弁護士費用が払えない! お金がない人が頼める弁護士の探し方、分割払いなど対処法を解説
法的なトラブルや悩みは、弁護士に相談・依頼することで解決を図ることができます。しかし、弁護士費用は決して安くはないため、「収入や貯金がなくて、弁護士費用が払えない」と不安を感じて相談をためらっている方も多いかもしれません。弁護士費用が払えない場合に利用できる、分割払いや立替制度を紹介します。
法的なトラブルや悩みは、弁護士に相談・依頼することで解決を図ることができます。しかし、弁護士費用は決して安くはないため、「収入や貯金がなくて、弁護士費用が払えない」と不安を感じて相談をためらっている方も多いかもしれません。弁護士費用が払えない場合に利用できる、分割払いや立替制度を紹介します。
目次
弁護士費用が払えなくても、次のような制度を利用できるため、依頼をあきらめる必要はありません。
法テラス(日本司法支援センター)には「民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)」という制度があり、収入や資産が一定のラインを下回る人は、3回まで無料で弁護士に相談できます。相談後に依頼をする場合の弁護士費用も、法テラスに一度立て替えてもらえます。
立て替えてもらった費用は最終的に分割払いで返還していくことになりますが、一般の弁護士事務所で依頼するより、以下のように大幅に費用が安くなるのが特徴です。
【一般的な弁護士費用の相場】
法テラスを利用しない一般的な依頼では、旧日弁連の基準によると、経済的利益(依頼者の方が相続するであろう遺産の額)が300万円以下であれば8%、300万円超から3000万円以下であれば5%+9万円、3000万円超から3億円以下であれば3%+69万円、3億円超であれば2%+369万円(いずれも税別)が着手金の目安となります。
報酬金は、300万円以下の場合16%、300万円超から3000万円以下であれば10%+18万円、3000万円超から3億円以下であれば6%+138万円、3億円超であれば4%+738万円(いずれも税別)となります。
経済的利益の額によりますが、経済的利益が低額であれば報酬の割合が高くなり、高額になると報酬の割合は低くなります。
ただし、事務所によっては着手金は不要で完全成功報酬制を採用しているところもあります。この方式では、依頼者が実際に財産を取得できた場合にのみ報酬が発生するため、初期費用を抑えたい方に向いています。
【法テラスを利用する場合】
法テラスを利用できる方(各都道府県や自治体により異なる)は、全国で統一された基準に基づいて弁護士費用が計算されます。遺産分割調停などの家事事件では、1000万円以上の場合24万2000円程度であることが多いようです。報酬は、遺産額の6%~10%のようです。
これは標準的な案件を想定した金額であり、相続人の人数や財産の内容、不動産の評価争いがある場合などは増減します。
なお、収入や資産の要件については、家族の人数や住んでいる地域や住宅ローン・家賃の負担の有無によって基準が異なります。
たとえば4人家族の場合、手取り月収額の基準は、東京や大阪などの大都市では32万円8900円以下、そのほかの地域では29万9000円以下です。資産は300万円以下であることが条件です。
詳細は法テラスのWebサイト に記載されているため参照してください。
刑事事件の被疑者となった場合、「示談するため」「不起訴になるため」「刑を軽くするため」などの理由で弁護士が必要となります。
取り調べの際に「国選弁護人か、私選弁護人どちらか」を確認されますが、国選弁護人を選べば、無料で弁護士のサポートを受けることができます。この「国選弁護人制度」も国からの求めで、法テラスが実施しています。
国選弁護人制度は、無料である代わりに、担当弁護士を選ぶことはできません。
日弁連(日本弁護士連合会)も法律援助を行っています。法テラスで実施している「民事法律扶助」や「国選弁護人制度」でカバーできていない手続きを対象として、人権救済の観点から行われている援助です。
主に、以下の業務を無料で請け負います。
実施自体は法テラスに委託されているため、申し込みは法テラスに行います。
特殊なケースになりますが、弁護士保険に加入しておけば、いざというときに弁護士への相談や依頼が無料でできます。弁護士保険とは、生命保険などと同じく、月額の保険料を払うことで、いざというときに弁護士にかかる費用を補償してもらえるものです。
加入前におきた事案に関しては保険が効かないため、事前に加入しておく必要があります。補償が始まるのは、初回の保険料支払いの翌月から翌々月であることが多いため、「今後トラブルになるかもしれない」などと考えている人は、早めに加入する必要があるでしょう。
