目次

  1. 1. 家族への「感情」が財産を分ける「勘定」問題で爆発
  2. 2. 相続人じゃない親族に財産を分けてもいい?
  3. 3. 相続人以外に財産を分けるなら「遺言」が必要
  4. 4. 相続人で居続けるため「意地でも離婚しない!?」
  5. 5. まとめ 思い通り財産を分けるためにも遺言書の作成を

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「相続が大変って、何が大変だっていうの?うちにはそんなに財産があるわけじゃないし、家族仲も悪くない。自分が死んだら適当に(法定相続分通りに)財産を分ければいいじゃないか」

こう思っている方、たくさんいますよね。そうなんです。相続への意識、特に男性の方の認識はこんなものです。(そうでない方、すみません……)

でもね、相続ってそんな簡単なものではないのです。

「相続なんて関係ないよ」と放っておくと、残されたご家族が「つらい相続」を迎えてしまうかもしれないのです。

相続を大変にするのは「カンジョウ」の絡み合いです。ここでいう「カンジョウ」とは「感情」と「勘定」のこと。

赤の他人がお金の話をする場合は、「勘定」さえ合えば問題は解決です。でも、家族にはそれまでの歴史や思いなど、さまざまな「感情」があるのです。

「お父さんは、昔からお兄ちゃんをえこひいきしていた」「親の面倒を押し付けて、自分は何もしなかったくせに」「妹の私がこんなに困ってるんだから、少しは気を遣ってよ」など……家族に対してくすぶっていた「感情」が、相続財産を分けるという「勘定」問題をきっかけに爆発してしまうのです。

仮に、この「カンジョウ」問題がなかったとしても、相続には思わぬ落とし穴があります。
というのも、相続はきわめてプライベートな家族の問題であると同時に、民法や税法などの法律で既定された法律行為でもあるからなのです。

ですから、「家族の問題だから好きにさせてくれ」とテキトウなことをしてしまうと、思わぬ税金がかかったり、法律的に不適格になってしまうことがあるのです。

相続にはどんな落とし穴があるのか、そうならないために、どんな準備が必要なのか。この連載でお伝えできればと思います。この連載が「つらい相続」を迎えないために少しでもお役に立てればうれしいです。

「亡くなった人の財産を、相続人以外の人でも相続できるのでしょうか?」

先日、こんな相談を受けました。
「父が亡くなって、遺産分けを考えているのですが、父は生前、孫のAちゃんをかわいがっていたので、Aちゃんにも遺産をあげたいと思っているんです」。
なんとも心温まる話です。相続というと、親族で財産を取り合う話ばかりと思いがちですが、こういう心優しい人たちもいるのです。

「是非 、Aちゃんにも財産をあげてください!」と言いたいところですが、残念ながら、
相続人ではない孫のAちゃんは、遺産分割で財産をもらうことはできません。

同じようなケースで、「嫁のB子さんが、最期までお父さんの面倒をよくみてくれて
いたから、財産を分けてあげたい」なんていう話も聞きますが、これもお嫁さんは相
続人ではないため、相続で財産をあげることはできないのです。

こう聞くと、「誰が遺産をもらおうと家族の問題なんだから、好きにさせてくれ!」と思われるかもしれません。しかし、相続は家族の問題であると同時に、民法や税法に規定された法律行為でもあるのです。

それを知らずに、うっかり、孫のAちゃんや長男の妻B子さんに財産をあげてしまったら……。もらったAちゃんやB子さんに多額の贈与税がかかるかもしれないのです!

相続とは、亡くなった人の財産を特定の人が 承継することをいいます。平たくいうと、「亡くなった人から財産をもらう」ということ。誰に何をあげるのかは、財産の持ち主が指定できます。これを「指定相続」と言います。

分け方の指定は通常、遺言書で行います。正しい遺言書があれば、好きな人に財産を残すことができます。孫のAちゃんや長男の妻B子さんも、遺言書で財産の一部を相続させると指定してもらっていれば、相続で財産を受け取ることができるのです。

遺言書がない場合は、法律で決められた相続人(法定相続人)が話し合いで財産の分け方を決めます(法定相続)。ここで注意したいのは、遺言書等で指定のない場合には、法律で決められた相続人しか遺産をもらえないということです。たとえ相続人全員の同意があったとしても、ダメなのです。

では、「遺言書はないけれど、どうしても相続人以外の人にも財産をあげたい!」という時はどうすればいいのか?

