目次

  1. 1. 相続登記の手続きにかかる期間はどのくらい?
    1. 1-1. 被相続人の所有不動産調査にかかる期間
    2. 1-2. 相続人調査にかかる期間
    3. 1-3. 遺言書の検認が必要な場合にかかる期間
    4. 1-4. 遺産分割の話し合いにかかる期間
    5. 1-5. 相続登記申請書の作成にかかる期間
    6. 1-6. 申請から登記完了までにかかる期間
  2. 2. 相続登記の手続きが長引いてしまうケース
    1. 2-1. 遺産分割協議がまとまらない
    2. 2-2. 連絡がとれない、とりにくい相続人がいる
    3. 2-3. 先祖代々登記がされていない
    4. 2-4. 相続人や相続不動産が多い
  3. 3. 相続登記の手続きにかかる日数を短縮するコツ
    1. 3-1. 遺産分割の話し合いを少しずつ進めておく
    2. 3-2. 相続人で協力し合って書類を集める
    3. 3-3. 司法書士に相談や依頼をする
  4. 4. 相続登記の手続きの期限は?
    1. 4-1. 3年以内に登記申請しなければ10万円以下の罰金
    2. 4-2. 2024年4月1日より前に相続した不動産も義務化の対象
  5. 5. まとめ|相続登記の日数を短縮したい場合は司法書士に依頼を

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相続登記の手続きにかかる期間は、相続人の数や相続人同士の関係性、不動産の数などによっても変わります。シンプルなケースでは1カ月かからないこともありますし、複雑なケースでは数カ月から1年以上かかる場合もあります。

相続登記手続きの流れとともに、それぞれに要する期間を細かく見ていきます。

まずは被相続人(以下、亡くなった人)が所有していた不動産を漏れなく調査する必要があります。自宅などに保管されている権利証を確認するほか、市区町村役場から毎年送付される固定資産納税通知書を見れば、おおよその所有不動産を把握できます。

しかし、不動産には、たとえば自宅周辺の公衆用道路のように、課税されないものがあります。こうした非課税の不動産を所有している場合は固定資産納税通知書には記載されていないため、同通知書だけでは把握できず、見落とすケースがあります。

漏れなく把握するためには、固定資産納税通知書の確認と併せて「名寄帳(なよせちょう)」を請求する方法があります。名寄帳とは、市区町村が作成している固定資産税台帳を所有者別にまとめたものです。ある人の所有不動産を知りたい場合に、市区町村ごとに請求することで、その人がその市区町村に所有する不動産を一覧にして発行してもらえます。

亡くなった人の名寄帳を請求する場合は、名義人と請求者の相続関係を証明する戸籍謄本などの提示が必要です。

所有不動産を漏れなく調査するには、おおよそ1週間〜2週間かかる場合があります。なお、2026年(令和8年)2月2日より、法務局で全国に所有する不動産を一覧で証明してもらえる「所有不動産記録証明制度(仮称)」がスタートする予定です。この制度を利用することで、不動産の調査にかかる期間の短縮が期待できます。

【関連】所有不動産記録証明制度とは【2026年2月施行】 制度の概要や注意点を解説

法務局に相続登記を申請する際には、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本、そして各相続人の現在の戸籍謄本を提出する必要があります。相続人となるべき人を確定し、相続手続きが適切に行われていることを証明するためです。

戸籍謄本などの収集にかかる期間は相続関係によってさまざまですが、相続人が配偶者と子どものみである場合は、郵送で取り寄せても2週間〜3週間で完了するケースが大半です。

しかし、子どもがおらず両親も亡くなっており、兄弟姉妹が相続人になるケースや、相続人であった人物がさらに亡くなっているケースでは、1カ月〜2カ月かかることもあります。

なお、2024年(令和6年)3月1日より戸籍の広域交付制度がスタートしました。ほかの市区町村役場の戸籍謄本であっても、最寄りの市区町村役場で一括して取得できる制度です。この制度を利用することで相続人調査の期間を大幅に短縮できます。

遺言書が作成されており、それにもとづいて相続登記をする場合は、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本のすべてを準備する必要はなく、亡くなった人の死亡の記載がある戸籍謄本と、遺言により不動産を取得する人が遺言者の相続人であることを証明できる戸籍謄本のみをそろえることで足ります。