なお、単体の保険商品としての弁護士保険もありますが、自動車保険や火災保険などに特約として付いている場合があります。自動車保険の弁護士特約は交通事故のときのみに使えることが多いです。保険の約款を確認してみましょう。
弁護士の着手金が払えないために、相談をためらう人もいるでしょう。弁護士費用は自由化されているため、事務所によって相談料や報酬は変わります。費用を抑えるためのポイントを紹介します。
初回の相談料や着手金が無料の事務所を選べば、初期費用を抑えて弁護士に依頼できます。初期費用がかからなければ、依頼によって得られる利益の中から弁護士費用を払えばよいので、費用への不安は解消されるでしょう。ただし、着手金が無料の事務所は、成功報酬など依頼完了後にかかる費用が多めに設定されていることもありますので注意しましょう。
もちろん、依頼をすることで得られる利益から弁護士費用を捻出することができそうか、見積もりをもらって慎重に判断する必要があります。弁護士が依頼通りに業務をこなし、無事問題を解決できたとしても、赤字になってしまえば意味がありません。
「完全成功報酬制」として、依頼者が得た経済的利益の一部を弁護士費用として支払うことができるところもあります。幅広く弁護士事務所を探してみましょう。
分割払いや後払いに対応している事務所に依頼するのも一つの手です。特に借金問題などでは、弁護士に依頼するためのまとまった費用を捻出するのが難しいですが、それを見越して事務所側も分割払いを設定していることが多いです。
たとえば、弁護士に自己破産を依頼して費用が計40万円かかったとします。手元にお金がない人でも月5万円の分割払いであれば支払いができる見込みは立ちやすくなるでしょう。
こうした支払い方法に対応しているか、相談の際に確認するとよいでしょう。
2004年から弁護士費用は自由化されています。弁護士費用が高い事務所があれば安い事務所もあります。よく考えず、最初に相談した事務所に依頼してしまうのではなく、複数の事務所から見積もりをもらいましょう。契約の内容によっては、最終的にかかる金額に数十万円以上の差がつくこともあります。
はじめに弁護士に相談や依頼をするとどんな費用がかかるのか確認しましょう。
まずは相談料です。その名の通り、弁護士に質問をしたり、アドバイスをもらったりするのにかかる費用です。電話や面談、ビデオ通話などの方法がメインとなります。初回相談無料の事務所も多いですが、有料相談の場合は「30分/5000~10000円(税別)」であることが多いです。
次に着手金です。着手金は弁護士に依頼をする際にかかる契約金のようなものです。一度払った着手金は、依頼が失敗に終わったり、途中で契約を解除することになったりしても戻ってこないので注意しましょう。着手金は、書類作成などであれば数万円程度で済みますが、調停や裁判など、裁判所を交えた手続きとなると、数十万円程度かかるのが一般的です。
成功報酬は、依頼に成功した後に支払う追加費用です。依頼をすることで得た経済的利益の一部(10~20%など)を支払うのが一般的です。着手金と成功報酬のバランスで弁護士費用は決まるので、自分の状況や希望に合った事務所を選ぶとよいでしょう。
例えば、「着手金は少なめ、成功報酬が高め」の事務所であれば、依頼が失敗に終わったときに損をするリスクを減らすことができます。一方で、「着手金は高め、成功報酬が少なめ」の事務所であれば、依頼が成功した際にかかる弁護士費用の総額を抑えることができます。
また、「着手金なし、完全成功報酬制」の事務所を選べば、依頼側はリスクなしで弁護士に依頼をすることができます。その代わり、完全成功報酬制の場合、事務所側も依頼を達成できそうかをシビアに見るため、成功の見込みが薄い場合、依頼を断られてしまう可能性があります。
その他、弁護士が業務を行うのにかかる実費などがかかります。
どんな費用がかかるかは、依頼の内容によっても変わりますので、相談時に問い合わせておくといいでしょう。
案件ごとにかかる弁護士費用の相場を紹介します。
離婚に関する相談で多いのは「離婚したい」または「浮気に対する慰謝料を請求したい」です。それぞれにかかる費用は、以下を目安にしてください。
離婚における経済的利益とは「離婚が成立し、財産分与をすることで得た利益」や「浮気相手や元配偶者から得た慰謝料」などが該当します。世帯にもよりますが、夫婦で築いた財産が多く、離婚時に数千万円~数億円などの高額な経済的利益を得た場合、弁護士費用もそれに合わせて高くなります。
相続の場合、すでに相続人間で遺産の分割方法で揉めているケースや、生前に遺言書の作成を希望するケースなど、様々な相談があります。相続に関する一般的な相談であれば、以下のような費用がかかります。
