目次

  1. 1. 成年後見制度とは
  2. 2. 成年後見について相談できる主な専門職
  3. 3. 成年後見の無料相談先一覧
    1. 3-1. 【お勧め】成年後見に強い弁護士や司法書士
    2. 3-2. 司法書士会や公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート
    3. 3-3. 弁護士会の相談窓口
    4. 3-4. 法テラス(日本司法支援センター)
    5. 3-5. 権利擁護センターぱあとなあ(社会福祉士会)
    6. 3-6. 全国社会福祉協議会の権利擁護支援窓口
    7. 3-7. 公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター
    8. 3-8. 自治体の相談窓口
  4. 4. 成年後見を無料相談する際の注意点
    1. 4-1. 時間が限られる
    2. 4-2. 個別のアドバイスは受けにくい
    3. 4-3. 依頼した場合は報酬がかかる
  5. 5. 成年後見の無料相談に関してよくある質問
  6. 6. まとめ|本格的な相談は司法書士などの専門家に

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「成年後見制度」は、認知症などで精神的障害がある人(以下、本人)の権利を保護するための制度です。

家庭裁判所から選任された成年後見人は、本人の権利が守られるように財産管理や身上監護の事務などを行います。成年後見人には身近な家族や親族もなることができますが、実際の法定後見では家族や親族以外の第三者が成年後見人に選ばれるケースもあります。

成年後見制度を簡単に説明するとこのようになりますが、法律の専門職ではない場合、成年後見制度をしっかりと理解するのはなかなか難しいと言えるでしょう。

ただし、超高齢社会において、特に認知症の事例は増える傾向にあります。認知症は成年後見等の開始原因の約6割を超えており、高齢化のさらに進む社会においては成年後見制度の利用を検討しなければならない状況が増加していくと想定されます。

【関連】成年後見制度とは 対象となる人や利用する手続きの流れなどを解説

成年後見について相談できる専門職としては、弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士が挙げられます。

ただし、上記に挙げた専門職であっても、それぞれ法律上の制限で各専門職のできること、またはできないことがあります。さらには、成年後見業務を取り扱ったことがあるかどうか、あるいは成年後見の何について相談するかなどにより、相談先として適しているかどうかも変わってくるはずです。

【各専門職が成年後見についてできること】
業務/専門職名 弁護士 司法書士 社会福祉士 行政書士
必要書類の収集 × ×
必要書類の作成 × ×
申立て手続き △(代行は可) × ×
成年後見人への就任

まず、どのような相談内容であったとしても、実際に成年後見の業務を行った経験のある専門家であれば、ひと通り成年後見について知っていると思われるので相談先の候補とするとよいでしょう。

参考までに、最高裁判所事務総局家庭局が公表している「成年後見関係事件の概況(令和5年1月~12月)」によると、成年後見人等に選任されている専門職の割合として割合の高い順は以下のとおりです。

成年後見人等に選任されている専門職の割合

  • 司法書士:35.9%
  • 弁護士:26.8%
  • 社会福祉士:18.4%
  • 行政書士:4.6%

成年後見制度の利用の検討段階においては、どの専門職でも相談は可能ですが、実際に成年後見等開始の申立てをしたい場合には、弁護士か司法書士の選択肢となります。というのも、社会福祉士と行政書士は、成年後見開始等の申立ての代理、または申立書の作成のいずれもできないためです。

成年後見人等への就任を依頼したい際の相談先はどの専門職でもよい一方、本人が何らかの法的トラブルを抱えている場合は、法的手続きをとることができる弁護士が適しています。ただし、実際に成年後見人等を選任するのは家庭裁判所であるため、あくまで候補者になってもらえるかどうかの相談になる点は認識しておきましょう。

詳しくは後述しますが、近くに相談内容に適した専門職がいない場合またはどこに相談したらよいかわからない場合には、事前に弁護士会、司法書士会、社会福祉協議会、行政書士会、または各々の団体が設立している成年後見専門の相談窓口に相談先を教えてもらう方法もあります。

成年後見の無料相談先としては、主に以下の8つが挙げられます。

  • 【お勧め】成年後見に強い弁護士や司法書士
  • 司法書士会や公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート
  • 弁護士会の相談窓口
  • 法テラス(日本司法支援センター)
  • 権利擁護センターぱあとなあ(社会福祉士会)
  • 全国社会福祉協議会の権利擁護支援窓口
  • 公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター
  • 自治体の相談窓口

