このコラムでは前回の死因贈与をはじめ、遺言(遺贈)や養子縁組、生命保険などの手段による、同性カップル間の財産移譲についてご紹介してきました。結婚による法定相続はないものの、所有権を委譲する法律的な方法はいくつかあることは、ご理解いただけたかと思います。

しかしこのような財産委譲をする場合、かかる税金の負担は、法律婚とは状況が異なってきます。

今回はケーススタディーとして、一般的な遺産内容(不動産と預貯金)を故人と生計を一にしていたパートナーが受け取る場合にどれくらいの税金がかかってしまうのかを示します。 

相続税の計算の仕方

まず、遺贈であれ死因贈与であれ、課税は相続税が適用されます。贈与税ではありません。

相続税は、基礎控除額が大変大きく規定されており、遺産総額が基礎控除を上回るとき、その部分に対して課税されます。

基礎控除は、
「3000万円+法定相続人数×600万円」
です(贈与税の基礎控除額は110万円)。

すべてをパートナーに遺贈する場合でも、計算には法定相続人、つまり親族の人数が必要です。いま自分が死んだときだれが法定相続人になるか、把握してください。たとえ疎遠でも、生死が不明でも、いざというときの計算には必要になります。

遺産になるもの

では、どのようなものが遺産となるでしょうか。不動産、預貯金、有価証券などが一般的でしょう。また、生命保険金、そして在職中に亡くなった場合に出る死亡退職金などは、指定受取人の固有の財産とされますが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として遺産のなかに繰り入れます。

それらの合計額を出し、基礎控除を上回る部分があれば相続税がかかるわけです。では、個々の財産の評価額は、どうやって算出するのでしょう。
預貯金は、死亡時の残高の通り。株式は、死亡月における毎日の終値の平均額(他にも評価法あり)です。国債などの債券や投資信託は、死亡時に売却した場合の価額です。

法律婚と同性カップルで異なる部分

ここまでは、だれが遺産を受け取ってもおなじなのですが、自宅(居住用不動産)と生命保険金については、親族が受け取る場合と、法律上は親族ではないパートナーが受け取る場合とで、大きな違いがあります。

自宅は、建物部分は自治体が評価する固定資産評価額、土地は国税庁が発表する路線価で計算します。土地の固定資産評価額は通常、路線価を上回るので、固定資産評価額でだいたいの見当をつけることができます。

ところが、生計を一にしていた故人の親族がその不動産に住み続ける場合、土地評価では、330㎡を上限に80%減額されるという特例があります。土地の評価が2割に圧縮されるわけです。

しかし、これは親族であることが要件ですから、同性パートナーの場合この適用はありません。不動産の評価額が大きくなり、それだけ相続税がかかりやすくなります。

生命保険も相続税が多くかかりやすい

つぎに生命保険金は、保険金額から500万円×法定相続人数が控除されます。ただし、これは法定相続人が保険金を受け取る場合に限り、同性パートナーが受け取る場合にはこの適用はありません。全部が遺産額へ繰り入れられ、それだけ遺産総額を押し上げ、相続税がかかりやすくなります。

在職中の死亡の場合、会社などが支払う死亡退職金にも、同様の、500万円×法定相続人数の控除があります。ただし、これも法定相続人が受け取る場合に限り、たとえ会社の配慮でパートナーがそのお金を受け取ることができてもそうした控除はなく、これまた全額が遺産額となります。相続税への影響も同様です。 

なお、マイナスの財産といわれる、借金や未払い費用などの債務、それから葬儀費用(お布施含む)は、遺産総額から差し引くことができます。

登記の名義変更は5倍の税が…

こうして集計した遺産総額から最初に述べた基礎控除額を差し引き、上回る部分があった場合、相続税が課税されます。実際の算出方法は複雑ですが、1割程度と見積もってみてください。

それを、遺産を受け取った人が割合に応じて按分して負担しますが、故人の配偶者と1親等(子・親)以外の場合、2割増しで払います(2割加算)。同性パートナーは当然、2割加算の対象です。

最後に、不動産を引き継いだあと、登記の名義変更をしなければなりません。そのとき法務局で登録免許税を納めますが、法定相続人が相続する場合、税額は固定資産評価額の1000分の4です。しかし、パートナーが遺贈や死因贈与を受ける場合は1000分の20、なんと5倍です。

また、相続人が相続によって不動産を取得する場合、不動産取得税(地方税)はかかりませんが、第三者(パートナーも)が遺贈や死因贈与によって取得する場合、不動産取得税が課税されます(特定遺贈の場合)。税率は固定資産評価額の3%です。

つまり、不動産の遺贈には評価額の合計5%の税金が必要であり、2000万円の評価額だと100万円もの納税が生じます。(法律上の配偶者が相続の場合は8万円。)

いかがだったでしょうか。たしかに財産移譲をすることはできますし、生命保険などもパートナーを受取人にすることは可能になりましたが、遺産の評価方法や実際の税額について、さまざまな不利益があることがわかります。

そもそも配偶者なら、なにもしなくても法定相続ができ、そして遺産総額が1億6千万円までは相続税がかからないのです。なお、税制は法律婚主義ですので、以上のことは男女の事実婚の場合にも同様です。

遺言などの作成の際は、同時に相続税の試算やそのための現金の準備、場合によってはそれに備えた財産内容の組み替えなども含めて話せる専門家に相談してみることをおすすめいたします。

(記事は2020年5月1日時点の情報に基づいています)