目次

  1. 1. 独身の方が亡くなったら、誰が遺産を相続する?
  2. 2. 独身の方が兄弟に遺産を渡したくないときの対処法
    1. 2-1. 遺言書を作成し、兄弟以外の人に財産を遺贈する
    2. 2-2. 兄弟以外の人に財産を生前贈与する
    3. 2-3. 家庭裁判所に兄弟の相続廃除を申し立てる
    4. 2-4. 兄弟が相続欠格である場合には、当然に相続権を失う
  3. 3. 甥姪の代襲相続に注意|廃除・欠格事由の場合は対策が必要
  4. 4. 独身の方が、相続を見据えて行っておくべき準備
    1. 4-1. 誰に遺産を託したいかをよく考える
    2. 4-2. 死後事務委任契約を締結する
  5. 5. 独身の方が相続対策を行う場合は弁護士に相談を
  6. 6. まとめ|兄弟に遺産を渡したくない場合は、遺言書や生前贈与で対策を

独身の方が亡くなった場合、財産を相続する人はどのように決まるのでしょうか。
まず優先されるのは、遺言の内容です。
遺言者(被相続人)は、遺言によって財産を処分できるとされているためです(民法964条)。
遺言がない場合には、遺産分割協議によって遺産の分け方が決定されます。
遺産分割協議に参加できるのは、相続権を有する相続人です。

相続権は、本人から見た続柄に応じて、以下の要領で与えられることになっています。
①配偶者
常に相続人となります(民法890条)。
②子
常に相続人となります(民法887条1項)。
③直系尊属(両親など)
子がいない場合に相続人となります(民法889条1項1号)
④兄弟姉妹
子・直系尊属がいない場合に相続人となります(同項2号)。

独身の方の場合、

  • 配偶者はいない
  • 子はいない(離婚した前妻との間に子がいる場合や、養子がいる場合などを除く)
  • 両親は先に亡くなっていることが多い

ということで、兄弟姉妹が相続人となるケースが多いです。
この場合、特に相続対策を行わないとすれば、兄弟姉妹に遺産が渡ることになります。

兄弟姉妹との仲が悪いなどの理由で、遺産を渡したくない場合には、生前の相続対策が必須です。
兄弟姉妹に遺産を渡さないための相続対策としては、以下のパターンが考えられます。

前述のとおり、遺言の内容は続柄に基づく相続権に優先します。
そのため、兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合には、遺言書を作成して、それ以外の人に遺贈(遺言による贈与)をすることが有効です。
なお、兄弟姉妹には遺留分(相続できる遺産の最低保障額)がありません。
したがって、遺言書の作成により、兄弟姉妹の相続分をゼロとすることも可能です。

生前贈与も、遺贈と同様に、兄弟姉妹に遺産を渡さないための有効な相続対策として機能します。
財産を誰かに生前贈与すれば、亡くなった時点でその財産は相続の対象にならないため、兄弟姉妹に渡ることはなくなります。
また、兄弟姉妹には遺留分がないので、生前贈与が遺留分の影響を受けることもありません。

兄弟姉妹からあまりにもひどい仕打ちを受けている場合には、家庭裁判所に「相続廃除」を申し立てることで、兄弟姉妹の相続権を失わせることができる可能性があります(民法892条)。
特に、兄弟姉妹から虐待や重大な侮辱を受けている場合には、相続廃除の申立てが認められる可能性が高いでしょう。

以下の欠格事由のいずれかに該当する場合には、兄弟姉妹は当然に相続権を失います(民法891条)。
この場合、兄弟姉妹に遺産を渡さないための相続対策は、特に何もする必要がありません。

  • 故意に先順位相続人や同順位相続人を死亡させ、または死亡させようとしたために、刑に処せられた場合
  • 詐欺または強迫によって、遺言やその撤回、取消し、変更を妨げた場合
  • 詐欺または強迫によって、遺言やその撤回、取消し、変更をさせた場合
  • 遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した場合

兄弟姉妹が廃除または欠格事由により相続権を失った場合には、その子である甥・姪による「代襲相続」に注意する必要があります。
甥・姪には代襲相続権が認められており、兄弟姉妹が相続廃除または相続欠格となった場合には、代わりに相続権を取得します(民法889条2項、887条2項)。
もし甥・姪にも遺産を渡したくない場合には、兄弟姉妹が相続廃除または相続欠格になったからといって安心せずに、遺贈や生前贈与による相続対策を行っておくべきでしょう。

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配偶者や子がいない独身の方は、相続や身辺整理に関する準備を早い段階から整えておきましょう。

生前築き上げた財産をどのように受け継いでいくかは、ご本人の価値観が如実に表れます。
特に独身の方は配偶者や子がいない分、遺産を誰に渡すかの自由度が高いです。
兄弟姉妹に遺産を渡したくないとすれば、

  • お世話になった人
  • 仲がいい人
  • 内縁関係にある人
  • 慈善団体

など、誰であれば遺産を信頼して託せるかを、生前の段階からよく考えておきましょう。

独身の方の中には、死後の身辺整理をしてくれる身近な親類がいないという場合もあるでしょう。
その場合は、弁護士などと「死後事務委任契約」を締結しておくことをお勧めします。
「死後事務委任」とは、亡くなった後の身辺整理などを依頼することです。
遺品整理や金融機関・役所での手続きなどを任せることで、「立つ鳥跡を濁さず」、親類や友人・知人・近隣の人などに迷惑をかけずに済むのがメリットです。

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独身の方が、ご自身の望む形で遺産を受け継いでいきたいと考える場合には、弁護士へ相談することをお勧めします。
もし兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合は、弁護士はその希望を尊重し、兄弟姉妹に遺産が渡らない効果的な相続対策の方法を提案してくれるでしょう。

また、遺言書による生前対策を行う場合、法的に有効な遺言書を作成するためにも、弁護士に依頼するのが安心です。
併せて遺言執行者を弁護士としておけば、ご自身の死後、確実に遺言の内容を実現してくれます。
独身の方が相続対策をご検討中の場合、ぜひお早めに弁護士へご相談ください。

独身の方が、兄弟姉妹に遺産を渡したくない場合には、生前の相続対策が必須です。
遺言書の作成や生前贈与などを通じて、ご自身の望む相続が実現できるように、弁護士に相談しながら相続対策を行いましょう。

(記事は2021年12月1日現在の情報に基づきます)