相続の相談ができる公的機関一覧 ケース別おすすめ相談先や注意点
相続に関する相談について「誰に相談していいかわからない」「どこから手をつけていいかわからない」といった人は、市役所や裁判所、弁護士会などの公的機関を活用する手があります。それぞれの公的機関で相談できる内容や、メリット、デメリットについて解説します。
相続に関する相談について「誰に相談していいかわからない」「どこから手をつけていいかわからない」といった人は、市役所や裁判所、弁護士会などの公的機関を活用する手があります。それぞれの公的機関で相談できる内容や、メリット、デメリットについて解説します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
下記は、相続の相談ができる公的機関の一覧表です。
公的機関名 | 相談できること | メリット・デメリット | 相談方法 |
---|---|---|---|
市役所 区役所 |
相続に関する一般的な法律に関する内容 | 無料で気軽に弁護士や税理士などに相談できる 相続が得意な専門家が担当するとは限らない |
対面 |
国税局 税務署 |
相続税に関する相談 | 無料で個別的な内容も相談できる 節税に関するアドバイスはもらえない |
電話 対面 |
家庭裁判所 | 相続に関する申請や手続きの相談 | 無料で相談できる 法的なアドバイスはもらえない |
電話 対面 |
法務局 | 相続登記の必要書類や手続きに関する相談 | 無料で相談できる 法的なアドバイスはもらえない |
電話 対面 |
商工会議所 | 事業承継に関する経営者向けの相談 | 無料で相談できる 会員にならないと相談できない場合がある |
対面 |
法テラス | 相続に関する法制度などの情報 相談に適した窓口の紹介 |
無料で弁護士や司法書士に相談できる 収入や財産に一定の条件がある |
電話 対面 |
弁護士会 | 相続全般に関わる相談 | 弁護士が直接相談に乗ってくれる 必ずしも無料とは限らない |
電話 対面 |
司法書士会 | 相続や登記に関する法律の一般的な相談 | 司法書士が直接相談に乗ってくれる 個別具体的な相談はできない |
電話 対面 |
税理士会 | 相続税・贈与税に関する一般的な相談 | 税理士に直接無料で相談できる 具体的な計算などはしてもらえない |
電話 面談 |
行政書士会 | 遺言や相続に関する一般的な相談 | 行政書士に直接無料で相談できる 個別具体的な相談はできない |
電話 対面 |
公証人連合会 | 遺言公正証書の作成に関する相談 | 無料で相談できる 遺産分割の内容などは相談できない |
電話 メール |
予約が必要なケースも多いので、相談を検討する際は事前に、それぞれのホームページなどで確認して下さい。
各市町村にある役所では、在住・在勤の人向けの行政サービスとして、無料法律相談を受け付けています。一般的な相続に関する内容について、提携する弁護士や司法書士、税理士などが相談に乗ってくれます。法律相談、税務相談、相続登記相談と、内容ごとの相談会が開かれています。ただし、担当してくれた専門家が、相続の経験が豊富とは限らない点には注意が必要です。
無料で相談できますが、時間が1回30分程度と短いため、時間切れになる恐れがあります。また枠も限られているため、思うように予約が取れないこともあります。
なお、市役所・区役所で相談を受けられる専門家ごとの対応分野は以下の通りです。
国税庁や税務署では、相続税に関する基本的な考え方や知識について、質問・相談することができます。税の計算方法や、申告書の作成方法については教えてもらえますが、具体的な金額の計算や、節税方法などは相談できません。
また、税務職員の回答に従って申告した結果、そのアドバイスに誤りがあったために追徴課税を受けたとしても、税務署に責任を取ってもらえるわけではありません。
家庭裁判所を通じて行う相続関係の手続きの方法や流れ、必要書類などを相談できます。例えば相続放棄を自分で行う場合、必要書類を集めなければなりませんが、「どんな書類が必要か、どこで取得すればいいか」などを教えてもらえます。
