遺産を相続することになったら?最初に必要な「遺産分割協議」を解説
遺産を相続することになったら、相続人同士で「遺産分割協議」をしなければなりません。遺産分割協議とはどのようなもので、どう進めていけば良いのか、専門家が押さえておきたい知識を紹介します。
遺産を相続することになったら、相続人同士で「遺産分割協議」をしなければなりません。遺産分割協議とはどのようなもので、どう進めていけば良いのか、専門家が押さえておきたい知識を紹介します。
目次
「相続会議」の弁護士検索サービスで
遺産分割協議とは、相続人が全員参加して遺産の分割方法を話し合い、決定することです。民法は、「誰が相続人になるべきか(法定相続人)」「どの相続人がどのくらい相続するか(法定相続分)」を定めていますが、「誰がどの遺産をもらうのか」「どのような方法で分けるのか」という具体的な方法までは定めていません。複数の相続人がいる場合「誰がどの遺産を取得するか」は、自分たちで決めなければならないのです。そのための話し合いが遺産分割協議です。
遺産分割協議が必要になるのは、以下のケースです。
遺産分割協議が必要なのは相続人が複数いる場合のケースです。1人ならその人がすべての遺産を相続するので、協議する必要はありません。
遺言によってすべての遺産相続方法が決められていたら、その内容に従って相続手続きをするので、遺産分割協議は不要です。
遺産分割協議に参加すべき人は「そのケースにおけるすべての法定相続人」です。必ず「相続人が全員参加」する必要があり、1人でも欠けると遺産分割協議が無効になってしまいます。
そこで遺産分割協議を行う前に「相続人調査」をしなければなりません。相続人調査とは、本籍地の役所で被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本類をすべて取得して、認知した子など、ほかに「法定相続人」となる人がいないかどうか調べることです。遠隔地の場合、郵送で取得することも可能です。相続人調査の結果、判明したすべての法定相続人に声をかけて遺産分割協議を開始します。
全国47都道府県対応
相続の相談が出来る弁護士を探す遺産分割協議の流れをみてみましょう。
まずは相続人調査を行って、どのような相続人がいるかを明らかにします。調査結果は「相続関係図」という図にしておくと便利です。
疎遠にしている相続人や、知らなかった相続人がいる場合でも、必ず全員に声をかけて遺産分割協議に参加してもらう必要があります。電話をかけたり手紙を送ったり直接訪問したりして、遺産分割協議に参加するよう求めましょう。
見知った親族の間柄であれば、49日の法要が終わった頃に全員で実家に集まって話をするケースがよくあります。連絡がとれない相続人がいる場合、家庭裁判所へ調停を申し立てる必要があります。行方不明なら「不在者財産管理人」の選任が必要となります。
もしも「遺産はいらないから遺産分割協議に参加したくない」という相続人がいたら、家庭裁判所で「相続放棄の申述」をしてもらうか、「相続放棄書」に署名捺印してもらいましょう。相続放棄書は自筆で作成したもので構いません。「私は一切の遺産相続をしません」などと書かれていれば問題ありません。
遺産分割協議の進め方に形式的な決まりはありません。自分たちのやりやすい方法で話し合いができればいいのです。たとえばメールで連絡を取ってもかまいませんし、手紙や電話を使ってもかまいません。もちろんどこかの場所で実際に会って話し合う方法もあります。相続人の状況に応じて最適な方法を選びましょう。
ただし連絡が取れない相続人や非協力的な相続人がいると、話を進められなくなってしまう可能性があります。
全員が遺産分割の方法に合意したら、「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた契約書のような書類です。遺産分割協議書に使う印鑑は「実印」で捺印してください。実印のない方はまず役所で印鑑登録を済ませてから遺産分割協議書に捺印しましょう。
遺産分割協議がどうしてもまとまらない場合には、協議はあきらめて家庭裁判所で「遺産分割調停」を行わなければなりません。調停になると時間も労力もかかってしまうので、なるべく自分たちで話し合って遺産分割協議をまとめたいものです。一人ひとりが自分の都合を強調しすぎると、協議がまとまりにくくなります。もちろん遺留分など法的な権利まで譲る必要はありませんが、お互いが相手の立場を尊重して話し合いをすすめる姿勢が大切です。
相続人だけではまとまらないケースでも、弁護士に依頼すると争点が整理でき、話し合いがスムーズにまとまる可能性が高まります。意見が対立しそうだと感じたら、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2019年9月1日時点の情報に基づいています)