目次

  1. 1. 同性パートナーシップ保障としての養子縁組
  2. 2. 相続や税制上にメリットあり
  3. 3. 行政には説明が必要になる可能性も
  4. 4. 知らなかった親族とトラブルの可能性

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同性カップル間での相続のために、「養子縁組」を考える人も少なくありません。私もケースによってはお勧めることがあります。

養子縁組をして法律上の親子になることで、法律上は規定のない同性カップル間に法律関係が成立し、さまざまなことが可能になるのが養子縁組の「メリット」です。相手の親と養子縁組し、法律上のきょうだいになる場合もありますが、今回は除外します。

外国人のパートナーを養子にすれば、日本での在留資格を与えられると誤解している方もいますが、そういうことはないので、ご注意下さい。

日本では双方が成年であれば、自由に養子縁組できます。ただ、年上を養子にすることはできません。1日でも先に生まれたほうが養親になります。

養子縁組をするには、必要書類を揃えて役場の戸籍窓口で養子縁組の届出をします。成人2人の証人が必要です。未成年者を養子にする場合は、原則、家庭裁判所の許可が必要です。

養子縁組を解消する時は、自由に離縁ができます。離縁の話し合いがこじれた場合は、家庭裁判所に申し立てて調停を行なうこともできます。

同性婚制度がない日本で、養子縁組が一種のバイパス、もしくは緊急避難策として利用されてきたのは事実です。私の知り合いの90歳代と70歳代のゲイカップルは、パートナーシップを結んでから、まもなく金婚式を迎えますが、若い頃から養子縁組しています。

「いまはこの方法しかない」と選択するカップルもいれば、そもそも対等であるべきパートナーシップに親子というタテの関係を持ち込む養子縁組はおかしい、と抵抗感をもつ人もいます。

ここでは、同性カップルが相続を考える際の参考として、養子縁組のメリット・デメリットを整理してみましょう。

養子縁組すると、一方が亡くなった時は法定相続が発生します。養親が亡くなれば養子が、養子が亡くなれば養親が、相続人となります。多額の遺産があって相続税が発生する場合でも、遺言で遺贈する場合と異なり、親族への相続ではさまざまな控除や財産評価に関する特例があり、相続税がかからない、あるいは、かかっても少額に抑えられています。 

不動産所有権の変更登記をする場合も、登記の税額が不動産価額の1000分の4であり、遺言で遺贈する場合は1000分の20と、5倍の開きがあります。

厚生年金から遺族年金が受給できる場合もあります。

ちなみに生前においても、「家族(親族)」を条件とするサービスや商品も購入しやすいでしょう。生命保険金の受け取り人に指定でき、携帯電話などの家族割り引きも利用できます。親族同居要件のある公営住宅への申し込みも受理されます。同性2人が敬遠されがちという民間賃貸住宅の契約もスムーズでしょう。住宅ローンの共同ローンも組める可能性が高まります。

また医療や介護などの場面で、保護者として、あるいは患者の意思決定の代行者として見なされます。すなわち、医療現場での看護・面会や病状説明での同席、本人が重篤時のキーパーソンとして、医療者たちの理解を得られやすいのです。

ただし、認知症や植物状態など本人の判断能力が失われた時、財産処分や契約といった法律行為の代理は、親子だからといって無条件にできるわけではありません。1親等(親子はおたがいに1親等)の親族として、裁判所に法定後見を申し立てて後見人となるか、あらかじめ2人の間で委任契約や任意後見契約を交わしておくことも大切です。

一見、万能のような養子縁組ですが、デメリットと言えることもあります。

縁組みすると、養子は養親の氏を称します。パスポートや健康保険証、銀行そのほかの届けなど、さまざまな公私にわたる書類・届けの苗字の変更を余儀なくされます。

私のゲイの知人は、養子縁組した際、年下だったので彼が改姓し、あらゆる書類の氏名を変更しました。その後、離縁することとなり、旧姓に戻すことに。そして、再びあらゆる書類で氏名の変更を余儀なくされたという例もあります。

当然、勤め先などにも告知が必要でしょう。戸籍上にも縁組の記録が残るので、両親などが戸籍を取った場合、縁組がわかります。このため、いったん分籍して自分の戸籍を独立させ、そこから縁組することが多いです。

一方で、近年、養子縁組が悪用される事例があります。ネームロンダリングして携帯や銀行口座を開設し転売するといった悪用です。なので、不自然に年齢の近い養子縁組は、窓口で確認するよう法務省が通達を出しています。また、東京都豊島区は、暴排条例の中で窓口確認を義務づけています。その際は、窓口で、自分たちは同性カップルであり、現行法上この方法しかない、と主張することも必要かもしれません。

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本来の目的である親子関係の創出とは別の目的で制度を使うことで、いざという時、争いになる可能性は皆無と言えません。

養親が亡くなった場合、養子には全財産への相続権がありますが、養子関係を告げていない場合、養子と養親側の親族とがトラブルになるかもしれません。

事例こそ聴いたことがないものの、養親側の親族が、養子縁組無効確認の訴えをする可能性があります。また、生命保険金の支払い時に保険会社が疑いをもつ可能性も、なきにしもあらずです。そうならないためにも、担当者たちに事前に説明することが大切です。

また、養子側が先に亡くなる「逆縁」もありえます。その場合、養親のほか実父母も相続人となり、遺言がない場合は、養親と実親とで遺産分割協議をする必要があります。父母が存命の場合の、万一に備えたシミュレーションも大切です。

ちなみに現民法は、養親子の関係にあったものは、離縁をして親族関係を終了した後でも婚姻することができないと規定しています(民法736条)。遠い将来、日本にもしも同性婚の制度ができた時、養親子関係にあったことはリスクとなる、と考え、「自分(たち)は養子縁組をしない」と言う人もいます。

ただ、私はその場合は自分で「親子関係の意思はなかった」と養子縁組無効確認の訴訟をする余地があると思いますし、そもそも同性婚を立法しようという時には、代替策として養子縁組していた人たちへの配慮条項も盛り込まれるべきでしょう。

諸外国に比して日本では簡単にできる養子縁組ですが、事前に同性カップルの事情に理解のある専門家に相談して、多面的に検討することも大切でしょう。

(記事は2020年4月1日現在の情報に基づきます)

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