遺産分割協議にかかる弁護士費用は、獲得できた遺産の額(経済的利益)によって大きく変わります。例えば、獲得できた遺産の額が100万円の人と、1億円の人では、弁護士費用の額が変わるのが想像できるでしょう。遺産分割協議を弁護士に依頼した際にかかる成功報酬は、下記の表を参考にしてください。
刑事事件の場合、逮捕された依頼者のために、被害者との示談成立を目指したり、不起訴を目指したり、刑をなるべく軽くなるように弁護したり、などがよくある相談です。そういったケースでは、以下の費用がかかります。
だいたい50万円~100万円かかると考えておきましょう。刑事事件の弁護は緊急性が高いことも多いため、弁護士費用もやや高めになっています。
借金問題を解決したくて弁護士に依頼をする場合、任意整理や個人再生、自己破産といった債務整理手続きをすることになります。各手続きにかかる費用は以下を参考にしてください。
成功報酬として、減額できた借金額に対して10~20%程度の追加費用がかかる場合があります。
交通事故ですと、被害者が加害者に対して損害賠償金を請求しますが、その金額は示談で決めるのが一般的です。当事者同士の話し合いで金額が決まらない場合、弁護士に示談交渉を依頼することがあります。その際の費用は以下を参考にしてください。
示談で決着がつかなかった場合、裁判に移行することもありますが、その場合は事件が長期化しますし、弁護士費用も高くなります。
その他、よくある依頼にかかる弁護士費用は以下を参考にしてください。
弁護士に依頼することで得られる経済的利益は、依頼内容によって大きく変わります。また、それに伴う弁護士費用(成功報酬)のパーセンテージも変わります。中には成功報酬が発生しない事務所もありますので、正確な弁護士費用を知りたいのであれば、見積もりをもらう必要があるでしょう。
弁護士への相談をためらっている間に、トラブルが悪化してしまうことは少なくありません。問題がこじれると解決に必要な手続きも複雑になるため、初期段階で相談するよりも弁護士費用がよりかかる恐れがあります。トラブルが複雑化する前に相談すれば、結果的に費用を最小限に抑えられるため、早期の相談がおすすめです。
弁護士費用を払えない場合、以下のようなリスクが生じます。
着手金など前払いの費用が支払えない場合、弁護士が業務を開始してくれなかったり、依頼そのものがキャンセル扱いとなったりしてしまうでしょう。
一方、後払いや分割払いの途中で支払いが滞ると、弁護士との信頼関係が損なわれて辞任されたり、弁護士から支払いを求める裁判を起こされたりする可能性があります。最終的に給与や預金口座といった財産を差し押さえられるリスクもあります。
弁護士費用は、当事者同士の話し合い(示談)の場合、相手に請求することはできません。請求したとしても相手から拒否される可能性が高いでしょう。裁判(不法行為に基づく損害賠償請求)の場合、訴額の1割程度が弁護士費用として認められることがあります。裁判は、弁護士がいなくてもできるものなので、相手に対してそこまで高額な請求はできないとされています。
借金問題を解決するために弁護士を頼る人は、まとまったお金を持っておらず、弁護士費用を支払えない可能性が高いでしょう。それを見越して、多くの弁護士事務所では分割払いに対応しています。
弁護士に債務整理を依頼すると、債権者(貸主)に対して受任通知(弁護士が代理人となり、借金の整理を開始すること)が送られます。これ以降は取り立ての連絡も来ませんし、借金の支払いもストップさせることができます。
依頼者は、今まで借金返済に充てていたお金が浮きますので、そのお金を弁護士費用として積み立てます。必要な費用が貯まったところで弁護士が業務を開始する、という形を取っている事務所が多いです。
法テラスへ連絡し、支払いが困難な事情を相談してください。病気や失業などのやむを得ない理由があれば、返済の一時的な猶予が認められる場合があります。また、生活保護を受けているなど一定の要件を満たす場合は、返済の免除を申請することも可能です。放置せず、必ず担当窓口に相談しましょう。
弁護士費用が払えない場合、法テラスの民事法律扶助を利用したり、初回相談料や着手金が無料の事務所を利用したりしましょう。法テラスの場合、収入や資産が一定のラインを下回る方は、「弁護士への無料相談」や「弁護士費用の肩代わり」といったサービスを受けることができます。また、弁護士事務所ごとにかかってくる費用が異なりますので、複数の事務所に問い合わせをし、費用が安く抑えられる事務所や、分割払い・後払いに対応している事務所に依頼をするのも有効です。
(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)