせるバリアフリー社会を実現するために遺産を使いたい場合は、日本盲導犬協会への遺贈寄付を検討しましょう。

公益社団法人 日本動物病院協会は、人と動物の共生社会の実現を目指し、主に動物医療の充実化を図るために活動する団体です。教育セミナーを広く提供して動物医療従事者の知識や技術を高めるとともに、動物を使った療法であるアニマルセラピーなどを通して動物病院の地域社会への貢献を推進しています。

日本動物病院協会に寄付した遺産は、動物病院および動物医療の充実に関する事業、または動物病院による地域社会への貢献を推進する事業に活用されます。

動物医療を発展させるために遺産を使いたい場合は、日本動物病院協会への遺贈寄付をご検討ください。

公益財団法人 日本自然保護協会は、日本の絶滅危惧種をはじめとする自然を守るための活動を行う団体です。生態系に大きく関わる自然の保護や、その守り手を増やす活動などを通じて、自然を生かした持続的な社会をめざしています。

日本自然保護協会に寄付した遺産は、沖縄県辺野古の埋め立てや東北で進む巨大防潮堤建設などの自然保護問題を解決するための事業や、森林生態系の協働保全管理などの活動費として活用されます。

日本の自然を保護するために遺産を使いたい場合は、日本自然保護協会に対する遺贈寄付が有力な選択肢と言えます。

公益社団法人 日本動物園水族館協会は、希少動物の保護や調査研究などを行い、国内における動物園や水族館の発展を目的に活動する団体です。

日本動物園水族館協会に寄付した遺産は、日本各地の動物園や水族館と連携して、生物の保全活動や動物福祉活動のために活用されます。

日本における動物園や水族館を発展させるために遺産を使いたい場合は、日本動物園水族館協会への遺贈寄付をご検討ください。

世界自然保護基金は、現在100カ国以上で活動している国際的な環境保全団体です。日本では公益財団法人として活動しています。自治体や漁業者と連携しながら科学的調査を行い、その結果に基づいて自然を保全するなど、現実的かつ確かな成果を目指した活動を行っています。

世界自然保護基金ジャパンに寄付した遺産は、生物多様性の回復や脱炭素社会の実現など持続可能な社会の仕組みづくり、野生動物の絶滅を防ぐ活動、動物が野生に復帰するためのリハビリ費用などに活用されます。

幅広い地域の自然を保護するために遺産を使いたい場合は、世界自然保護基金ジャパンに対する遺贈寄付が有力な選択肢です。

遺贈寄付先は、特に以下の3つの観点から検討を行ったうえで選ぶのがよいでしょう。

  • 貢献したい地域や分野を考える
  • 希望する形で遺贈寄付ができるかどうか問い合わせる
  • 実際にイベントやボランティアなどに参加してみる

自分が築き上げた遺産は、自分が貢献したい分野や地域のために活用してもらうのが望ましいです。

たとえば、生まれ故郷や住んでいる地域に貢献したいなら、自治体に対して遺贈寄付をするのがよいでしょう。発展途上国の子どもを支援したいなら、海外で活動している子ども支援団体への遺贈寄付が有力な選択肢となります。

自分がどのような地域や分野に対して貢献したいのかをよく考えたうえで、その希望に沿った遺贈寄付先を選びましょう。

団体によっては、現金以外の遺贈寄付を受け付けていなかったり、そもそも遺贈寄付を一切受け付けていなかったりする場合もあります。

自分が希望するかたちで遺贈寄付ができるかどうか、遺言書を作成する前に寄付先候補の団体に問い合わせて確認しましょう。

遺贈寄付先候補の団体において、定期的または不定期に開催されるイベントやボランティアに参加すると、その団体についてより深く知ることができます。

理念や活動に共感できるかどうかを重視して遺贈寄付先を選びたい場合は、候補となる団体のイベントやボランティアに参加してみましょう。

【関連】遺贈寄付をするにはどんな手続きをするの? 流れに沿って解説

Q. 借金があるが遺贈寄付してもよい?

借金があっても、遺贈寄付は可能です。遺贈する財産をピンポイントで指定する「特定遺贈」を行えば、プラスの財産だけを寄付できます。

これに対して、遺贈する財産の割合を指定する「包括遺贈」を行うと、借金などの債務も引き継がせてしまううえに、遺贈を引き受ける受遺者は遺産分割協議への参加が必要となります。

遺贈寄付先の自治体や団体によっては、借金の有無にかかわらず包括遺贈を受けてもらえないことがあります。そのため、遺贈寄付は特定遺贈によって行うことが望ましいです。

包括遺贈をせざるを得ない事情がある場合は、事前に遺贈寄付先の自治体や団体へ相談してください。

Q. 自分が死んだあとに、ちゃんと遺産を寄付してもらえる?

遺言書によって遺言執行者を指定すると、自分が亡くなったあと、遺言執行者に遺産の寄付手続きを行ってもらえます。

遺言執行者は、未成年者または破産者でなければ誰でもなることができます(民法1009条)。ただし、遺言執行者の職務は複雑であるため、弁護士や司法書士などの専門家への依頼をお勧めします。

社会貢献のために遺産を活用してもらいたい場合は、自治体や非営利団体などに対する遺贈寄付を検討しましょう。遺言書を作成して遺贈寄付を行えば、なじみのある地域の発展や、理念に共感できる団体の活動に遺産を活用してもらえます。

団体への遺贈寄付を検討する場合は、活動内容を調べたり、実際にイベントやボランティアへ参加したりして、寄付先候補の団体について理解を深めるとよいでしょう。

遺贈寄付をする場合は、遺言書の作成が必要になります。適切な内容および形式で遺言書を作成し、かつ自分の死後に遺言書の内容を確実に実現してもらうためには、弁護士や司法書士への相談がお勧めです。

また、一定の要件を満たす寄付先に対する遺贈寄付は、相続税の課税対象外とされています。相続税のルールを踏まえた寄付先の検討にあたっては、税理士のアドバイスも役立つでしょう。

遺産を自治体や非営利団体などに寄付しようと考えている場合は、弁護士、司法書士または税理士などの専門家に相談ください。

(記事は2024年11月1日時点の情報に基づいています)

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