目次

  1. 1. 遺言書作成を司法書士に依頼するメリット
    1. 1-1. 登記手続きまでワンストップで依頼できる
    2. 1-2. 形式不備による遺言無効を防げる
    3. 1-3. 戸籍など必要書類の収集の手間が省ける
    4. 1-4. 公正証書遺言の手続きを一任できる
    5. 1-5. 自筆証書遺言書保管制度の利用を支援してもらえる
    6. 1-6. 弁護士と比べて、一般的に司法書士は報酬が安い
  2. 2. 遺言書作成の司法書士費用の目安
  3. 3. 司法書士への依頼から遺言書完成までの流れ
    1. 3-1. 自筆証書遺言を作成する手続きの流れ
    2. 3-2. 公正証書遺言を作成する手続きの流れ
  4. 4. 遺言書作成を依頼する司法書士を選ぶ際のポイント
    1. 4-1. 相続に関する経験が豊富
    2. 4-2. 隣接士業と連携している
  5. 5. まとめ

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不動産の遺贈や相続を内容とする遺言書は、法務局または地方法務局に提出する書類にあたるため、司法書士に依頼することができます。不動産に関する遺言を残した場合は、相続が発生したあとに登記が必要になります。その点、司法書士は不動産登記の専門家であるため、遺言作成だけでなく、その後の手続きについても安心して任せられるのが大きなメリットです。

遺言書作成を司法書士に依頼するメリットとしては、主に次の6点が挙げられます。

  • 登記手続きまでワンストップで依頼できる
  • 形式不備による遺言無効を防げる
  • 戸籍など必要書類の収集の手間が省ける
  • 公正証書遺言の手続きを一任できる
  • 自筆証書遺言書保管制度の利用を支援してもらえる
  • 弁護士と比べて、一般的に司法書士は報酬が安い

それぞれのメリットを詳しく確認していきます。

遺言による相続登記を行う場合、遺言書を登記申請書に添付します。遺言は自筆証書遺言、公正証書遺言などの形式がありますが、原則として、遺言者が死亡した場合であっても、相続人に遺言の存在が通知されることはありません。

その点、司法書士に相続登記を依頼することを前提に遺言作成を依頼し、相続人に司法書士の連絡先を伝えておけば、スムーズに相続登記を行える可能性が高いでしょう。

遺言には複数の形式がありますが、多くは「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書本文を自書して作成する遺言書です。紙とペンさえあれば作成できるのが大きなメリットです。

簡易に作成できるのが大きなメリットである一方、形式不備の場合は遺言が無効になるというデメリットがあります。私の経験でも、相続発生後に明らかに形式不備の遺言を見たことがあります。その場合に遺言を有効化する方法はありません。したがって、自筆証書遺言は経験のある専門家に相談しながら作成するほうが安心です。その点、司法書士は遺言の取り扱いに慣れているため、相談しやすい存在です。

不動産を含む遺言を作成する場合は、正確に内容を記載するために、「登記事項証明書」を取得したほうが良いでしょう。登記事項証明書には、土地や建物について、所有者、所在地、面積、地目、構造などが記載されています。

遺言作成にあたっては、目的の不動産を特定する必要があるため、登記事項証明書を準備しましょう。登記事項証明書は法務局で取得することが可能ですが、司法書士に遺言作成を依頼する場合は、不動産の所在地を伝えることで、証明書を代理取得してもらうことができます。

また、公正証書遺言を作成する場合は、戸籍謄本や住民票の取得が必要になることがあり、これらの取得も司法書士に依頼が可能です。

代表的な遺言の形式として、自筆証書遺言のほかに「公正証書遺言」があります。これは、公証人に作成してもらう遺言書です。公証人が関与して作成する遺言書のため、形式不備を防げるほか、保管してもらうことができるメリットがあります。

デメリットとしては、公証人に支払う手数料が発生するほか、証人を用意する必要があることが挙げられます。また、遺言を作成するにあたって、財産状況を示す書類や、戸籍などの提出を求められることがあります。

この点、公正証書遺言の作成手続きに司法書士が関与する場合は、書類の収集を依頼できるほか、証人になってもらうこともできます。また、司法書士は日常的に公証人とコミュニケーションをとっているため、全体の手続きもスムーズに進みやすいでしょう。

自筆証書遺言は、作成後に法務局で保管してもらえる制度があります。これを「自筆証書遺言書保管制度」と言い、2020年に始まった新しい制度です。

この制度のメリットは複数あるものの、最も大きいメリットは、遺言を公的機関で保管してもらうことができる点です。また、受付時には遺言の形式もチェックされるため、不備による無効を防ぐことができます。さらに、遺言者が指定した対象者への通知を希望した場合は、法務局が遺言者の死亡を確認した際に、遺言書が法務局で保管されている事実を通知します。

