遺産分割協議書の提出が必要な相続手続き

遺産分割協議書の提出先と手続き一覧
遺産分割協議書の提出先と手続き一覧

①法務局での不動産の名義変更(相続登記)

不動産の名義を特定の相続人に変更する場合には、遺産分割協議書を法務局に提出しなければなりません。
なお、現在、相続登記は任意であって期限がありません。もっとも、近時の法改正によって相続登記が義務化され期限が設けられることになりました。2024年(令和6年)4月1日から施行されるので注意しましょう。

②金融機関での預貯金口座の解約

被相続人名義の預貯金口座を解約する場合、遺産分割協議書を作成していれば金融機関から提出を求められますが、不可欠ではありません。金融機関所定の「相続届」に相続人全員で署名と実印での押印をすれば、遺産分割協議書がなくても手続きを進めてもらうことが可能です。

もっとも、遺産分割協議書を提出した場合、上記「相続届」には、預貯金を取得する相続人の署名と実印による押印のみで足りることがほとんどです。そのため、預貯金口座が多数ある場合には遺産分割協議書を作成・提出して手続きを進める方がスムーズです。

なお、預金債権は法律上5~10年で消滅時効にかかってしまいます。一般的に、金融機関はこの期間が経過した後でも相続人からの解約に応じているようですが、確実ではないため、5年以内に手続きを済ませるのが望ましいでしょう。
ちなみに、預貯金仮払い制度を利用する場合には、遺産分割協議書は不要です。

③証券会社での株や投資信託の相続手続き

株式や投資信託など金融商品の相続手続きをする場合、遺産分割協議書を作成していれば証券会社から提出を求められますが、不可欠ではありません。預貯金と同様、証券会社所定の「相続届」に相続人全員で署名と実印による押印をすれば、遺産分割協議書がなくても手続きを進めてもらうことが可能です。

なお、明確な期限はありませんが、長期間放置し続けると株式やお金を受け取る権利を失う可能性があるので早めに対応しましょう。

④陸運局や運輸支局での自動車の名義変更

自動車の名義を特定の相続人に変更する場合、陸運局や運輸支局に遺産分割協議書を提出しなければなりません。ただし、相続する自動車の価格が100万円以下であることを確認できる査定証、または査定価格を確認できる資料の写しなどを添付した場合は、遺産分割協議書に代えて遺産分割協議成立申立書を使用できることがあります。遺産分割協議成立申立書は自動車を取得する相続人の署名と実印による押印だけで作成できるのがポイントです。
なお、明確な期限はありませんが、名義変更をしないと売却することも廃車にすることもできないため早めに対応しましょう。

⑤税務署での相続税申告

相続税の申告をする場合、遺産分割協議書を作成していれば税務署から提出を求められますが、不可欠ではありません。ただし、遺産分割を成立させないまま相続税の申告をした場合、申告時に「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」などの適用を受けることができません。そのため、将来的に遺産分割の予定がある場合には「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しましょう。この書面を提出しておけば、後日遺産分割が成立し相続税の修正申告をする際、上記の適用を受けることができます。ただし、相続税の修正申告は手間がかかるので、できる限り相続税の申告期限である10カ月以内に遺産分割協議を成立させ協議書を提出するのが良いでしょう。

遺産分割協議書のコピーは使えない

基本的に遺産分割協議書は原本の提出が求められ、コピーは受け付けてもらえません。また、遺産分割協議書は通常1人の相続人が1通しか持ちません。そのため、原本を提出する際には、忘れずに原本還付申請をしましょう。「手続きが終わったら原本は返してください」と依頼しておくということです。

原本のみを提出すれば提出先でコピーをとって原本は返却してくれることが多いですが、法務局などでは遺産分割協議書の原本とコピーを一緒に提出し、そのコピーに「原本の写しに相違ない」旨を記載して記名押印または署名をすることを求められることもあります。事前に提出先に原本還付の方法を確認しておくと良いでしょう。

なお、遺産分割協議書は相続人の人数分の原本を作成し、1人が1通ずつ所持すべきです。なぜなら、上記の通りコピーは手続きで使えないことが多く不便なうえ、後から相続人間で争いが生じた場合の証明力も低いためです。

遺産分割協議書の提出が不要なケース

下記の場合は、遺産分割協議書の提出が不要です。

相続人が1人
遺産分割協議書は相続人が複数いる場合に作成するものなので、相続人が1人の場合は提出する必要がありません。

他の相続人が全員相続放棄
遺産分割協議書の代わりに他の相続人の相続放棄受理証明書が必要です。証明書は家庭裁判所で発行してもらえます。

遺言書で相続方法が指定されている
遺産分割協議書の代わりに遺言書の提出が必要です。自筆証書遺言の場合、事前に家庭裁判所での検認をしてもらい、検認済証明書を発行してもらいましょう。なお、法務局での遺言書保管制度を利用している場合、検認は不要です。

法定相続分で共有登記する
不動産の相続登記を法定相続分に従ってする場合、遺産分割協議書の提出は不要です。

まとめ

遺産分割協議書は早めに作成して必要な手続きを進めましょう。手続きが複雑で対応が難しい場合や相続人間でもめてしまった場合などには専門家に依頼するとスムーズに進みます。遺産分割協議書の作成や交渉の代理は弁護士に、相続税の申告は税理士に、不動産の相続登記は司法書士に相談すると良いでしょう。

(記事は2022年5月1日時点の情報に基づいています)