空き家の活用事例9選! 建物をそのまま活用する方法から新築戸建て賃貸という選択肢も
親が亡くなったあと実家に誰も住まなくなると、いずれ空き家になってしまいます。空き家をそのまま保有しているだけでは、固定資産税や建物の維持管理に大きな負担がかかり続けます。一方、空き家を上手に活用することで収入を得られるケースもあります。空き家の活用方法の種類やメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
親が亡くなったあと実家に誰も住まなくなると、いずれ空き家になってしまいます。空き家をそのまま保有しているだけでは、固定資産税や建物の維持管理に大きな負担がかかり続けます。一方、空き家を上手に活用することで収入を得られるケースもあります。空き家の活用方法の種類やメリット、注意点についてわかりやすく解説します。
目次
日本では空き家が増え続けており、大きな社会問題になっています。はじめに、日本の空き家の現状、空き家を保有した場合のデメリット、国や自治体の空き家対策について解説します。
「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律では、空き家を「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態(※普通の状態)であるもの及びその敷地」と定めています。
また、居住や使用されていない期間について、国土交通省のガイドラインではおおむね1年としています。つまり、実家に誰も住まなくなり1年が経つと「空き家」になってしまうのです。
総務省統計局が手がけた2018年の「住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家の数は約849万戸、空き家率は13.6%と、なんと約7軒に1件軒が空き家になっています。空き家率は5年前の2013年調査と比較して、0.1%しか増えていませんが、空き家の中でも「その他の空き家」に分類されている、いわゆる「実家の空き家」は9.5%も増えています。
なお、野村総合研究所の推計では今後も空き家は増え続け、2038年の空き家率は21.1%(最小値)~31.5%(最大値)まで増えていくと予測されています。
国や地方自治体も空き家の増加を抑えるためにさまざまな施策を講じています。
・「空家等対策の推進に関する特別措置法」
「空家等対策の推進に関する特別措置法」という法律では、「ゴミ屋敷」「お化け屋敷」のように周辺の景観を損ない、このまま放置すると倒壊などの危険があったり衛生上有害となったりする空き家を、市町村が「特定空家等」として指定します。
特定空家等に指定されると、市町村は所有者に対し、以下の順序で改善を求めます。
助言・指導 → 勧告 → 命令 → 行政代執行・50万円以下の過料
所有者が従わない場合は、最終的に市町村が所有者に代わり空き家を解体し、その費用を所有者に請求します。また、勧告の段階で、土地の固定資産税は小規模住宅用地の特例から外れ、課税標準が6分の1になるという特典が受けられなくなります。
・空き家に係る譲渡所得の特別控除
相続した空き家を相続から3年後の年の12月末までに売却すると、譲渡益から最大3000万円の特別控除を差し引くことができます。
なお、この特別控除を受ける場合、その空き家が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された住宅であることなど一定の条件を満たす必要があります。
・相続登記の義務化
相続登記は以前は義務ではなかったため、相続しても相続登記が行われないケースがあり、そのことが所有者行方不明不動産の増加につながってきました。そこで2024年4月1日から相続登記は義務化され、相続によって不動産を取得した日から3年以内に正当な理由なく登記の手続きをしない場合には、10万円以下の過料を科せられることになりました。
・解体、耐震診断、耐震改修は自治体により助成制度も
耐震性の低い空き家は、放置すると倒壊してしまう恐れがあるため、取り壊しや耐震改修などの対策をする必要があります。市町村によってはこれらの費用に対して補助金や助成金を支給してくれる制度があります。
たとえば、東京都豊島区の場合、一定の条件を満たす建物の耐震診断には最大15万円の助成があります。また耐震改修工事についても、費用の3分の2(限度額100万円)などの助成が受けられます。各市町村の実施状況や詳細はホームページなどで確認しましょう。