公正証書遺言、または法務局保管制度を利用した自筆証書遺言がある場合は、特別な手続きを経由せずに相続登記ができます。一方、法務局以外の場所で保管されていた通常の自筆証書遺言については、家庭裁判所での「検認手続き」を経なければ相続登記に使うことができません。

検認手続きは、遺言書の適格性や効力を審査するものではなく、遺言書の内容を確認し、偽造や変造を防止する目的で行われるものです。手順としては、必要書類を準備し、遺言者、つまり亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。そのあと各相続人に検認期日についての通知が送られ、指定された日に相続人が家庭裁判所に出席して検認手続きが行われます。

検認手続きを済ませたら、家庭裁判所から検認済証明書を発行してもらいます。自筆証書遺言に検認済証明書を添付し、その他の必要書類と一緒に法務局へ提出することで相続登記の申請ができます。

検認手続きの申立てから検認終了までは、数週間~1カ月程度かかると考えておくとよいでしょう。また、申立ての準備には遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等及び相続人の戸籍謄本をそろえる必要がありますので、そのぶんの期間も必要です。

遺言書がなく、法定相続分どおりに相続登記をしない場合は、遺産の分け方について話し合う遺産分割協議を行い、「遺産分割協議書」を作成します。これに相続人全員が署名または記名し、実印で捺印をしなければ相続登記に使用できません。

遺産分割協議がすぐにまとまり、相続人全員からの記名押印または署名押印がスムーズにいけば、一般的に1週間〜2週間で遺産分割協議書が完成します。一方で、遺産分割協議が難航するケースや、相続人が遠方に住んでいて郵送でのやり取りが必要になるケースでは、遺産分割協議書作成までに数カ月、長ければ数年かかる場合もあります。

せっかく遺産分割協議が整っても、遺産分割協議書に不備があると署名捺印のやり直しになりかねないため、司法書士に依頼するのが確実でしょう。

必要な書類がそろったら、登記申請書を作成します。法務局の公式サイトなどを参考にしたり、法務局の登記相談でアドバイスを受けたりしながら、申請書を作成できます。

作成にかかる期間は書類作成の得手不得手があり人によって異なりますので、一律にどの程度というものではなく、1日で完成する場合もあれば、1週間かかる場合もあります。申請後に不備があれば、原則として法務局に出向いて補正を行うことになります。法務局が遠方にある場合はかなりの負担になるため、不安がある場合は司法書士に相談しながらの進行も検討しましょう。

遺産分割協議をした場合における相続登記の一般的な必要書類は以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 亡くなった人の登記記録上の住所と最後の住所のつながりを証明する書類(住民票除票または戸籍の附票)
  • 不動産を取得する相続人の住民票、または戸籍の附票
  • 固定資産納税通知書、または不動産評価証明書(コピー可)

【関連】相続登記の必要書類を一覧表で紹介! 有効期限や取得方法、綴じ方も解説

法務局に登記申請をしてから登記が完了するまでは、平均すると1週間〜10日程度かかりますが、そのときに法務局が抱えている申請件数によっても変わります。完了予定日は法務局の窓口やインターネットで確認することができます。

登記が完了すると、登記識別情報通知および登記完了証が交付されます。登記完了後の登記事項証明書や登記簿謄本は、別途法務局に請求して発行してもらいます。窓口請求の場合、交付手数料は1通あたり600円です。

なお、登記識別情報通知は権利証に代わるものです。2005年の不動産登記法改正によって権利証は廃止され、登録識別情報通知が発行されることになりました。

相続登記の手続きが長引くのは、主に以下の4つのケースです。

遺言書がなく、遺産分割協議がまとまらない場合は、法定相続分どおりに登記する以外に相続登記をする方法はありません。

遺産分割について相続人の間に争いがある場合などは、話し合いがまとまるまでは遺産分割協議書が作成できず、相続登記をすることができません。

このような場合は、まずは弁護士に依頼して遺産分割をまとめるところから始めます。場合によっては家庭裁判所に申立てをして遺産分割調停を行う必要があります。

相続関係が複雑で、会ったこともない関係者が相続人に含まれているケースがあります。このような場合は、まず手紙を送るなどして手続きの協力を求めることになりますが、必ずしも連絡がとれるわけではなく、話し合いができるまでに時間がかかる場合もあります。