※電話の場合、別途通話料がかかる場合があります

弁護士と司法書士は、これまで成年後見人等に選任された件数が多く、専門家のなかでも成年後見業務に関する経験値が高い専門家です。

ほかの専門家と異なり、成年後見等開始の申立ての代理または書類作成から、成年後見人等への就任の依頼も相談できるため、依頼を前提としている場合には弁護士や司法書士に相談するのががよいでしょう。

弁護士と司法書士のどちらに相談するかについては難しいところかもしれません。一つの基準として、本人が何らかの法的トラブルを抱えているような場合には、弁護士に相談するほうがよいと言えます。

弁護士にせよ司法書士にせよ、相談料については各事務所ごとに異なります。初回30分程度の相談であれば無料で対応してくれる事務所もあります。また、依頼することが前提であれば、相談料が無料となる場合もあります。

なお、事務所によっては、成年後見業務を行っていない場合もあります。事前にホームページや電話などで確認することをお勧めします。

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成年後見に関する業務は、司法書士業務の一部であるため、日本司法書士会連合会の傘下であり、すべての司法書士が加入している各地域の司法書士会が実施する無料相談会においても、成年後見に関する相談ができます。

司法書士会は全国に50の司法書士会に分かれており、それぞれの会で無料相談会を実施しています。

また、司法書士会とは別に、成年後見業務に特化した公益財団法人成年後見センター・リーガルサポート(以下、リーガルサポート)という団体があります。司法書士会と同様に全国に50支部あり、それぞれの支部で無料相談業務を行っています。

支部ごとに無料で電話相談または相談会を実施しています。ただし、出張相談や個別具体的な相談となると有料となる場合があります。

詳しくは、以下のリンクを参考に、相談者か本人が住む都道府県の司法書士会やリーガルサポートにお問い合わせください。

なお、成年後見業務を行っている司法書士のすべてがリーガルサポートの正会員とは限りませんが、リーガルサポートに加入していない司法書士であっても、成年後見業務に詳しい場合もあります。

一方、リーガルサポートに加入している司法書士が成年後見人等に就任した場合、家庭裁判所のほかに、リーガルサポートへの業務報告も義務づけられています。つまり、二重のチェックが入るため、本人や家族、または親族にとっては大きな安心材料となるでしょう。

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弁護士が加入する弁護士会にも相談窓口があります。

たとえば、東京都では東京弁護士会が高齢者・障がい者総合支援センター(オアシス)、第一東京弁護士会が成年後見センター「しんらい」、第二東京弁護士会が高齢者・障がい者総合支援センター「ゆとり~な」という法律相談センターを設けています。

主に高齢者や障害者、その家族に向けた窓口で、初めの電話相談については無料としているケースもあるようですが、その後で案内されることになる面談での相談は有料となります。詳しくは、各弁護士会にお問い合わせください。

法テラスは正式名称を「日本司法支援センター」と言い、国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」です。

法テラスでも、以下の連絡先から成年後見に関する相談をすることができます。

法テラス
サポートダイヤル:0570-078374(ナビダイヤル)、03-6745-5600
※平日9時から21時、土曜日9時から17時(祝日、年末年始を除く)

メールでのお問い合わせ

法テラスが展開しているのは、専門オペレーターが問い合わせ内容に応じて、法制度や相談機関、または団体などを紹介するサービスです。利用料は無料ですが、オペレーターは個別の法律相談や法的判断を行うことはできないため、電話による個別法律相談を希望している場合には向いていません。

法テラスでは「民事法律扶助制度」を使った無料法律相談も利用できます。この制度は経済的に余裕のない人のために設けられたもので、面談でも電話でも1回あたり30分程度、無料で法律相談を受けることができます。サポートダイヤルと異なり、法テラスと契約している弁護士が相談対応にあたってくれます。

ただし、この無料法律相談については、次のような条件があります。

  • 資力要件を満たすこと(一定の収入がなく、かつ一定の資産がないこと)
  • 同一案件につき、最大3回まで
  • 1回あたり30分
  • 相談先が法テラスと契約している弁護士であること(司法書士に相談する場合は使用不可)

なお、法テラスでは資力要件などの利用条件を満たせば弁護士や司法書士の申立書作成費用と実費を立て替えてくれますので、今手持ちのお金が十分にないという場合でも専門家に相談することができます(立て替えられたぶんのお金は分割で法テラスへ返済していくことになります)。利用条件は、上記の無料法律相談と同じです。無料法律相談と異なり、法律相談をはじめ訴訟や調停の費用、専門家への着手金や報酬などの立て替えについては、司法書士に依頼する場合も利用できます。