空き家を相続した場合には、大きく分けて「とりあえず保有しておく」「空き家を活用して収益を得る」「売却する」という3つの選択肢があります。
相続した実家を売りたくはない、荷物も残っている、とりあえずそのままでも困らない、いつかまた住むかもしれない、というようなケースでは空き家を保有し続けるという選択肢もあります。
ただし、空き家は持っているだけで税金や維持管理などの負担がかかります。特に人が住まない空き家は傷みも早く進み、修理費などのコストも重くのしかかってきます。
空き家の立地を生かして収益を得ることができれば、副収入や将来の自分年金確保にもつながります。立地や広さによってさまざまな活用方法があります。
記事の後半では、「空き家を活用して収益を得る」という選択をした場合の活用例として以下9つについて説明します。
もともと居住や活用の予定がない、売却してお金に換えたい、しばらく保有してみたけれど負担が大変などの理由で空き家を売却する人もいます。いざ売却しようとするときにあわてないためには、事前に売却価格を調べておく、土地の境界の確認をしておくなどして、売却に備えておくことが大切です。
また、空き家が地方にある場合、なかなか買い手が見つからないケースも多くありますが、お隣さんや近所の人が買ってくれるケースも少なくありません。買い手が現れない場合は、後述する相続土地国庫帰属制度の利用も検討しましょう。
実家はいらないので相続放棄をしたいという話をよく耳にします。しかし、相続放棄をすると、実家だけではなくほかの遺産もすべて放棄をしなければならないため、現実的ではありません。
親の遺産は欲しいけれど実家はいらないという場合には、2023年4月27日から始まる「相続土地国庫帰属制度」が利用できるかも検討してみましょう。これはいったん不動産を相続してから、その土地を国に引き取ってもらう制度です。
ただし、国に引き取りを承認してもらうためには、空き家を解体して更地にしなければいけません。ほかにも多くの条件があり、さらに、引き取りが認められた場合でも、土地管理費用10年分を負担金として国に納める必要があります。
空き家をそのまま活用する方法として最も多いのは戸建て賃貸ですが、そのほかにもいくつかの活用方法を紹介します。
空き家をそのまま貸すことができれば、解体も必要なく費用もあまりかけずにすみます。また、入居者が建物を管理してくれるので、日常の維持管理をする必要もなくなります。将来、自分で使用したり、家族が使ったりする可能性も残せます。
一般的に古い建物はそのままでは借り手がつきにくく、多くの建物はリフォームが必要になります。
たとえば、床や壁紙などの内装リフォームで数十万円、キッチンや浴室など水回りの交換があれば数十万円~100万円以上、外壁など大規模修繕が必要な場合は200万円以上かかるケースもあります。
また、入居中に大きな修理費がかかることもあります。残りの経営期間でリフォーム代や修理費が回収できないと、結局貸さなければ良かったということになりかねません。
戸建て賃貸の入居者はファミリー層が多く比較的入居期間も長いため、安定的な収入が期待できます。
ただし、築年数が経過しているので新築のような長期間の経営は見込めません。そのため、リフォーム代や修理費が何年で回収ができるか、あと何年経営が続けられそうかなどを不動産会社に相談することが大切です。
お金をかけずに一時的な活用をしたい場合、住宅を建て替える人の仮住まい用の貸家も一つの方法です。
最近では、空き家をグループホームやデイサービスとして活用するケースも増えています。運営事業者が長期で借り上げるため収入も安定し、市町村などによる助成金や固定資産税の減免が受けられるなどのメリットもあります。
反面、福祉施設という性格上、比較的賃料は安くなります。またバリアフリーにするなどの改修が必要なケースもあります。
狭小地が多い都市部では難しいかもしれませんが、郊外や地方では、太陽光発電も空き家活用の選択肢になります。発電量は天候により左右される一方、賃貸住宅では入居者の確保が難しい地域でも安定的な売電収入を得ることが可能です。
ソーラーパネルは、空き家の屋根に設置する方法と庭など土地の上に直接設置する方法があります。屋根に設置する場合は、構造上問題ないかについて設置業者に確認する必要があります。また、一度設置すると、途中でほかの活用方法への転用がしづらくなります。
立地によっては、レンタルスペース、シェアハウス、民泊などとして活用する方法もあります。ただし、経営のノウハウについてはより専門性が高くなるため、運営事業者に相談をしながら進めるようにしましょう。
