目次

  1. 1. 寄与分とは?
  2. 2. 寄与分に時効はない|遺産分割の成立まではいつでも主張可能
  3. 3. 古い寄与分が認められにくい理由
  4. 4. 特別寄与料には、寄与分とは異なり期間制限がある
    1. 4-1. 特別寄与料とは?
    2. 4-2. 特別寄与料には6カ月の消滅時効・1年の除斥期間あり
  5. 5. 寄与分を主張する場合に、弁護士に依頼するメリット
  6. 6. まとめ|寄与分の主張には合意形成と証拠が大切

寄与分とは、相続財産の維持・増加に貢献した相続人につき、貢献度に応じて認められる相続分の増額分を意味します(民法904条の2第1項)。

例えば、被相続人の事業を手伝ったり、出資を行ったりした相続人は、被相続人が経営する事業の価値を高めた結果、被相続人の財産を増やすことに貢献したと評価できます。また、被相続人を献身的に看護した相続人は、少なくとも看護費用を節約することによって、被相続人の財産を維持・増加させたといえるでしょう。

上記以外にも、何らかの方法で被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をしたと認められる相続人については、「寄与分」の金額だけ相続分が増額されます。

寄与分の金額は、原則として相続人の間での協議を経て決定します(同)。ただし、一部の相続人が寄与分を認めないなど、相続人の間の協議が決裂する場合もあります。その場合、最終的には家庭裁判所が、以下に挙げる一切の事情を考慮して、「審判」により寄与分を定めます(同条2項)。

  • 寄与の時期
  • 寄与の方法
  • 寄与の程度
  • 相続財産の額 など

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相続はまず弁護士に無料相談 相談すべき状況・アドバイスの内容・弁護士の選び方を解説
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「寄与分」自体は債権ではなく、遺産分割の目安となる「相続分」を決定するための一要素に過ぎません。そのため、寄与分を求める権利自体に消滅時効は存在しないと解されています。ただし、全相続人・包括受遺者の合意により遺産分割が行われた場合、原則としてそれ以降、遺産分割の内容を覆すことはできません。したがって、実質的に寄与分を主張できるのは、遺産分割の合意が成立するまでの間ということになります。

また、遺産分割協議が終結間近になった段階で、初めて寄与分の主張を行った場合、他の相続人から不満が噴出するであろうことは明らかです。そのため、できる限り遺産分割協議の初期段階から、寄与分を主張しておく方がよいでしょう。

寄与分を主張する権利に消滅時効がないとしても、あまりにも昔の被相続人に対する貢献を根拠として、寄与分を主張するのは難しいかもしれません。

寄与分の有無は、最終的には家庭裁判所が、寄与の内容などを証拠から認定したうえで、諸般の事情を総合的に考慮して判断します。この点、あまりにも昔の被相続人に対する貢献については、その証拠となる資料があまり残っていないために、寄与分の根拠として認められないケースが多いのです。

もし特別の寄与に関する証拠が乏しい場合には、遺産分割協議・調停の段階で、他の相続人全員に、特別の寄与の存在を認めてもらうほかありません。

たとえば、思い出話などで他の相続人の記憶を喚起し、「そういえばよくやってくれていたな」と印象付けることも有効になり得ます。また、他の相続人が希望する遺産を譲る代わりに、一定の寄与分を認めてほしいと交渉することもあり得るでしょう。この辺りは、遺産分割協議における交渉戦略も重要になります。

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寄与分と似た民法上の制度として、「特別寄与料」があります。特別寄与料には、寄与分とは異なり、消滅時効と除斥期間が設定されています。そのため、特別寄与料の請求を考えている方は、早めの対応が大切です。

「特別寄与料」とは、無償の療養看護その他の労務の提供により、被相続人の財産の維持・増加に寄与した相続人以外の親族が、寄与の度合いに応じて相続人に請求できる金銭を意味します(民法1050条1項)。

寄与分が法定相続人のみに認められるのに対して、特別寄与料は「相続人以外の親族」に認められるという違いがあります。なお、相続放棄をした者、および相続欠格または廃除により相続権を失った者は、特別寄与料の対象外です。

また、特別寄与料の対象となる寄与は、無償で行われた療養看護その他の労務の提供に限られています。寄与分の場合、事業に対する出資や有償での労務提供なども対象となるため、特別寄与料は寄与分よりも対象範囲が狭くなっています。

特別寄与料の支払いを請求できるのは、特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から6カ月間です(民法1050条2項但し書き)。この6カ月は「消滅時効」と解されており、債務者として時効完成の利益を受ける相続人が時効の完成を主張する(「援用」する)ことで、特別寄与料請求権が消滅してしまいます。また、相続開始の時から1年を経過した場合、特別寄与料請求権の「除斥期間」(権利行使が可能な期間。時効とは異なり、延長不可)が経過し、裁判による請求が一切できなくなってしまいます。

特別寄与料は、相続人に対して直接金銭の支払いを請求できる権利、すなわち「債権」としての性質を有しています。つまり特別寄与料は、相続分を決定するための一要素に過ぎない寄与分とは異なる法的性質を有しており、それゆえに請求の期限が設けられているのです。

寄与分を主張するには、民法の複雑なルールや裁判例を踏まえた金額の見積もり、さらには他の相続人との交渉、法的手続きへの対応などが必要になります。

弁護士に相談・依頼することで、

  • 寄与分として妥当かつ根拠のある金額を導き出してもらえる
  • 他の相続人との交渉や法的手続きへの対応が円滑になる
  • 寄与に関する証拠の収集をサポートしてもらえる
  • 精神的なストレスが軽減される

などといった多くのメリットがありますので、ぜひ弁護士へのご依頼をご検討ください。

寄与分に時効はありませんが、遺産分割協議を円滑に行う観点からは、できるだけ早い段階で寄与分の主張を明らかにしておきましょう。寄与分に応じた相続分の増額を勝ち取るには、「他の相続人全員に寄与分を認めてもらう」か、または「寄与の事実と貢献度を、証拠を用いて客観的に証明する」ことが必要です。

上記のどちらかさえ実現すれば、寄与の度合いに応じた納得できる相続分を得られる可能性が高まるでしょう。弁護士に相談・依頼することで、他の相続人との意見調整や、遺産分割調停・審判などの法的手続きへの対応を円滑化できます。寄与分の主張をご検討中の方は、お早めに弁護士までご相談ください。

(記事は2021年10月1日時点の情報に基づいています)