その場合は、いったん法律で決められた相続人が財産をもらい、そのもらった財産を相続人以外の人に贈与する、という手順を踏むことになります。

ここで、問題になるのが税金です。亡くなった人から財産をもらえば相続税の対象ですが、生きている人から財産をもらうと贈与税の対象となります。
相続税は亡くなった人が一定以上の財産を持っていた場合にかかる税金ですが、贈与税は年間に110万円以上の財産をもらうとかかることになります。しかも、贈与税は相続税よりも税率が高くなりがちです。
もらう財産の額によっては高額な贈与税 を払わなくてはならない、なんてことになりかねないのです。

相続は、前もって準備をしておくと、トラブルを回避したり税金対策を考えたりすることができます。まずは、自分に合った準備を整理するため、税理士に相談してみてください。

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ましてや、相続税もかかるとなると、相続人がいったん相続するために相続税を払 って、今度は相続人からその財産をもらった人が贈与税を払うということになるわけです。

遺言書がないばかりに、余計な税金を払うことになるなんて悲しすぎます。いや、そもそも、そこまでして相続人以外の人に財産を分けてあげようなんて、心優しい人がそうそういるとは限りません。相続人以外の人に財産を遺したいのであれば、その旨を記した遺言書を作っていただきたいと思います。

法律で決められた相続人(法定相続人)とは誰かについて説明しましょう。まず、配偶者(妻・夫)は必ず法定相続人となります。配偶者とは婚姻届を出している(入籍している)人。籍が入っていない事実婚の場合は、たとえ何十年一緒に暮らしていようと法定相続人にはなれません。逆に何十年も別居していたとしても、入籍さえしていれば法定相続人です。

「夫に愛人ができて家を出て行ってしまったけれど意地でも離婚しないわ」なんて話を聞くことがあります。籍さえ入っていれば、不倫した夫が亡くなった時に法定相続人として財産をもらえるのは、一緒に住んでいた愛人さんではなく、別居していた法律上の妻ということになります。意地でも離婚しない気持ちもわからないでもない……ですね。

その一方で、別居中の夫に多額の借金があったら、うっかり借金を相続してしまう不幸もありうるということです。それはちょっと困りますよね。別居している配偶者の財産状況も、できれば把握しておきたいものです。

話はそれましたが、配偶者以外の相続人には、第1〜第3までの順位が決められています。先の順位の人がいる場合、後の順位の人には相続権はありません。第1順位は子ども(直系卑属)です。養子に迎えた子はもちろん、養子に出した実子も相続人となります。ただし、特別養子に出した子を除きます。

相続の時にお腹の中にいた胎児も、その後に生まれてきた場合には相続人となります。配偶者の場合には入籍が絶対条件でしたが、籍の入っていない相手との間に生まれた内縁の子は相続権を持ちます。子どもが先に亡くなっていた場合は、その孫が、孫も亡くなっていればひ孫が、相続人になります。これを代襲相続といいます。

第1順位が 一人もいない場合、第2順位の親(直系尊属)が相続人になります。両親ともにいない場合は祖父母、祖父母もともにいない場合は曽祖父母へと相続権が移ります。

第2順位も誰もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は、その子どもたち、つまり甥と姪が代襲相続人です。甥や姪も亡くなっている場合には、そこで相続権がなくなります。甥や姪の子どもたちは法定相続人とはならないのです。

海外のお話のように、会ったこともない遠い親戚が亡くなって、突然、莫大な相続財産を引き継ぐ♥というようなシンデレラストーリー(?)は、日本ではありえないということです。

法律は、私たちの個々の事情や感情を加味して作られていません。
法律で定められた相続人以外の人に相続で財産を渡したいと考えているのであれば、是非遺言書を作っていただきたいと思います。
仮に、財産をあげたい人が法律で定められた相続人だけだったとしても、だれに何をどのくらい残すのか。ご自分の思い通りに財産をわけるためには、遺言書が必要です。
せっかく築いてきた財産です。その行く末もご自分で決めていただきたいと思います。

(記事は2020年3月1日現在の情報に基づきます)

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