近年は実家がマンションというケースも増えています。マンションの活用の多くは賃貸住宅ですが、立地によっては事務所やレンタルスペースなどとしての活用が可能な場合もあります。なお、マンションには管理費や修繕積立金などがあるため、実際の手取り額は家賃収入からこれらを差し引いた金額になることに注意が必要です。
古い空き家を建て替えて活用することで、より多くの収益が見込めるケースもあります。敷地の形状や立地に合わせた効率的な土地活用がしやすく、建物も新築のため借り手がつきやすいというメリットがあります。
空き家の解体費と建築費がかかるので、空き家をそのまま活用するよりも高額な事業予算が必要です。
解体費は、建物の構造や大きさ、工事条件などにより幅がありますが、たとえば30坪の空き家でも150万円から300万円くらいかかります。
また、建築費は、20坪程度の戸建て賃貸でも1500万円~2000万円くらい、単身者用4戸の小規模なアパートでは3000万円以上かかります。3階建て以上のアパートであればさらに建築費がかかるでしょう。一般的に建築資金を調達するためには銀行から借入れをするため、入居率や家賃の現楽、金利の上昇などによりローンの返済ができなくなる心配もあります。
解体費や建築費に諸費用も合わせた総予算、得られる家賃収入、ローン返済その他の支出をきちんと押さえ、無理のない収支計画になっているかを確認することが大切です。
戸建て賃貸に建て替えるメリットは、何よりも建物が新しくなるため入居者も決まりやすく、家賃も高くなることです。反面、事業資金も高額になります。資金を銀行からの借入れで調達すると毎月のローン返済が引かれるため、手取り額は実家をそのまま賃貸するケースよりも少なくなってしまうこともあります。
立地や土地の広さによってはアパートへの建て替えが可能です。駅近で容積率が高い地域などでは建物を上に伸ばして中層のマンションを建築できる場合もあり、戸建て賃貸よりも収益は多くなります。ただし、事業予算も高額になるため、入居率や家賃の下落、ローン金利上昇などによるリスクは高まります。
立地が市街地にあれば、10坪から20坪程度の小規模のコインランドリー経営も選択肢になります。コインランドリーは稼働率が高ければ効率の良い経営が可能ですが、設備費が高額なこと、稼働率が高まるまでに時間がかかることなど注意が必要です。
トランクルームは建築制限により住宅専用地域では許可になりませんが、住宅地から近い立地で、土地の広さに余裕があれば経営が可能です。運営を事業者に業務委託する方式であれば手間もかかりません。ただし、高い収益は見込めません。また、コインランドリーと同様、稼働率が上がるまでに時間がかかることもデメリットとなります。
空き家をそのまま利用したり建て替えたりせずに、解体して更地で活用する方法もあります。長期的な活用というよりも、主に将来の利活用や売却までの暫定的な活用方法と言えます。
解体工事以外の費用をあまりかけずに活用ができ、建物の固定資産税も不要になります。更地の大きなメリットは、いざというときに売却しやすいことです。
空き家を解体すると、小規模住宅用地の特例が受けられなくなるので、土地の固定資産税が高くなります。また、一般的に更地利用は建替えなどの活用と比較すると収益性が低くなります。
空き家を解体して更地にしたまま、第三者(借地人)に貸すだけの借地権活用は、高額な初期費用も必要ありません。ただし、たとえば一般定期借地権の場合契約期間が50年以上と長期にわたるため、途中で売却して現金化しようと考えている人には向きません。
駐車場は、土地の広さにかかわらず需要がある立地であれば経営が可能です。建替えなどと比べて初期費用も抑えられ、いざ売却したいときにも立退きがしやすいというメリットもあります。そのため、土地の暫定利用の手法としても利用できます。
ただし、一般的に収益性は低く、特に道路の位置や土地の形によっては思ったほど台数が取れないケースもあります。また、コインパーキングは立地がより限られるため、事業者への相談が必要です。
戸建て賃貸や福祉施設、新築アパート・マンションやコインランドリーなど、空き家のさまざまな活用方法について紹介をしてきました。空き家の活用の可能性については、早めに検討や準備をしておけば、いざというときに慌てなくててすみます。
空き家の活用は、収益が見込める半面リスクもあるため、専門家や専門業者に相談しながら検討することをお勧めします。「相続会議」は土地活用プラン一括請求サービスも展開しています。空き家の活用法に関する選択肢を増やす意味でも、複数の企業に一括で問い合わせできるサービスをぜひご活用ください。
(記事は2024年6月1日時点の情報に基づいています)