目次

  1. 1. コラムを始めるにあたって 
  2. 2. 戸籍上の性別が同性では、結婚できず、相続もない
  3. 3. 同性カップルの「結婚」は法律で認められていないの?
  4. 4. 「同性カップル」にはさまざまなケースが

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この「相続会議」では「LGBTの相続」も取り上げたいーー担当者からそんなオファーをいただき、連載コラムを始めることになりました。

LGBTという言葉は今日、メディアでもよく目にするようになりました。レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとったもので、その4つに限らず、性的マイノリティの総称としても使われます。
ちなみに私自身は今夏で54歳になるゲイ当事者で、行政書士とFPの事務所「東中野さくら行政書士事務所」、そして仲間とともに性的マイノリティの老後を考えるNPO法人「パープル・ハンズ」を運営しています。

LGBTという言葉は知られるようになりましたが、まるで「LGBT」という人がいるような誤解や、「LGBTの男性」などという奇妙な表現(ひとり4役兼業? Lの男性って?)も見受けられるようになりました。「LGBTの相続」という言葉にも、うっすらそんな困惑を感じなくもありません。 

ただ、ここでは「戸籍上の性別が同性であるために婚姻ができない人の相続」と読み替えて、いろいろ考えてみましょう。日本では、同性ふたりの場合、婚姻ができないために、法的配偶者に認められている法定相続(相続税がかかる場合の配偶者控除も含め)もありませんし、若いときから死別のときまで、「ふうふ(夫夫、婦婦)」視・家族視してもらえず、不利益をこうむる場面も少なくありません。

2019年の2月以来、全国5か所の地方裁判所(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)で、同性婚が憲法に違反していないことの確認と、立法がされないことによる損害賠償を求めるかたちで、同性婚訴訟が争われています。

憲法24条に「両性の合意」とあるので、日本国憲法のもとでは同性婚はできないと思っているかたがいます。しかしこれは、戦前の家制度のもとで戸主の同意がなければできなかった結婚を、両当事者の合意に変更する趣旨であって、同性婚を禁止するものではありません。

また第2次安倍内閣で出された政府答弁書でも、同性婚の「成立を認めることは想定されていない」と回答するのみで、「違憲である」とは回答していません。

法律学者のなかには、民法に「婚姻は同性間においてもこれを行うことができる」と1条入れれば同性婚は可能だ、という意見もあります。すでに世界の多くの国で婚姻における性別平等がはかられており、アジアでも、お隣の台湾で昨年から可能になっています。しかし、日本ではまだ国会でまともな議論に上ることなく、多くの人が婚姻する権利から遠ざけられています。

「遠ざけられている人びと」とは、具体的にはゲイやレズビアンのカップル、バイセクシュアルで同性の人とおつきあいしているかた。ほかにトランスジェンダーで性別変更手続きをしていない(できない)ために相手とは同性どうしとなったり、性別変更したことで同性どうしとなるなどの場合もあります。

女性の場合、私がご相談を受けた経験では、レズビアンというアイデンティティはないけれど女性どうしで暮らしているというかたも意外にいらっしゃいました。しかし、時代の趨勢で、自分たちのライフスタイルを隠さず暮らすかたたちも増えましたが、相続も含め、法的に安心できる家族形成から取り残されています。

またこれらはパートナー間相続についての懸念でしたが、かつて異性とのあいだに子をなした人が、その後、別離して同性のパートナーとともにその子を養育するケースもあります。このような場合、本人とパートナーとは法律上の関係がないため相続できず、本人が亡くなったときは子どもがすべての相続人になります。

このように「LGBTの相続」とはいうものの、その実態はさまざまなケースがあります。ご自身のパートナーとの関係がどういうケースになっているのか、冷静に見ることが大切です。

次回以降のコラムで、現状の法制度の中で採られている解決策、たとえば遺言書や養子縁組についてお話ししたり、その課題を考えてみましょう。またLGBT当事者には「おひとりさま」で高齢期を迎えるかたもいます。さまざまな状況にあるかたの終活についても、私のこれまでの実務経験も交えながらお話しできればと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

(記事は2020年1月1日時点の情報に基づいています)

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