小規模宅地等の特例にはどんな添付書類が必要? ケース別に解説
親の家や事業用の不動産などを相続する場合、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることで、相続税が大幅に節税できます。ただし、宅地の用途によって必要書類が異なる点に注意が必要です。そこで、この記事では「小規模宅地等の特例」に必要な添付書類について税理士である筆者がわかりやすく解説していきます。
親の家や事業用の不動産などを相続する場合、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることで、相続税が大幅に節税できます。ただし、宅地の用途によって必要書類が異なる点に注意が必要です。そこで、この記事では「小規模宅地等の特例」に必要な添付書類について税理士である筆者がわかりやすく解説していきます。
目次
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小規模宅地等の特例の対象には、以下の3種類があります。
特定居住用宅地等とは、亡くなった人が住んでいた宅地のことを指し、配偶者または一定の条件を満たす親族が相続した土地のことをいいます。
特定事業用宅地等は、亡くなった人や生計を一にする親族が事業をしていた土地について、一定の要件を満たした場合に適用できる土地のことをいいます。
アパートや駐車場など、亡くなった人や生計を一にする親族が貸付をしていた土地についても適用が可能です。
小規模宅地等の特例は、遺産分割協議が完了していることが前提の制度なので、原則として遺産分割協議書または遺言書の写し(コピー)が必須の添付書類となります。もし申告期限内に分割できそうにない場合は、分割見込書を添付します。
遺産分割協議書に押印した相続人全員の印鑑証明書が必須の添付書類となります。
相続開始の日(亡くなった日)から10日を経過した日以降に作成されたもの。
戸籍謄本の写しでも構いません。
・配偶者や同居親族の場合
被相続人の配偶者や同居していた親族がこの特例の適用を受ける場合は、上記の書類以外に特に必要となるものはありません。
・同居していない親族(家なき子)の場合
被相続人と同居していなかった親族が特例の適用を受ける場合は、相続開始前3年以内に居住していた家屋が自己、または自己の配偶者の所有する家屋以外の家屋である旨を証明するための書類が必要となります。具体的には相続する家屋の登記事項証明書、借家の賃貸借契約書などが該当するでしょう。相続人が海外居住者でマイナンバーを持っていない場合は、相続開始前3年以内の住所を証明する書類も必要です。
被相続人が老人ホームに入居していた場合は、要介護の認定などを受けていることや、法律で決められた施設に入居していることなどを証明するために以下の書類が必要になります。
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相続の相談が出来る税理士を探す特定事業用宅地等の場合は、特に必要となる添付書類はありません。
特定同族会社事業用宅地等の場合は、特定同族会社であることを証明するために以下の添付書類が必要になります。
貸付事業用宅地等の場合は、特に必要な添付書類はありません。ただし、平成30年4月1日以後の相続により取得した宅地等については、貸付事業用宅地等が相続開始前3年を超えて特定貸付事業を行っていたことを明らかにする書類が必要になります。
小規模宅地等の特例は、土地などの相続税評価額を最大で80%減額できるというメリットがありますが、要件が非常に複雑で厳しいものとなっています。
要件を満たさなければ納める相続税額が何千万円も違ってくることもあるので、しっかり確認してください。特に二世帯住宅や老人ホーム入居のケースなどは判断が難しいものもありますので注意が必要です。
小規模宅地等の特例は、要件を満たせば無制限に減額できるわけではありません。適用できる限度面積や減額割合が宅地の種類に応じて以下のように決められており、限度面積を超えた分については、小規模宅地等の特例は適用されません。
※(1)と(2)の両方ある場合、合わせて最大730平方メートルまで適用が可能です。
※(3)を適用する場合の限度面積の計算は下記の算式に当てはめて計算します。
(1)×200/330+(2)×200/400+(3)≦200平方メートル
たとえば、相続した土地が2つあり、1つは特定居住用宅地等で1つは貸付事業用宅地等である場合、どちらを優先して適用するかによって納める相続税額が異なってきます。
この場合、上記の算式に当てはめ、特定居住用宅地等を限度面積まで適用した場合と、貸付事業用宅地等を限度面積まで適用した場合で相続税を計算し、有利な方を判断して申告することになります。なるべく1平方メートルあたりの単価が高い方から適用を受けると有利になるケースが多いでしょう。
小規模宅地等の特例は、土地の評価額を最大80%減額できるため相続税を大幅に節税できます。しかし、適用要件が複雑で、手続きや添付書類もケースによって異なってくるため、相続人自身で進めるには大きな負担が伴います。不安な場合には、相続税に強い弁護士や税理士など、専門家に相談することをおすすめします。
(記事は2021年8月1日時点の情報に基づいています)
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