海外資産の相続 手続きは財産のある国の法律に従うことも

親が亡くなった後、その財産を誰が引き継ぐか。親も子も日本国籍があり日本に住んでいる前提で考えてみましょう。
日本の不動産や日本の金融機関の預金といった日本の相続財産は、遺言がなければ、法律で定められた法定相続人に引き継ぐ権利があります。そして、誰が何をいくらもらうのか、相続人が話し合い(遺産分割協議)で決めます。一方、亡くなった人の意思が示されている遺言があれば原則はそれに従い財産を引き継ぎます。

日本では、分け方が決まった後、不動産は法務局で相続登記をして名義変更をし、金融資産は各金融機関で所定の書類を記載し手続きをします。これらの手続きをして相続人に所有権を移すことで、相続人は受け取った財産の売却や資金を移動できるようになります。
では、海外の不動産の場合はどうでしょうか。実は財産の所在する国によって手続きが異なります。分け方については、基本的には日本の法律が適用され、遺言があれば原則は遺言に従い、あるいは、遺産分割協議により取得者を決めることになるでしょう。一方、名義変更等の手続きは財産の所在国の法律に従う場合があります。

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裁判所で相続手続きをする「プロベート」

例えば、ハワイにマンション一室を所有している場合、そのハワイのマンションはどのように相続するのでしょう。アメリカでは、遺言の有無にかかわらず、裁判所を通じて相続手続きを行います。その手続きをプロベート手続きといい、手続きが終了するまでは裁判所が財産を管理するため、相続人は財産の処分や引継ぎができません。また、手続きには数カ月から数年かかることがあり、弁護士費用も発生します。

プロベートを回避する「共同保有」や「信託」

このプロベート手続きを回避する方法もいくつかあります。その一つが、共同保有(Joint Tenancy)という保有形態を取ることです。例えばマンションを夫婦共同の資産とし、先に夫が亡くなった場合には、プロベート手続きをしなくても妻が自動的にその持ち分を承継できるという形態です。ただし、日本には共同保有(Joint Tenancy)という考え方はないため、夫のみがお金を出したにもかかわらず夫婦共同の資産にした場合、夫から妻への贈与の問題が発生しますので、気を付けておきたいところです。

また、プロベート手続きを回避することができる方法はこの他にもあり、例えば生前に次の所有者を決めておく信託という方法もあります。プロベート手続きの制度は、財産の引継ぎの際に、アメリカ以外にシンガポール、イギリス、オーストラリアなど多くの国で採用されています。海外に財産を所有している場合には、相続に関する手続きについて、現地の財産購入先や仲介業者、金融機関や弁護士などに確認しておくと良いでしょう。

海外資産の相続税はどう納付する?

財産を引き継ぐ手続きの他に、相続税についても考えなければいけません。海外の財産に日本の相続税はかかるのか、それは被相続人(亡くなった方)と相続人の国籍や住所によって取り扱いが異なります。
例えば、父も子も日本に住んでいて、父の財産の一部が海外にある場合、日本の相続税の対象は父の持っている全世界の財産になります。すなわち、日本の財産も海外の財産も合計し、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える分が日本の相続税の対象になります。

二重課税を調整する「外国税額控除」

このとき、日本の不動産は国税庁が公表している路線価や、固定資産税評価額に倍率を乗じてその評価額を計算することが多いですが、海外の不動産は売買価格や、実務に精通している鑑定士や取引業者が作成した意見書等の価額をもとに計算することになります。日本の相続税は、国内財産・海外財産にかかる分を合わせて、亡くなった方の住所地の税務署に申告・納税をします。
では、財産の所在国での相続税はどうでしょうか。それはやはり国によって取り扱いが異なります。例えば、アメリカでは遺産税(日本の相続税と類似する税金)があります。日本居住者は、アメリカからみて非居住者となりますが、その場合には、アメリカ国内の財産だけが課税の対象となり、日本でいうところの基礎控除にあたる控除が$60,000あります。
そして、海外でも日本でも二重で相続税がかかる場合、その二重課税部分については申告をする中で調整することができます。これを外国税額控除といい、海外の財産について海外で払った税金と、日本で払うべき相続税額のうち海外の財産にかかる部分のいずれか少ない金額を控除することができます。

まとめ 日本と現地での手続きが必要

海外の財産については日本だけでなく、その財産の所在国で財産を引き継ぐ手続きが必要になること、場合によってはその財産について日本でも海外でも相続税がかかることを念頭においておくと良いでしょう。お困りのことがあれば、弁護士や、国際相続に詳しい税理士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。

(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)