遺産分割調停中にやってはいけないこと 有利に進めるために準備しておくべきこと
遺産分割調停は、すべての法定相続人が参加し、相続財産の分け方を決める裁判所の手続きのことです。この調停で有利な結論を得るためには、調停委員の心証を害するNG行為を理解しておくことが大切です。遺産分割調停中にやってはいけないこと、事前に準備すべきことを、弁護士が解説します。
遺産分割調停は、すべての法定相続人が参加し、相続財産の分け方を決める裁判所の手続きのことです。この調停で有利な結論を得るためには、調停委員の心証を害するNG行為を理解しておくことが大切です。遺産分割調停中にやってはいけないこと、事前に準備すべきことを、弁護士が解説します。
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遺産分割調停とは、相続人全員が参加する遺産分割協議で合意に至らなかった場合に行われるもので、遺産の分け方について、家庭裁判所の裁判官と調停委員(調停委員会)が相続人の話し合いを仲介し、合意をめざす手続きです。
調停では、原則的に2人の調停委員が当事者双方から交互に事情を聴き、必要に応じて資料を提出させるなどして事情を把握したうえで、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をしたりして、合意をめざした話し合いが進められます。調停は、おおむね1カ月~1カ月半の間隔で平日に行われ、1回あたりの時間はおおむね2時間程度です。
遺産分割調停は話し合いの手続きですので、相続人全員が合意しなければ調停は成立しません。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合は自動的に遺産分割審判と呼ばれる審判手続きに移行し、裁判官が事情を考慮して、遺産の分け方を決めることになります。その際、調停で相続人が主張した内容や提出した資料も考慮されます。
遺産分割調停を円滑かつ有利に進めるには、調停委員の共感を得ることが大切です。調停委員の共感が得られるような説得的な主張をすれば、調停委員に主張をしっかりと汲み取ってもらえ、相手方を説得してくれることも期待できるからです。
調停期日に無断で欠席してはいけません。出席したほかの相続人に迷惑をかけることになりますし、主張したいことがあっても主張できないまま調停が終了してしまうかもしれません。
そのため、出席できない場合は事前に裁判所に欠席する旨を伝えるべきです。仕事などの都合で将来的にも調停に出席できない場合は、弁護士に依頼して代わりに出席してもらうことも検討しましょう。
感情的な主張ばかりを繰り返すことも避けるべきです。調停委員は感情面もある程度汲み取ってくれますが、法律や裁判例から離れた感情的な主張ばかりでは冷静な話し合いはできないとして、早期に調停が不成立になってしまう可能性もあります。
調停は話し合いの場ですので、自分の主張ばかりを押し通そうとしてしまうと、調停の成立は遠ざかってしまいます。ほかの相続人の主張にも耳を傾け、譲歩できる部分があれば譲歩することも大切です。
自分に有利な結果を得ようとするあまり、調停委員に対して嘘をつく人もいますが、嘘をついてはいけません。あとで嘘が発覚した場合には、嘘ではないほかの主張の信用性も疑われかねません。
遺産分割調停を円滑に進めるために準備しておくべきことを解説します。
特別受益や寄与分などの主張に関連する事実関係を時系列に沿ってまとめておくと良いでしょう。たとえば、生前贈与の時期や金額、被相続人(亡くなった人)を介護していた期間や内容などです。
調停を申し立てる際、裁判所には「遺産目録」という遺産のリストとともに、その裏づけとなる預貯金の残高証明書や不動産全部事項証明書などを提出することになります。そのため、遺産分割の対象となる遺産については、金融機関や法務局などで資料をそろえつつ、リスト化しておきましょう。
調停では、法律や裁判例に基づいて話し合いが進められるため、これを無視して感情的に言いたいことを主張しても、調停委員や他の相続人の理解が得られずにうまくいきません。
調停を有利に進めるためには、法律や裁判例に基づいた主張をすることが大切です。そのため、自身やほかの相続人の主張が法律や裁判例に照らすとどのように考えられるか、調停に臨む前に弁護士に相談しておくと良いでしょう。
遺産分割調停を依頼できる専門家は弁護士だけです。弁護士に依頼するとどのようなことをやってもらえるのかを解説します。
弁護士は、専門的な知識や経験に基づいて、ご自身の主張を法律や裁判例に沿う形で書面にまとめてくれますし、主張の裏づけに必要な証拠集めもサポートしてくれます。また、相手方にどういった提案をすべきか、どこまで妥協すべきかなど、状況に応じて適切な助言を受けられます。
家庭裁判所に調停を申し立てるには、裁判所のホームページの「遺産分割調停」に記載されているとおり、申立書の作成や添付書類の収集が必要です。
一から申立書を作成したり、区役所や金融機関などで添付書類を集めたりするには、相当な労力や時間がかかります。まとまった時間がとれないと、申立てまでに何カ月もかかってしまうこともあるでしょう。弁護士に依頼することで、これらの準備を任せることができ、円滑に調停申立てをしてもらえます。
調停は平日に行われるため、仕事などで出席する時間がとれない方も少なくありません。また、調停に出席できても、緊張したり感情的になったりして、うまく主張を伝えられない方もいるでしょう。
弁護士に依頼すれば、調停期日には弁護士が一緒に出席し、調停委員とのやり取りをサポートしてくれます。また、自分は出席せずに、弁護士に代わりに出席してもらうことも可能です。
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遺産分割に強い弁護士を探す弁護士を探す裁判所が遺産分割の方法を決定する遺産分割審判は訴訟に近い手続きですので、法律的にきちんとした主張や立証が求められます。そのため、法律や裁判例に関する十分な知識がなければ、対応が困難です。
弁護士に依頼していれば、遺産分割調停から遺産分割審判に移行することになっても、そのまま対応を任せられます。ただし、審判に移行する際に追加で弁護士費用が発生することがありますので、注意してください。
弁護士に遺産分割調停を依頼する場合、一般的に、着手金や報酬金という費用体系で契約します。弁護士に依頼した時点で発生するのが着手金、調停や審判で遺産分割が終了した時点で成果に応じて発生するのが報酬金です。
いずれも、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準を参考に、経済的利益(取得する遺産の金額)に応じて算定する事務所が多いでしょう。他方、同基準に従うと、弁護士費用が高額になることも多いため、着手金を固定金額にするなど異なる費用体系を採用する弁護士もいます。具体的な費用は弁護士によって異なりますので、事前に見積りを取得しておくことをお勧めします。
遺産分割調停を有利に進めるためには、事前の準備や心構えが大切です。漫然と手続きを進め、不利な状況になってしまってから覆すことは大変です。遺産分割協議がまとまらないと感じたら、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2023年2月1日時点の情報に基づいています)
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