目次

  1. 1. 共有持ち分って何?
  2. 2. 共有持ち分にするメリット
    1. 2-1. メリット1:不公平にはなりにくい
    2. 2-2. メリット2:「3000万円特別控除」をそれぞれが利用できる
  3. 3. 共有持ち分にするデメリット
    1. 3-1. デメリット1:持ち分に応じた固定資産税等の負担が必要
    2. 3-2. デメリット2:処分や管理が自由にできない
    3. 3-3. デメリット3:持ち分のみの処分だと評価額が低くなる可能性大
    4. 3-4. デメリット4:見知らぬ第三者が持ち分を取得する可能性
    5. 3-5. デメリット5:持ち分の相続によってさらに共有者が増えてしまう
  4. 4. 共有持ち分の不動産 どう対処すべき?

3人の子どもたちで仲良く分けてほしい。そんな想いから、「3人で共有しなさい」という遺言書になったのかと思われます。

共有持ち分とは、複数人で1つの物件(土地、建物)を所有する(=共有する)場合の共有者それぞれの権利の割合を意味します。3人で均等に分けるのであれば、持ち分は3分の1ずつとなります。

父親が住んでいた家を、遺言書の指示どおりに仲良く3人で分け、共有持ち分3分の1ずつとする場合の主なメリットは、以下の2点でしょう。

土地建物を3人で分けて共有持ち分にし、他の父親名義の財産も同様に3人で均等に分けるのであれば、遺産分割が不公平になることはないでしょう。

これを、1人が土地建物を相続し、1人が預貯金を相続し、残りの1人が株式や投資信託などの金融商品を相続する、としてしまうと、相続後の不動産市況、金融市場の変動によっては、将来の資産価値が大きく変わり、不公平感が生まれるかもしれません。

3000万円特別控除とは、マイホーム(居住用財産)を売ったときに、その所有期間の長短に関係なく、譲渡所得(=簡単に言えば、売却益。儲け)から最高3000万円を差し引くことができる特例のことを言います。

つまり、マイホームを売却して利益が出たとしても、3000万円までの利益であれば、税金はかからないということです。

共有持ち分の場合、この特例をそれぞれが利用できるので、3人がそれぞれの共有持ち分について3000万円特別控除を使えば、最高9000万円までの利益に対して税金がかからなくなるわけです。

父親からの相続で取得した不動産の取得価格は、父親が取得したときの価格を引き継ぎますので、昭和の時代に取得した不動産だと、それなりに利益が出ている可能性があります。相続後に売却することになった際には、それぞれが3000万円特別控除を使えるのは、節税になる可能性があります。

一方、主なデメリットは、以下5点が挙げられます。

土地建物の1月1日現在の所有者にかかる固定資産税や都市計画税は、共有持ち分にした場合、持ち分割合に応じて負担する必要があります。原則、代表者に納付書が届きますが、代表者だけに支払い義務があるわけではありません。持ち分に応じて支払う必要があります。

法律上の処分行為に該当する売却や贈与、賃貸借契約の締結などを行うためには、共有者全員の同意が必要になります。

共有物である土地建物の管理についても、共有者の過半数の持ち分を所有する共有者の同意が必要になります。

共有持ち分のみを売却することも可能ですが、その評価額は大きく下がるのが通常です。

例えば、土地建物の評価額が3000万円だったとして、その3分の1の持ち分だけが売りに出ていた場合、あなたならいくらで買いますか?
3分の1である1000万円なら買いたいと思うでしょうか?

きっと1000万円では高いと思うのではないでしょうか。3分の1の持ち分だけを取得しても、その土地建物の全体を自由に処分できないわけですから、使いにくい物件でしかありません。残りの共有者がすべての持ち分を譲ってくれるような状況にならないと、資産価値としてはあまり魅力を感じられないでしょう。

価値が下がるとはいえ、持ち分のみを売却することは可能なので、兄弟の誰かが持ち分を処分し、見知らぬ第三者が持ち分を取得する可能性もあります。そのような事態になると、将来的にその第三者とのトラブルにつながる可能性が出てきます。

今回の相続は3人の兄弟で仲良く3分の1ずつ持ち分を分けたとしても、兄弟であればすぐに連絡を取り合うことも可能でしょう。ところが、その3人の兄弟が将来亡くなることになると、3分の1ずつの持ち分が相続財産となり、その複数人の子が分割し、さらに複数人の孫が分割して相続することになると、持ち分の権利者同士で連絡を取ること自体が困難になっていく可能性もあります。

共有持ち分にすることのデメリットを強く感じるなら、遺産分割協議によって兄弟のうち誰か1人が相続をするように決めてしまうのもひとつの方法です。遺言書がある場合、遺言に従うのが基本ではありますが、遺産分割協議によって相続人全員が合意するのであれば、遺言書と異なる遺産分割をすることも可能だからです。

また、父親の家を残しておく必要性があまりないのであれば、換価分割(=売却して現金に換えて分割する)をして、3人で分けるものひとつの方法です。同様に、3人で共有持ち分の相続をしてから、全員で合意の上で売却し、現金に変えて分けるのもよいでしょう。

前述のように、基本的にはデメリットのほうが多い共有持ち分ですので、遺言書のとおりに分けるかどうかも含め、相続に詳しい弁護士などに相談して決めるのがよいでしょう。

(記事は2020年9月1日現在の情報に基づきます)

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