これらのメリットを総合すると、遺言が無効になる可能性は低く、遺言の存在を知らないままに相続手続きが進むことも少ないと言えるでしょう。なお、保管申請手数料は 3900 円と格安です。

この制度を利用するためには、法務局に保管申請を行う必要があります。司法書士に遺言作成を依頼した場合は、保管申請書の作成についても、依頼することが可能です。

遺言作成については、司法書士や弁護士に依頼することが可能です。司法書士に依頼した場合は、弁護士に比べると費用は安く収まることが多いでしょう。

ケースによるため一概には言えませんが、各事務所がホームページに公開している報酬相場を見ると、司法書士に自筆証書遺言の作成支援や、公正証書遺言の原案作成を依頼した場合は、報酬は5~10万円の範囲になる可能性が高いです。

弁護士に依頼した場合は、10万円以上かかる事務所が多いので、司法書士に依頼したほうが費用は安くなる可能性が高いです。

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ケースによるため、あくまで参考にはなりますが、自筆証書遺言の原案作成を依頼した場合は、4~6万円ほどの報酬が一般的だと思います。公正証書遺言の原案作成を依頼した場合は、5~8万円ほどで引き受ける司法書士が多いでしょう。

公正証書遺言については、証人を依頼するかどうかでも料金が変わるので、依頼内容を具体的に相談すれば、正確な費用を知ることができるでしょう。

司法書士に遺言書作成を依頼する際は、事務所を探すことから始めます。多くの司法書士はホームページで業務内容を公開しています。得意分野と不得意分野があるので、依頼内容に沿った事務所をピックアップすると良いでしょう。

依頼先が決まったら、電話やメールで事務所に問い合わせを行います。司法書士への依頼は、事前予約が一般的です。日程調整の連絡をする際に簡単な相談内容を伝えると、必要書類をその時点で教えてくれることもあります。何度も事務所に行く必要がなくなるので、負担が少なくなるでしょう。

自筆証書遺言は遺言者本人が自分で記入しなければなりません。司法書士には、遺言内容の原案作成や、形式チェックを依頼することが可能です。相談の際に遺言の目的や対象の不動産を伝えると、必要な資料を司法書士が収集し、原案を作成してもらえます。相談の前に、誰にどのような資産を渡すかを決めておくと、スムーズに手続きが行えるでしょう。

公正証書遺言は、公証人が作成します。公証役場で公証人に遺言内容を伝え、公証人が書面にまとめます。その際に、証人2人以上の立会が求められるため、司法書士に依頼した場合は、司法書士に手配を依頼することが可能です。

遺言の原案作成を司法書士に依頼し、書類の収集も依頼した場合は、遺言者が行うことは内容を司法書士に伝えることと、財産評価に関する一部書類を渡すことだけです。負担は少なく、公正証書遺言も作成しやすくなるでしょう。

司法書士によって得意分野、不得意分野があるため、依頼の前にホームページなどで業務内容を確認しましょう。

司法書士に遺言作成を依頼する場合は、相続手続きを積極的に行っている事務所を選ぶと良いでしょう。日常的に相続に関する業務を取り扱っている場合は、遺言に関する手続きについても慣れている可能性が高いです。

争いのない相続手続きは、預金解約などの一般的な手続きのほかは、不動産登記と相続税申告で終わることがほとんどです。

このうち、司法書士は不動産登記の代理は行えますが、相続税申告は税理士のみが行うことができます。私は司法書士と税理士の資格を保有していますが、両方の資格を保有しているケースはかなり珍しいため、相続税申告が見込まれる場合は、税理士と提携している司法書士を選ぶと良いでしょう。

また、紛争が顕在化していたり、予想されたりする場合については、弁護士への相談を検討することをお勧めします。

これまで述べてきたとおり、不動産の相続や遺贈を含む遺言書を作成する際には、遺言の手続きから登記手続きまでワンストップで依頼できる司法書士に相談するのが有力な選択肢となります。遺言作成の費用についても、司法書士に依頼した場合、弁護士に比べると安く収まるケースが多い点は魅力でしょう。

相続手続きを積極的に行っている司法書士も少なくありません。遺言書を作成する必要がある場合は、ぜひ一度司法書士に相談してみてください。

(記事は2023年4月1日時点の情報に基づいています)

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