【関連】法テラスとは? 無料相談の条件 相続について相談できること

権利擁護センターぱあとなあは、社会福祉士の職能団体である公益社団法人日本社会福祉士会の成年後見に関する窓口の名称です。

社会福祉士は、法律上「福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者または医師そのほかの保健医療サービスを提供する者そのほかの関係者との連絡及び調整そのほかの援助を行うことを業とする者」と定義されており、福祉領域に関する専門職です。

日本社会福祉会は、都道府県ごとに会を設置しており、それぞれ独自に無料で電話相談を実施しています。相談できる回数の制限や面談での相談は有料となるなど、各会で利用条件が異なるため、お近くの社会福祉会にお問い合わせください。

なお、社会福祉士ができるのは、成年後見制度の利用に関する相談のみであり、申し立てに関する手続き支援はできません。

全国社会福祉協議会を中央組織とする社会福祉協議会(以下、社協)は、各地の福祉事業と福祉活動を発展させたり活性化したりすることを目的に、社会福祉に関するさまざまな事業や活動を行っており、日本全国の都道府県や市区町村に設置されています。権利擁護センター、成年後見支援センター、あんしんサポートセンターなどの名称で窓口を用意しています。

成年後見に関する相談にも対応しており、相談にあたるのは社会福祉士の場合もあれば、社協から委託を受けた弁護士や司法書士の場合もあります。

成年後見制度を利用するための手続きや申立に関するアドバイスを行うことはできますが、成年後見開始の申立書作成自体はできません。

公益社団法人コスモス成年後見サポートセンター(以下、コスモス)は、成年後見業務を行う行政書士が設立した団体です。司法書士によるリーガルサポートと似た位置づけにあると言えるでしょう。

コスモスは、各都道府県に支部を設置しており、全国共通のフリーダイヤル(0120-874-780)または各支部で相談を行っています。

なお、行政書士は、法律上、裁判所へ提出する成年後見等開始の申立書作成ができず、またその相談に応じることもできません。

各自治体が主催している相談会や相談窓口においても、成年後見に関する相談ができる場合があります。自治体の主催なので相談には無料で対応してもらえますが、一般的に以下の点にご留意ください。

  • 相談員が必ずしも専門職とは限らない
  • 自治体からの要請により各専門職団体が相談会を行っている場合がある
  • 相談時間の制約がある
  • 成年後見に関する入口の相談しかできない
  • 書類作成などはしてくれない
  • 成年後見人の候補者にはなってくれない

自治体ごとに相談できる内容や相談日時などは異なります。詳しくは各自治体のホームページなどで調べてから相談するることをお勧めします。

成年後見を無料相談する際は、以下の3点に注意する必要があります。

  • 時間が限られる
  • 個別のアドバイスは受けにくい
  • 依頼した場合は報酬がかかる

成年後見に関する無料相談の場合、どこも「1回あたり30分」などのように時間が限られているため、あらかじめ質問したいポイントを絞って相談に臨むほうがよいでしょう。

成年後見制度は、いったん利用すると、多くのケースでは本人が亡くなるまで続きます。このように成年後見制度は本人のその後の人生に大きな影響を及ぼしますが、相談時の状況だけで生涯使う可能性の高い制度を利用するかどうかを判断するのは容易ではありません。

制度利用にあたっては、本人の心身の状況のほかに、財産や収支も調べます。また、成年後見人の候補者を立てるならば親族がよいのか専門職がよいのかを検討するために、親族などの関係者の状況も確認します。

このように、成年後見制度の利用については、さまざまな事情や資料などを検証したうえで、総合的に判断していくことになります。

無料相談では時間的な制限もありますが、相談時の内容だけで、個別具体的なことに対して確定的な回答は受けづらい傾向にあります。

実際に成年後見制度を利用することを決めたうえで、その申立書作成を弁護士または司法書士に依頼した場合は費用がかかります。

司法書士に申立書類作成を依頼した場合に関する費用の概略は以下のとおりです。

【申立書作成】
司法書士報酬:10万円前後
実費:約1万円

※報酬については、事務所ごとに異なるため、ご留意ください。
※鑑定が必要な場合は、10万円程度が追加で必要となります。
※実費は申立てに必要な資料を、相談者がすべて準備した場合の金額のイメージです。

【選任された成年後見人等が報酬付与の申立てをする場合】
年額:24~72万円

※通常は、年に1回、定期報告とともに報酬付与の申立てを行います。
※上記のほか、遺産分割協議などを代理した場合には付加報酬が加算される場合があります。
※成年後見人等のほかに、成年後見等監督人が選任されている場合には、監督人にも報酬が発生します。