一方、家庭裁判所では「遺産をどう分けるべきか」「この遺産分割協議書は適切か」などの具体的な法律相談はできません。あくまで、手続きに関する相談に限定されます。
法務局では、主に相続登記(相続した不動産の名義変更)の手続きに関する質問を受け付けています。実際に登記手続きを行う際には、不動産の所在地を管轄する法務局の本庁または出張所宛てに申請を行うことになります。
ただし、相続登記以外の相談には対応してもらえません。例えば、相続人同士の揉めごとや、適切な遺産の分け方についてのアドバイスはもらえません。
商工会議所では、経営者向けのサービスを色々と行っています。相続に関しては、事業承継の相談を無料ですることができます。「会社の後継者がいない」などでお困りの方は利用してみましょう。
会員でないと相談できないケースもあるので、事前に確認しましょう。
法テラスは、法律に関する総合案内所の役割を果たしています。相続に関して「誰に相談していいかわからない」「何から手をつけていいかわからない」といった人に対しても、適切な相談窓口を紹介してくれます。
民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)を利用すると、弁護士に無料で相談の上、依頼にかかる費用を法テラスに肩代わりしてもらえますが、対象者は収入や資産が一定のラインを下回る、経済的に困窮している人に限られます。
各都道府県にある弁護士会では、相続全般に関する相談ができます。各弁護士会によって異なりますが、電話での相談は無料、面談での相談は有料であるのが一般的です。
しかし、電話での無料相談は1回15~20分程度と短いため、深い内容は相談できず、一般的なアドバイスにとどまってしまう可能性があります。自分が聞きたい内容を絞り、端的に説明、質問する必要があるでしょう。
なお、相続人同士の紛争に関する相談や対応は弁護士にしかできない点は覚えておきましょう。
各都道府県の司法書士会では、相続に関する一般的な相談や、相続登記に関する相談が可能です。弁護士会と同じく一回の相談時間が短い点に注意しましょう。相続トラブルや相続税については対応してもらえません。
税理士会では、相続税や贈与税に関する一般的な内容について相談ができます。税金の申告手続きなどについて知りたい場合には税理士会を頼りましょう。各税理士会によって異なりますが、無料で電話相談ができることが多いです。
ただし、税金の具体的な計算や、節税方法など、個別の事情に応じた相談には対応してもらえない可能性が高いです。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る税理士を探す行政書士会には、主に相続に関わる書類作成に関する内容を相談できます。以下のような書類を作成したい方は相談してみましょう。
具体的な相談内容に応じて、実際に書類を作成してくれることはありません。あくまで作成に関するアドバイスをもらうにとどまります。
各行政書士会によって「電話のみ/電話・面談」「有料/無料」など条件が異なりますので事前に確認しましょう。
公証人連合会では、主に公正証書遺言の作成について相談ができます。自分の死後、相続人たちが揉めることのないよう、遺言を公正証書にしておきたい人におすすめです。
日本公証人連合会の公証人が無料で電話相談に乗ってくれます。公正証書作成に関する相談はできますが、遺産の分割方法や内容については相談できません。
公的機関を利用して相続の相談をする際の注意点を紹介します。
公的機関で相談できる時間は、1回30分程度に設定されていることが多いです。また、「同じ内容に関する相談は〇回まで」「年度内で1人が利用できるのは〇回まで」と相談回数にも制限がある可能性が高いです。
こういった制限があるのには「なるべく多くの人の相談を受けられるように」といった理由があります。
公的機関での相談は、役所が空いている時間などの関係で、平日日中のみ、さらに受付時間も短いことが多いので注意しましょう。予約が殺到した場合、抽選になったり、相談ができなかったりする可能性もあります。
公的機関での相談では、「弁護士の中でも、相続に詳しい人でお願いします」などと特定の人を指名できない可能性が高いです。担当になった専門家が、相続問題に注力していたり、実績がたくさんあるとは限らないことを覚えておきましょう。
