目次

  1. 1. 二重課税を回避する
  2. 2. 相続税の外国税額控除とは?
    1. 2-1. 制度の目的
    2. 2-2. 制度の概要
    3. 2-3. 外国税額控除を受けられる要件
    4. 2-4. 被相続人と相続人の外国での居住状況の要件
  3. 3. 相続税の外国税額控除の計算例
  4. 4. 相続税申告時の外国税額控除の手続き
    1. 4-1. 相続税申告書第8表の記載方法
    2. 4-2. 相続税申告書第1表への転記
  5. 5. 要件の確認を入念に

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相続の際、外国に相続財産を所有していると、日本での相続税に加えて、外国でも相続税が課されるケースがあります。 そうなると、外国にある財産に対して、外国の相続税と日本の相続税とを二重に納めなければなりません。

しかし、日本の相続税では「外国税額控除」という特例が設けられており、この二重課税を回避する制度が設けられています。今回は、相続税の外国税額控除について、計算例とともに解説していきます。

日本の相続税では、原則として日本国内にある財産だけでなく、外国にある財産にも課税されます。そして、国外に財産がある場合は、日本の相続税とともに、財産のある外国の相続税もかかる場合があります。このように、外国財産に対しては、日本と外国の双方において相続税が課される、いわゆる二重課税となる場合があります。

相続税の外国税額控除は、このような二重課税を回避するために設けられた制度です。

外国で相続税を納めた場合、その外国で納めた相続税額を上限として、日本の相続税から控除することができます。控除額は、次の(1)、(2)のいずれか少ない方の金額です。

(1)外国で支払った相続税額
(2)日本での相続税額×(外国にある相続財産額合計/相続人の相続財産額合計)

相続税の外国税額控除の適用を受けるには、次の(1)、(2)の両方を満たす必要があります。

(1)相続又は遺贈によって、日本国外の財産を取得した者
(2)日本国外の財産について、その外国で相続税が課された者

まとめると、相続税が課される外国において、その国にある財産を相続した者は外国税額控除を受けることができるということになります。

なお、後述するように、被相続人と相続人の外国での居住状況によっては、外国の財産に日本の相続税が課税されない場合があります。この場合は、相続税の二重払いが生じていないので、外国税額控除の適用はありません。

被相続人と相続人の両者が10年を超えて外国に住んでいる場合は、外国の財産には日本の相続税がかからないので、外国税額控除の適用はありません。それ以外の場合は、外国の財産にも日本の相続税がかかるので、外国税額控除の適用を受けることができます。

なお、日本国内にある相続財産については、被相続人と相続人の海外生活の有無・期間に関わらず、日本の相続税がかかります。

前述したとおり、外国税額控除の控除額は、次の(1)、(2)のいずれか少ない方の金額となります。

(1)外国で支払った相続税額
(2)日本での相続税額 ×(外国にある相続財産額合計/相続人の相続財産額合計)

では、外国税額控除の計算例を見ていきましょう。

【前提】
・対顧客電信売相場(TTS)=110円/ドル
・外国の相続税合計60万ドル=6,600万円
・子どもA相続分 国内財産3億円、外国財産3億円、日本の相続税1.2億円
・子どもB相続分 国内財産3億円、外国財産0円、日本の相続税8,000万円

外国で支払った相続税を日本円に換算する場合は、一般的に、外国で相続税を納めた日の対顧客電信売相場(TTS)を使います。対顧客電信売相場は、外貨を売るときの為替相場のことです。

子どもAは外国財産を相続しているので、外国税額控除を受けられます。一方、子どもBは外国財産を相続していないので、外国税額控除の適用はありません。

したがって、子どもAの外国税額控除のみ計算することになります。子どもAが外国税額控除で控除できる額は、次の(1)、(2)のいずれか少ない方の金額です。

(1)外国で支払った相続税額 = 6,600万円
(2)日本での相続税額×(外国にある相続財産額合計/相続人の相続財産額合計)
= 1.2億円×3億円/6億円=6,000万円

(2)の方が少ない金額のため、外国財産を相続する子どもAの外国税額控除の金額は6,000万円となり、日本の相続税額は、1.2億円-6,000万円=6,000万円となります。

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次に、外国税額控除の適用を受けるための必要な書類、記載方法について見ていきましょう。必要書類は以下となります。

・相続税申告書第8表(外国税額控除額・農地等納税猶予税額の計算書)
・外国で支払った相続税額を証する書類(外国の相続税申告書など)

外国税額控除額の計算書(金融庁のホームページより)
外国税額控除額の計算書(金融庁のホームページより)

(1)「外国で支払った相続税額(現地通貨)」や「国名」、「換算額」などを記入する。
(2)「日本での相続税額×(外国の相続財産額/相続人の相続財産額合計)」について該当欄に従い計算して記入する。

(1)と(2)の小さい方が外国税額控除の額となり「(8)控除額」欄に記入する。

上記で計算した第8表の「(8)控除額」を、第1表の「(17)外国税額控除額」欄に転記する。

今回は、外国税額控除について解説しました。

日本のほか、米国、イギリス、フランス、ドイツなどには相続税という制度があります。その一方で、相続税を廃止した国や、そもそも制度自体が存在しない国も少なくありません。

被相続人が、外国に住んでいた、外国で働いていたという場合には、外国財産の有無についてもしっかり把握しましょう。そして、その国に相続税という制度があるか、制度がある場合には、外国税額控除を受ける要件を満たしているかなどをしっかり確認することが必要です。手続きが「難しい」と感じた際には、一度、税理士に相談してみてください。

(記事は2020年4月1日時点の情報に基づいています)

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