弁護士のサポートで遺言書作成を トラブルの火種がある人こそ 弁護士に聞く
弁護士は、相続人どうしのトラブル解決だけでなく、トラブルを未然に防ぐ遺言書作成のサポートも行っています。弁護士に作成のサポートを依頼する意義やどんなサポートを受けられるのかについて、弁護士法人ALG&Associates(本部・東京都新宿区)の弁護士、志賀勇雄さんに聞きました。
弁護士は、相続人どうしのトラブル解決だけでなく、トラブルを未然に防ぐ遺言書作成のサポートも行っています。弁護士に作成のサポートを依頼する意義やどんなサポートを受けられるのかについて、弁護士法人ALG&Associates(本部・東京都新宿区)の弁護士、志賀勇雄さんに聞きました。
目次
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――遺言書作成の相談や依頼は増加傾向にあるとのことですが、その背景にはどんなことがあると考えられますか?
遺言書には自分で書く自筆証書遺言と、公証役場で作る公正証書遺言及び秘密証書遺言があります。公正証書遺言等の場合、公証人がチェックするので形式不備が少なく、公証役場で原本を保管してくれるため紛失や破棄などのリスクもありません。
一方で、2020年7月から自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まりました。新制度が広くアナウンスされたこともあり、興味を持った方や遺言書を自宅で保管されていた方が「法務局に遺言書を預けたらどうなるのか」「そもそも、公正証書遺言を作るのと保管制度を利用するのではどちらがいいのか」「これを機に遺言書を作り直そうかと考えている」などと相談にいらっしゃることが増えています。
――弁護士に遺言書作成を頼むメリットは?
遺言書作成のサポートは、弁護士のほか司法書士、行政書士に依頼できます。弁護士の場合、相続人に最低限保障されている遺産の取り分「遺留分」を計算し、遺留分に配慮するなど、高度な法律的な判断が含まれる遺言書を作ることができます。
公証人は、明らかに遺言書で残せないような財産などについては指摘してくれますが、具体的に、非上場会社の株式や不動産の民法上の評価を算出したうえで、「この内容では、一部の相続人の遺留分を侵害する可能性がある」などの助言まではしてくれないのが一般的です。また、弁護士であれば、遺言書作成後のトラブルや裁判手続きまで見据えた対応も可能です。
――弁護士に公正証書遺言作成のサポートを依頼した場合はどのような流れで進みますか?
遺言者の方と遺言書の内容を話し合った上で弁護士が草案を作り、公証人と協議しながら、遺言者の希望に沿う最終文案をまとめます。最後に、遺言者の方が公証役場に行くことが可能な方であれば、公証役場に行き、読み上げられた遺言書の内容に間違いがないことを確認し、署名・押印をします。
なお、公正証書遺言は作成時に証人2人の立ち会いが必要ですが、推定相続人など利害関係のある人は証人になれません。遺言書作成を依頼した弁護士や弁護士事務所スタッフを証人にすることで、証人選びの手間も省けます。
――遺言書作成にかかる弁護士費用はどれくらいでしょうか?
当事務所では、10万~20万円の費用に加え、公証役場に支払う手数料がかかります。遺産となり得る財産として、非上場会社の株式や多くの不動産があるなど、財産が複雑なケースは費用が加算されます。
――自筆証書遺言の相談もありますか。
あります。公正証書遺言だと公証人とのやりとりに時間や手間がかかり、その間に、遺言書を作っていることを知られたくない身内に見つかる心配があるから、などといった事情があるようです。自力で遺言書を作る場合、本文は自筆で書く、自分の氏名と日付を書く、押印するなどの民法の要件を守り、無効にならないように注意してください。
――遺言書を作るべき人はどういった人でしょうか?
子どもたちが不仲、自分の会社や特定の不動産を一部の相続人などに集中して残したいと考えている方、再婚していて前妻との間に子どもがいるなど、人間関係が複雑な方は弁護士のサポートを受けながら遺言書を作成することをおすすめします。弁護士は将来の紛争を予防し、遺言者の意思を実現するという二つの側面から、遺言書作成のサポートをします。
――他にトラブルの火種になりうるケースはありますか?
例えば、遺言者である親が子ども1人のみに定期的に金銭やその孫の学費などを渡していたケースです。親族間でお金の援助するのはよくあることですが、不公平に感じた他の相続人から、「特別受益の持ち戻し」(相続人が被相続人から受けた優遇的な遺贈・贈与について、その金額分を相続財産の金額に加えること)を主張されてしまうことがあります。
対処方法としては、遺言書を作成し「特別受益の持ち戻し免除をします」という内容を書き加えることで、持ち戻しの免除をすることができます。
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相続の相談が出来る弁護士を探す――これまで志賀さんが依頼を受けた中で、遺言書によって意思が実現できたというケースはありますか。
非上場会社の経営者の方で、「子どもの1人に会社の権利を引き継がせたいが、他のきょうだいからは文句が出てしまうだろうから、うまく調整して遺留分を侵害しない遺言書を作ってほしい」というご相談がありました。実際に私が計算をして、遺留分を侵害しないであろう遺言書を作成しました。その後、会社株式を相続しなかった相続人の1人が遺留分侵害額請求をして訴訟にまでなりましたが、結果は「遺留分の侵害はない」とこちらの主張が認められ、会社を承継した相続人には新たな負担は発生しませんでした。
非上場会社の株式の評価は複雑で難しいうえ、遺留分侵害額請求をした相続人は事業に関わっておらず内情に詳しくなかったようです。そのため実際はそこまでの価値がない会社であったのに「すごく会社はもうかっている、価値があるんだ」と思い込んでしまっていたのかもしれません。
――志賀さんは、そういった難しいケースも多く担当されているのですね。
遺産の中でも、非上場会社の株式や複雑で入り組んだ不動産がたくさんあるというケースは、解決が難しく時間もかかってしまいがちです。私は、そうしたケースも多く経験しています。
当事務所であればワンストップで相続の事案に対応可能ですので、遺留分に配慮した遺言書を作成されたい方など、ぜひご相談ください。
関東地方に5つ、関西地方に3つ、ほか名古屋、福岡、バンコクに事務所を構える法律事務所。グループとして経験した幅広い相続案件をグループ内で積極的に共有することで、良質な相続サービスの提供を可能としている。司法書士・税理士との緊密な連携で、相続登記や相続税申告、複雑な相続案件もワンストップで対応できる。
(記事は2022年9月1日現在の情報に基づきます)
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