公的機関で相談に乗ってくれた弁護士に、その場で直接依頼することはできません。相談した結果、正式に依頼したいと思った場合には、担当弁護士の所属事務所に自分で連絡をするか、別で依頼先を探す必要があります。一部の自治体では、相談に乗ってくれた担当者の連絡先を聞くことを禁止していることもあるので、注意が必要です。
公的機関での相談は、時間が限られていることもあり、また専門家にとっても結果への責任をとりづらいため、相談者それぞれの事情に応じた具体的なアドバイスをしづらい側面があります。そのため、一般的な回答をもらえれば十分な人に向いています。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す公的機関での相談を有意義なものにするために、相談者が事前にすべきことを紹介します。
相談時間は30分程度ですので、自分の悩みや質問したいことを事前にまとめておきましょう。簡潔にまとめて、自分が話す時間を短縮できれば、その分担当者から多くのアドバイスをもらうことができます。聞く質問をメモにまとめておけば、慌てずに済むためお勧めです。
相続相談の際、「誰が相続人なのか」「どんな遺産が、どれだけあるのか」がわからないと、専門家も回答がしにくくなります。わかる範囲で構わないので、家系図や財産目録、その他自分が必要だと思った資料をまとめ、持参するとよいでしょう。
自分用と相談相手用の2部を用意して臨むとよいでしょう。
公的機関での相談は相談時間や回数が限られていたり、一般的な回答がメインになってしまうため、問題を解決できない可能性があります。その場合の対処法を紹介します。
相続に強い専門家の事務所に相談にいきましょう。初回相談が無料の事務所も多いため活用しましょう。2回目以降の相談には費用はかかるものの、時間の制限なく、自分が納得するまでアドバイスをもらうことができます。
どの専門家に相談すればいいかわからない人は、まず、相続問題全般に対応できる弁護士事務所にいくとよいでしょう。
専門家に相談してアドバイスをもらうだけでは、問題が解決できない場合があります。そんな時には、正式に依頼するのがおすすめです。もちろん依頼には費用がかかりますが、相談者の事情や希望に合わせて問題を解決してくれます。
特に、遺産分割の話し合いがまとまらないような場合には、弁護士に交渉を依頼することで、相続人同士の対立が深刻化するのを防いでくれるでしょう。
市役所や税理士会、税務署などで相談することができますが、相談者ごとの具体的な相続税額の計算や、節税の方法などは教えてもらえません。あくまで、相続税や贈与税に関する一般的な内容に限られます。
市役所や弁護士会などで悩みを聞いてもらうことはできるかもしれませんが、それだけで問題を解決するのは難しいでしょう。相続人同士の争いやトラブルを解決するには、弁護士に正式に依頼して、 他の相続人に対して説明・交渉をしたり、場合によっては調停や裁判をしたりする必要があります。
信託銀行や証券会社も相続に力を入れており、無料相談に対応してくれるところも増えています。自分、もしくは故人のメイン銀行に問い合わせ、確認するとよいでしょう。
中には「相続まるごと代行サービス」といった有料サービスを提供する信託銀行もあります。その信託銀行と提携している弁護士や税理士が対応してくれます。ただし、自分で専門家事務所を探して依頼するケースよりも費用が割高になる恐れがあるので注意が必要です。
公的機関での相続についての相談は誰でも利用しやすいのが特徴です。
ただし、1回あたりの時間や回数に制限があり、相談者の事情に応じた具体的な回答をもらいにくいという側面もあります。公的機関での相談だけでは問題が解決できそうにない場合、専門家の事務所で直接相談・依頼を行いましょう。
相続会議では、相続に強い全国の弁護士・司法書士・税理士を検索することができます。初回相談を無料で受け付けているところも多いので活用するとよいでしょう。
(記事は2024年5月1日時点の情報に基づいています)
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