また、相続人のなかに行方不明の人がいる場合は、不在者財産管理人の選任申立てを裁判所に行う必要性が生じる可能性もあります。

自分の親名義の不動産について相続登記をする場合は、相続人同士の関係が良好であればさほど手続きに時間はかかりません。しかし、たとえば長期間放置されていた祖父名義の不動産について相続登記をしようとすると、戸籍謄本などの収集だけでも相当の時間がかかります。

その理由は、登記名義人の子ども世代にも相続が発生しており、子の相続人、つまり登記名義人の孫世代の調査が必要になるケースが多いためです。また、そうなるときわめて関係性の薄い人同士が相続人となるため、話し合いにたどり着くまでにかなりの時間を要します。

相続人が多い場合は書類の収集や連絡事項の伝達に時間がかかるため、全体的に手続きがスムーズに進みにくい状態となります。

また、法務局の管轄が異なる複数の不動産の相続登記をする必要がある場合は、一般的には一つの管轄の登記が完了したあと、順に返却された書類を次の管轄の申請に添付することになります。そのため、相続登記の対象となる不動産がいくつもの管轄にまたがる場合は、そのぶん時間がかかります。

相続登記をするにはある程度の時間がかかります。手続きを少しでもスムーズに進めるためには、特に以下の3点に留意しましょう。

  • 遺産分割の話し合いを少しずつ進めておく
  • 相続人で協力し合って書類を集める
  • 司法書士に相談や依頼をする

遺産分割協議は、亡くなった人の遺産を相続人がどのように分けるかという話し合いであるため、遺産の全貌が明らかになっていないと話し合いができません。できるだけ早めに相続財産を調査し、話し合いを少しずつ進めておく必要があります。

相続人同士での話し合いがまとまっている一方、戸籍謄本などの書類を集めるのに時間がかかる場合は、協力が得られるのであれば各相続人が手分けして準備するとよいでしょう。また、戸籍の広域交付制度を利用すれば、直系の親族の戸籍謄本は最寄りの役所だけで取得できるため、この制度も活用してください。

司法書士には戸籍謄本などの職務上請求が法律で認められており、相続人同士の話し合いを除くすべての手続きを任せられます。日常業務として相続登記を行っている司法書士に依頼をすれば、全体的なスピードは自分で行うよりもかなり早くなるはずです。

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相続登記の義務化により、相続登記には「不動産の所有権を相続したことを知った日から3年」という期限が設けられました。また、期限内に相続登記をしなければペナルティーが科せられることになりました。

相続登記義務化に関する規定のなかで、相続登記の期限について以下のように定められています。

  • 相続(遺言を含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない
  • 遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならない

これらの規定に違反した場合は、10万円以下の過料の対象となります。

相続登記がすぐにできない場合の対応策として、自分が相続人であることを申告し、ひとまずその旨を登記しておくことでペナルティーの対象から外れる「相続人申告登記」の制度も用意されています。

【関連】相続登記の義務化とは【4月開始】 罰則から過去の相続分の扱いまで解説

相続登記の義務化がスタートしたのは2024年4月1日ですが、それ以前に亡くなった人の名義である不動産も義務化の対象となります。その場合は、「2024年4月1日」「不動産を相続したことを知った日」のいずれか遅いほうが起算点となり、その日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

相続登記の手続きは、複雑ではないケースでは自分で準備して申請しても、さほど時間をかけずに済ませることができます。しかし、申請に必要な書類は数多くありますし、慣れていないためいろいろ調べたり、問い合わせに時間を要したりしてなかなか進まないケースもあります。

また、内容や相続人の関係性などが複雑な場合には、相続登記の申請をする以前にさまざまな調査や手続きが必要になるため、さらに多くの時間と労力を要することになります。相続登記にかかるストレスを軽減するには、司法書士に依頼するのがお勧めです。

司法書士はさまざまなケースに対応している相続登記の専門家であり、複雑なケースでもスムーズに進めてもらえます。相続登記の手続きに不安があれば、司法書士への相談を検討してみてください。

(記事は2024年9月1日時点の情報に基づいています)

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