なお、成年後見人等の報酬については、家庭裁判所が決定します。成年後見人等が自己の判断で報酬額を決めることはありません。

Q. 成年後見人にかかる費用は無料ですか?

この記事では無料相談できる窓口を中心に紹介してきましたが、専門家の多くの事務所は相談料を有料としています。また、実際に成年後見制度を利用するとなると、さまざまな費用がかかります。

 申立書作成を弁護士や司法書士に依頼した場合には、報酬がかかります。そのほか、実費として申立書に添付するための資料を収集する費用、印紙代や郵便切手代などがかかります。

 制度を利用し始めたあと、成年後見人等が報酬付与の申立てをした場合には、通常、毎年報酬を支払う必要があります。この成年後見人等の報酬は、家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払われます。

Q. 生活保護を受けている場合でも成年後見の制度を利用できますか?

生活保護を受けているなど資力が乏しい人向けに、次のような制度があります。

 【法テラスの「民事法律扶助制度」】
申立人の月収と保有資産が一定額以下など所定の要件を満たしている場合、成年後見等開始の申立書作成にかかる弁護士または司法書士の報酬などを、法テラスが立替払いしてくれる制度があります。この制度は無料ではありませんので、法テラスが立て替えて支払った報酬などを、後日、分割で償還しなければなりません。

 しかし、生活保護を受給している場合には、援助事件終結後、被援助者である申立人の免除申請した時点の状況などによっては、償還免除されるケースがあります。

 なお、法テラスが利用できるのは、法テラスと契約している弁護士または司法書士に限られますので、ご注意ください。

 【各自治体の成年後見支援事業】
生活保護を受けていたり、活用できる資産や貯蓄などが乏しかったりと、助成を受けなければ成年後見制度の利用が困難な状況にある場合は、各自治体から一部費用の助成を受けることができます。

法テラスとの違いは、以下の2点です。

  • 返還義務がない
  • 申立段階に加え、成年後見人等の報酬にも助成がある

もっとも、この制度ですべての費用について助成を受けられるわけではありません。

申立書作成においては、助成を受けられるのは実費部分のみで、弁護士や司法書士の報酬については助成を受けられません。また、申立て後に助成決定となるため、申立時には自身で費用を負担しなければなりません。

成年後見人等の報酬についても、助成を受けられる金額は全部ではなく一部となります。

Q. 成年後見人への苦情はどこに相談すればいいですか?

一言に「苦情」といってもさまざまです。

 何に対しての苦情なのかによって相談先も異なりますが、ここでは「成年後見人が不正をしている可能性がある場合、またはきちんと成年後見人として事務を行っていない場合」に限定します。

 代表例としては、成年後見人が、財産管理や身上監護などを行ってもらっている本人の財産を使い込んでしまう場合が挙げられるでしょう。このような場合には、以下の相談先が考えられます。

 【成年後見等監督人がいる場合】
まずは、成年後見等監督人(以下、監督人)に相談しましょう。監督人は、家庭裁判所と成年後見人等の間で、成年後見人の事務を監督する役割を担っています。

 監督人が苦情が適正なものと認めた場合には、成年後見人等に対して、面談や資料の提出を求めるなど調査を行い、必要な対処を行います。

 もし、成年後見人等に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、監督人は家庭裁判所に対して成年後見人の解任請求を行うことになります。

 【監督人がいない場合】
ケースによっても異なりますが、家庭裁判所に加え、成年後見人等が専門家の場合はその専門家が所属している団体が相談先として考えられます。

 なお、成年後見制度は、成年後見人等である「本人」の権利を擁護する制度です。親族の都合による苦情は、ここで言う苦情に含まれませんのでご留意ください。

成年後見制度は、専門家以外の人にとってはわかりづらい制度となっているのが実情であり、制度の内容を理解するだけでも骨が折れると思います。成年後見制度の利用を検討するとなると、きちんと調査をして総合的に検討していく作業が必要となります。

時間的な制限のある無料相談では、個別具体的な相談は困難と言わざるを得ません。あるいは、有料相談と無料相談の区別をつけるために、相談対応や回答内容を制限している場合もあります。相談者目線で考えるならば、無料相談を問題解決ではなく制度利用を検討するための入口として、または問題解決までの筋道を立てる程度の感覚で利用し、本格的な相談は弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをお勧めします。

(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)

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